「アニメの曲だから聴いてみた」っていう人が多かれ少なかれいるわけじゃないですか。音楽の価値観のキャパを広げたいんですよね(朝日)
――これ、変な曲だなと思ったんですよね。中村 そうなんだ(笑)。
――いや、変な曲だなっていうのは、もちろんサビはめちゃくちゃキャッチーだし、ちゃんと作品にフィットするものになっているんだけど、実は結構ひねくれたことやってるなって。
朝日 途中からどんどんおかしな曲になっていきますからね(笑)。みんながみんなそうとは限らないですけど、「バンドとかそんなに知らなかったけど、アニメの曲だから聴いてみた」っていう人が多かれ少なかれいるわけじゃないですか。音楽の価値観のキャパをとりあえず広げたいんですよね。何をしても正解だっていう。急に表裏が逆転したり、オーケストラヒットが入ってきたりしても別にいいっていう。アニソンってすごく器の大きいジャンルだと思うんですよ。だって、ジャンル関係なくて、アニメの主題歌になったらどんな曲でもアニソンを名乗っていいわけじゃないですか。そういう広さがせっかくあるから、それをストレートな部分で収めておくのはもったいないなって思って。
――うん。だから、罠だよね。
朝日 そう(笑)。気づけば広がってて、あれ?みたいな。
――しかも、それをノリノリでやるメンバーが揃ってるっていうのもいいですよね。
朝日 もう誰もブレーキ踏まないから。
タケイ 最終的にブレーキを踏むのは朝日さんだから。こっちはアクセル全開ですからね。
もっさ 『FREAK』って若干引き算して作ったやんか。だから、頃合いもわかってるし、何も考えなくていいかなって、若干思ってる自分がいました。
朝日 そう。自然と越えちゃいけないラインみたいなのはあって。その手前で踏んでたブレーキを踏まなくなった。でもそのラインはちゃんと見えてるから、いい塩梅でやれてるのかもしれないですね。
《空地の塀の裏の裏で見てた/地図をずっと捨てずにここまで来ている》から《本当に痛い》っていう、ここだけ俺が出てきてるんです(朝日)
――だからね、チキンレースじゃないですけど、崖から落ちないわけですよね。ギリギリまで行くんだけど、ちゃんと止まれるっていうか。タケイ 今のところは。
もっさ ははははは。
――まあ、だから落ちるのかもしれないけど、落ちる時はわかってて落ちるんだと思うんですよね。
朝日 落ちても生きてるから。『アカギ〜闇に降り立った天才〜』の1巻みたいな感じですよね。チキンレースで、近場は岩礁があるから危ないけど、奥のほうまで行けば海が深いから逆に助かるみたいな。踏み抜いたほうが生存率が高いっていう、『アカギ』から学んだ教訓です。
――まさにそういう感じ。中途半端に安パイを置きにいかないっていう。
藤田 ネクライトーキーの安パイってどこなんだろうっていう。
もっさ 「安パイ」って何?
朝日 安パイを説明するには『アカギ』を読んでもらわないと。ただ、なんか自然とみんなが同じところを見ているのかもしれないです。
中村 そうだといいね。
――朝日くん、この曲の歌詞はすんなり書けたんですか?
朝日 歌詞はちょっと悩んだんですけど……『カノジョも彼女』って、主人公の青年が二股するところから始まるっていう設定のマンガなんですけど、3人、4人とかわいい女の子が出てきて、すぐほだされるのかなと思ったら、そこはすごくカタいんですよ。そうなった時に、こいつはもう、心の底から真剣なんだ、ふざけてないんだって思って。でもこいつ二股してるんだよなみたいな。ギャグマンガって、キャラが真剣であればあるほど面白いじゃないですか。だからこそ、これは真剣に歌詞を書いたほうが面白いって思ったんです。っていうのを作品からもらいつつ書きました。
――でも、2番とかは特に、作品から離れて、もうちょっと自分自身に向かっている感じがするんだけど。
朝日 あ、バレてますね。
もっさ あんた、バレてるよ!
朝日 この《空地の塀の裏の裏で見てた/地図をずっと捨てずにここまで来ている》から《本当に痛い》っていう、ここの部分だけ俺が出てきてるんですよ(笑)。完全に朝日少年が。
もっさ そう、急に泥のにおいがする(笑)。
朝日 ここの部分、《けど青をブチまけた空が君を睨んでいるぜ》って書いてるんですけど、今まで《青》ってワードは避けてたんですよ。あまりにもにおいが強いから。でも、やっぱり短い中だとぱって出てくる。強く出てくるというか。ここで曲の雰囲気もガッと変わるんですよね。
もっさ 歌っていても2番で気持ちが変わる、勝手に。
――めちゃくちゃエモくなるんですよ、聴いていても。
もっさ そうなんですよ。私も歌っててエモくなっちゃう。楽しいから聴いてたはずなのに、最後になって、いつの間にかちょっと寂しい気持ちというか、ぐっと来る感じがあって。だから、歌もたぶんそうなってると思います。
――うん。だからこれも本当罠だなっていう。他人事じゃなくなる感じ。
朝日 かもしれない。全然知らなかった人たちが、出てきた俺に出会ってびっくりするかもしれない。
――それがそのバンドなり、ミュージシャンなりに心を掴まれるっていうことだからね。
朝日 そう。それを面白いと思って受け取ってもらえたら嬉しいなって思います。