東京都府中市出身の4ピースロックバンド・koboreが、8月5日(水)、2ndフルアルバム『風景になって』でメジャーデビューした。年齢的にはまだ若いバンドだが、精力的なライブ活動を通じてバンドのスタンスを堅くさせてきたこと、現場勝負で着実に人気を集めていったことを踏まえれば、「満を持して」と言えるタイミングだ。『風景になって』は今までにないトライも含む意欲作。一方、「それでもバンドは変わらない」というメッセージも読み取れるのが気になるところ。その真意とは。佐藤 赳(G・Vo)、田中そら(B)に訊いた。
インタビュー=蜂須賀ちなみ
ライブができなくなったとき、「じゃあその代わりに何ができるか」という方向に切り替えることができた(佐藤)
――外出自粛期間中はどう過ごしてましたか?佐藤 赳(G・Vo) とにかく家から出ないぞという一心でずっと家にいました。ちょいちょい曲を作りつつ、お笑いの番組を観て、みたいな。
田中そら(B) 僕はライブができない時点で「ああ、どうしよう」みたいな気持ちになっちゃったんですけど、自粛生活が始まって1週間経ったぐらいから、安藤(安藤太一/G・Cho)や克起(伊藤克起/Dr)と連絡を取り合い、出来ることはやろうって話をして。そのときにはもうアルバムの制作が始まっていたんですけど、僕たちの場合、いつもはスタジオに入って曲を作るんですよ。みんな家が近くていつでも集まれるから。だけど今回は初めてDTMを使って、パソコンや携帯を駆使しながら録音して、その音源をリモートで送り合ったりしてましたね。
佐藤 結局お前は家で何してたの?
田中 それ話すといきなり曲の話になっちゃうんだけど……“FULLTEN”や“HEBEREKE”のビートって、今までのkoboreにはなかったパターンなんですよ。僕はああいうノリの曲を今まであまり聴いてこなかったから、最初、あの曲が大枠で上がってきたときにすごく焦って。だからそのノリを掴むために家でめちゃめちゃ練習してました。多分、自粛生活で一番時間を費やしたのがそれだったと思う。ライブがなくなったのはつらかったけど、それによってできた時間は有効に使えたのかな。
佐藤 そう考えると、前向きだったとは思いますね。「ライブができなくなりました」となったときに、「じゃあその代わりに何ができるか」という方向に切り替えることができたので。
――今回リリースする『風景になって』がkoboreにとってメジャーデビュー作になりますが、メジャーデビューを目前にした今、どんな心境ですか?
佐藤 何か、全然変わんないんですよ。嬉しい気持ちはもちろんあります。だけど、これからも変わらずやっていきたいなって気持ちの方が強いので。
――真面目なバンドですよね。
佐藤 真面目ですよ。
田中 ギターロック界一真面目。
どんなにつらくても、ステージの上では4人とも絶対にそれを出さなかった(田中)
――初めてお会いしたのが、オーディション(「ワン!チャン!! ~ビクターロック祭り2017への挑戦~」)でグランプリを獲り、オープニングアクトとして「ビクターロック祭り2017」に出演することになったときで。佐藤 もう3、4年前ですよね。府中の田舎からすみませんみたいな感じで、幕張にリュック背負っていって。
田中 あれはやばかったね。
佐藤 むずかった。
――と言いつつ、当時から「環境が変わってもバンドのやることは変わらない」と仰ってましたよね。
佐藤 そうですね。ずっと変わってないですね。僕らは「(お客さんから)見られている」と認識するのが苦手で、どちらかというと「じゃあ僕らについてきてよ」っていうスタンスなんですよ。そのうえで思うのは、やっぱり全員を連れて行きたいっていうことで。僕らが変わっちゃったら「あのときのkoboreじゃなくなっちゃった」って言って、いなくなっちゃう人もいると思うんですよ。だけど僕らは「あのお客さん、来なくなっちゃったな」っていうのを結構気にしちゃって、寂しく思うタイプのバンドだから(笑)、そういう人たちを作りたくないんですよね。だからメジャーデビューしようがインディーズにいようが、どこのハコでやろうが、「結局koboreは変わらないよね」っていうスタンスであり続ける必要がある。曲(のテイスト)とかは変わっていくかもしれないけど、僕たちのマインドだけは変えちゃいけないよな、って。
田中 僕たちがブレずにやってこられているのは、ライブを主軸にしているからこそだと思うんですよ。
佐藤 ほんとそう。
田中 周りのバンドからは順調に上がっているように見られているかもしれないんですけど、自分たちからしたら、本当につらかった時期もあって。ツアーで4ヶ月60本まわったときもありましたし、そのときはお金もなかったし……。だけど当時から、どんなにつらくても、ステージの上では4人とも絶対にそれを出さなかった。バンドマンのプライドというか、そういうものってあるじゃないですか。打ち上げでいっぱいお酒飲んで、次の日二日酔いで頭痛いんだけど、それでもリハーサルをして、ステージに立ったときにはカッコよくバッと演奏する、みたいな。そういうのをずっと続けてきたっていう自覚があったから、ここまで迷わず来られてるんじゃないですかね。
佐藤 本当は「順調だね」って言ってくる人たちに「じゃあお前らは60本ツアーまわったことあるのか」って言いたいんですけど、言わないんですよ。そんなの知ってる人だけが知ってればいいことであって。
――言わずとも、音や曲に滲み出るからこそバンドのかっこよさですしね。
佐藤 本当にそうですね。「koboreはこういうバンドなんだ」っていうのは、昔からのお客さんも今のお客さんもよく知ってくれていて、それを口コミで広めてくれているので。僕らが言うことではないです。