LiSA、新曲“HADASHi NO STEP”を語る。自身の主義、その現在地と、新たな挑戦としての「ラブソング」まで――今の胸中を明かした最新インタビュー

LiSA、新曲“HADASHi NO STEP”を語る。自身の主義、その現在地と、新たな挑戦としての「ラブソング」まで――今の胸中を明かした最新インタビュー

引っ張ってきてもらった田淵先輩に、おこがましいけど、私こういうところまでこれました! なので、ここに一緒にきませんか?って。「Shall we dance?」みたいな感じです(笑)

――“HADASHi NO STEP”は、すごく重要な曲。『LADYBUG』があって、10周年っていうタームがあって、この曲を出すのは、これから先のLiSAを占ううえで、すごく必然的だと思う。

「アニメの(主題歌を作る)時もそうですけど、やっぱり作品の人たちが思い描いているものが、原作を読んでいるだけじゃわからないことがいっぱいあるので、その中で、自分が思い描くものを提示しながら、向こうの意見もいただきながら作っていったんです。で、(主題歌になっているドラマ『プロミス・シンデレラ』の)一話が放送された時に、なんかすごくよかったなって思って。裸足で主人公たちが駆けているところで、この曲が流れたんですよね。そこで、すごく大事にしてもらった感覚があって。何度もきちんとやり取りして、思い切り自分を注げて、すごくよかったなって思っています」

――ドラマのイメージは、どれくらいLiSAの中にあったの? 

「原作のマンガは、きちんと読みました。一日で読み切っちゃうくらい楽しくって。あと、脚本も読みました。で、自分自身もすごくワクワクしながら作っていきましたね。初めての経験だけど、いろんなものの答え合わせをしながら作っていった感覚です」

――作曲は田淵(智也)くんなんだけど、彼とはどういうやり取りの中で、この曲を導いていったの?

「田淵先輩は、絶対ポップなやつが得意だなって思ったし、キュートな、だけど強い女性みたいなものを描くのも、絶対に得意だなっていうのが大前提にあって。で、先輩と一緒に行きたいって思ったんです。アニメの主題歌で一緒に作ってきたものはたくさんあるけど、その先に歩いていくLiSAの姿の一歩を、先輩と踏みたいって思ったので。だから、先輩にしかお願いしていないんです。先輩に、こういうお話があるんですが、先輩は絶対にピッタリだと思うし、先輩と一緒に行きたいっていう気持ちがいちばん強いので、一緒に情熱を注いでいただけませんかっていうお願いの仕方をしたというか。そしたら、先輩が2曲書いてくれて。その中の1曲です」

――どうして田淵くんだったの? いちばん信頼できるパートナーだということはよくわかるけども。

「先輩に、いろんなところに連れて行ってもらったんですね。“best day, best way”を託してくれた時だったり、LiSAっていう人がやるべきことに曲で導いてくれた。ある意味、陰のプロデューサーじゃないですけど。で、私にとって賞状をもらったような『鬼滅の刃』っていう作品があって。それを持った今、なんだろうな、引っ張ってきてもらった田淵先輩に、次は……うーん、おこがましいけど、私こういうところまでこれました! なので、ここに一緒にきませんか?って、『Shall we dance?』みたいな感じです(笑)。一緒に踊りませんか?じゃないけど。先輩がくれた道の上で、胸を張ってできたステップだったので、そこに一緒に行きたかったというか」

――なるほどね。これは、田淵くんに対するひとつの、恩返しっていうんじゃないけど、こんな素敵な舞台にきたんだけど、一緒に踊りたい人を考えたら、それはあなたなんですっていう。

「そうですそうです。舞踏会に誘われているんだけど、先輩だったら、どうやって踊ってくれるんだろう? 絶対面白いと思うけどなあって」

――なるほどね。曲を作っていくうえで、こういう曲にしたいんですっていう、具体的な相談はしたの?

「細かい指示はそんなになかったですけど、自立した芯のあるかっこいい女性が、自分らしく進んでいく曲にしたいですっていう。漠然とした主人公っていうか、曲のテーマっていうか、そういうお話はしました」

――実際曲を受け取った時、LiSA的には驚きがあったのか、これこれ!って思ったのか、どういうファーストインプレッションだったの?

「すごく先輩っぽいなって思いました。結果として、アレンジでたくさんの人に楽しんでもらえる味付けにはなっているけれど、でも、すごく先輩らしい曲だなって思いました。ちゃんと先輩が好きなLiSAを残したうえで、外のステージ、違うステージに一緒に行ってくれたんだなって思いました」

――まさに、そういう曲だと思う。ちゃんと、初めてのダンスを踊ってくれたよね、一緒に。

「(笑)そうですね。ちゃんとスーツ着たなっていう」

――そんな感じだよね。田淵くんはさすがだなっていうのと、LiSAも、ここまで田淵くんの能力を引っ張り出したか!っていう。ふたりなら新しい何かが見えるっていう直感が形になったというのかな、そこもLiSAの中で冴えているような感じがするね。

「うん、そうですね。大前提として、みんなと一緒に行きたい、何も失いたくない!っていうスタンスではあるので。私も器用なほうじゃないんですけど、それをわかって一緒にステージにのっかってくれるっていうことに対しての、無言の信頼というか、無言の愛情はすごく感じています」

自分らしく生きていくっていうことは、わがままに生きていくっていうことではなくって。自分がこう在りたいっていう自分として、許せることを大事にしていきたいなって

――アレンジの世界観も、すごく新しい。島田(昌典)さん、初めてだよね。

「そうですね。いや、島田さんすごいですよ。そんな簡単な言葉で言っちゃいけない気がするんですけど、ちゃんとポップソングにしてくれるし。でも、そこに、ちゃんと、いろんな人への尊敬とか、大切にする気持ちとかがあって。ほんとに素晴らしいなと思いました。あと、私がいちばんすごいと思ったのは、管楽器の入れ方でした。ちゃんと印象的なものにするための味付けが、すごく上手だなって思いました」

――あと、ここはぜひみなさんにも意識しながら曲を聴いてみてもらえたらと思うんだけど、印象的なのが、最初のサビが終わったあとの2Aなんだよね。

「ああ」

――ここはセオリーでいくならバンドアウトするところだと思うんだよね。でも、2Aからバンドがフルで入っているという。え!? 気持ちいい!っていう。これは、島田さんがこういうふうにしたいって思ったんだとするなら、LiSAというロックシンガーへの最大のリスペクトだと思ったんだよね。

「ああ、島田さんとめっちゃやり取りをしたり会話をしたわけではなかったから、そういう細かいところは聞けてはいないんですけど。肌感で、いろんなものをちゃんと味付けしている……なんて言うんでしょう、全部にマヨネーズ付けないみたいな(笑)。ちゃんと、それぞれの素材を活かすための調味料を、ところどころに混ぜてくれているのが、ほんとに素晴らしいと思ったっていう。それが、小栁さん的には、2Aがピンポイントだったんですね」

――そう。歌うのがLiSAじゃなきゃ、このアレンジにはしないと思う。でも、LiSAっていう人のボーカルの強さ、あるいは表現としてのまっすぐさがあると、2Aはこの勢いで行っても大丈夫だし、作るべきだっていう、メリハリありきで音圧を調整しなくても大丈夫っていう、そういう感じがした。

「なるほど、すごい。それは、島田さんの音楽をたくさん分析していらっしゃる小栁さんが気付いてくれたところですね」

――すっごいインパクトある。だから、フル尺オンエアを推奨します(笑)。

「そうですね。私は、全体を通してフルで聴いてほしい。メロディも、歌詞も、アレンジも、フルで聴いてほしい曲ですね」

――歌詞は? 作詞するうえでドラマ作品の物語は自分の中にどれぐらいあったの?

「うーん、なんか、いろんなところで使い古した言葉になっちゃうけど、一回憑依して、ゼロにしています。だから、それをそのまんま書いているわけじゃなくって。一回入れて、通して書いている感じですね」

――だから、作品感もあるんだけど、ものすごくLiSAの曲になっているよね。LiSAが自分のことを書いている。しかも、10周年を経て歌った“Letters to ME”を書いたあとのLiSAがちゃんと書いている感じがして。

「はい」

――書いていく最中、あるいは書き終わって、自分の中で何か変化はあった?

「なんか、歌詞を書く前にめちゃめちゃ迷ったのは、私、恋愛ソング書けないんだよなあっていう(笑)」

――ああ、そうだね。

「恋の歌、書けないんだよなあ……っていうところで、最初につまづいて。頑張って、恋愛マンガを読んでみたものの、ちょっと私、恋っていう気持ちあんまりないんだよなあ、引き出しに持っていないんだよなあって。そこで浮かんだのが、自分らしく、きちんと生きている女性。私もそうですけど、悔しい! 負けたくない!みたいな気持ちが強くて。ドラマの主人公の早梅さんに、すごく感情移入できるところがそこだったので。そのまんまの気持ちで書こうって思いました。うまく言えないけど、恋とか愛とかじゃなくないですか? 好きとか嫌いとか、その次元の話だけじゃないんですよ。わかります?」

――わかるよ(笑)。

「恋しちゃったな、みたいな感じじゃないじゃないですか。だし、白黒だけじゃないんです。なんなら、白黒どっちでもいいんです。結果として白になるのか、黒になるのかわからないけど、そういう自分の中の、人と一緒に生きていくうえで、頑固な部分、だけど譲りたくない部分との折り合いの付け方が、自分が思い描く自分でいたいっていう、裸足でステップしていくっていう言葉に繋がったというか。自分らしく生きていくっていうことは、わがままに生きていくっていうことではなくって。自分がこう在りたいっていう自分として、許せることを大事にしていきたいなっていう気持ちです」

――うん、なるほどね。

「ちょっとそこが信じられない時は、世の中の目とか世間の気持ちとか、いろんなものを汲みたくなるけど、自分らしく生きていくために、そこと向き合って生きていくっていう……話、ずれましたか?」

――大丈夫だよ。

「ごめんなさい。原作のマンガを読んで、主人公にすごく筋の通ったところを感じて。で、自分がなりたい女性も、そういう人だったから、こういう言葉になりました」

次のページ嘘なんて一個も書いていないんだけど、血を流していない感覚もあるっていうのは、その自分を許せなくはないから。自分らしく生きるための主義を提出した気持ちです
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする