東京事変、メンバー全員集合! 全歴史『総合』インタビュー

東京事変、メンバー全員集合! 全歴史『総合』インタビュー

すっごく仲良かったんですよね。たぶんどっかのタイミングでもう、ここで1回解散しようっていう話を受けて作業してる曲もいっぱいあって

――次が『大発見』なんですけど。今までの作品って、全部デビューアルバムって言えるぐらいの感じがあったけど、これはちょっと違って。初期衝動とか破壊とかは、あまり感じないんですよね。

浮雲 確かに、演奏的に言ったらそうかもね。きっちりしてる。

椎名 何がそうさせたのかわかんないけど。すっごく仲良かったんですよね。たぶんどっかのタイミングで、もうここで1回解散しようっていう話を受けて作業してる曲もいっぱいあって。わざわざ、かき回すようなことを言いたがる人なんているわけないし。すごくこう、大事に、丁寧にやるっていう。

――なるほど。で、次のフルアルバムが『音楽』なんですけど、その間にある『color bars』とか『ニュース』のことも聞きたくて。この2枚は、五人五様っていう要素を強く持っていたと思うんですね。僕は“タイムカプセル”が好きで。

亀田 ぶっちゃけなんですけど、亡くした父のことを歌っているんです。

椎名 「明日からギターにしなさい」のお父様ですね?

亀田 そうそう! それまで反対されていたんだけど、プロになって初めてのステージだった中野サンプラザを観に来てくれて。で、家に帰ったら父からの手紙が置いてあったんですよ。ようやく父が認めてくれたんだと思ったわけ。そうしたら、「誠治の弾いているベースという楽器は、よくわからない。明日からギターに転向しなさい。パパより」って。

――(笑)。『color bars』は個人の都合で1曲1曲遊んだと思うんですけど。でも“タイムカプセル”に出たのは、亀田さんの人格みたいなものですね。

亀田 ありがとうございます。はんこだね。

――『ニュース』はニューコンセプトを感じるというか。新しい東京事変の世の中への発信の仕方が、“選ばれざる国民”というワードにあったような感じがして。“選ばれざる国民”っていうワードは、ずっと引っ張っていくものとして出てきたのか、単純にこの曲のタイトルとして出てきたのか。

椎名 この曲のタイトルとして、じゃないですか?

――それで出てきたけど、その先に繋がるように、ハマったっていう感じだったんですか。

椎名 はい。

浮雲 「民系」で、みたいな。

椎名 あ、それだ。“某都民”とか。

亀田 だんだん大きくなっていってね。そのうち、“銀河民”とかも出てくるでしょ? 民系プロジェクト。

椎名 それは、うきちゃんが「3人で歌ったらいいんちゃう?」みたいなことを言って。トリプルボーカルのものは、やり方によっては人が連なってるみたいな、シナリオみたいにできるから。作曲者からもらってる材料ですよね。

浮雲 それが『娯楽』の時からはじまってたっていう。

――次のフルアルバムが『音楽』で、これはちょっと深読みしすぎかもしれないんですけど。『ニュース』、『音楽』以降の東京事変から感じてるのは、8年経って、インターネットの時代が加速したじゃないですか。たとえばそういう、いかにも令和的なものに東京事変が向き合ってるような感じがしてて。

椎名 どうだろう?

――浮雲さんの場合はこの8年間の変化、何が変わったって感じですか?

浮雲 基本的にはたぶん変わってないんだと思います。ただまあ……呼ばれて行った現場ですごい頑張るみたいなのは、東京事変ではなかったから。そういう部分では、変わったかもしれないですね。東京事変、昔はもっとわがままにやってたと思ったもん。

――それも大人になることですよね。

浮雲 大人になったってこと。そうそう。そこに終始するんだね。

伊澤 でも、最初の話じゃないすけど、『教育』が大人びて聴こえるっていう意味では、今の音って全然子どもっぽいと思う(笑)。

椎名 そうそう! すごい無邪気になっちゃったよね。快感とか、そういうのだけでやってるみたいな。あたしは、すごく早く年寄りになりたくて。あと、みんながおじいちゃんになるところがすごく楽しみで。若い時から、おじいちゃんになるところを想像してたから、どんどんどんどん楽しくなっていく一方なんですけど。もう、ちゃんと、そういうふうになってるって。ちゃんと気が遣えてないというか。「あ、気持ちいい」っていうまんまやっちゃってる感じに聴こえるんですよね。

考えられないですよ、東京事変がない状態って。抗えなかった。避ける道がなかったと思います

――今回のベストアルバム『総合』に入っている新曲、“仏だけ徒歩”と“原罪と福音”ですが、“仏だけ徒歩”のほうは、より自由になってる感じがしますよね。 “原罪と福音”は“仏だけ徒歩”よりも前にあった曲ですか?

椎名 そうです。

――タイミング的には『音楽』に入ってもおかしくなかった?

椎名 うん。

――これがすごく、トータルでいろんなことを表してて、まさに『総合』の1曲目に入るような曲という感じがします。

亀田 仮タイトル、“ディスタンス”だっけ?

椎名 そうですそうです。

亀田 去年のゴールデンウイークに、仕事部屋でふと思いついて。いろんなことが止まっちゃってて、その時に事変に1曲書きたいなと思って。“獣の理”が“ルネッサンス”、“原罪と福音”が“ディスタンス”っていう仮のタイトルをつけてたんですよね。今のパンデミックが明けてほしいという、なんとなくの願い──でも、穏やかな気持ちなんですけど──の中で作っていた曲で。ピアノとメロディしか入れてなかったと思う。で、林檎さんが、1年ちょいの月日を経て、この歌詞をつけてくれた。

椎名 すいません、時間いただいちゃって。『音楽』に入れないほうが、全員をかわいがってもらうストーリーになるんじゃないかって。全員っていうのは、全曲を。『音楽』もだし、この曲も、いちばんいい時にいいメッセージを発するように、と思ってたんですよね。

――東京事変としてやってきた自分とか、林檎さんのこの8年間のことだったりとかが、すごく入ってる歌詞だなと感じました。「原罪」と「福音」の対比がこのきれいなメロディの中で深く結びついていて。

椎名 あたしが書いたりする時に、言葉の表現についてはターゲットがはっきりしてると思うんですけど。この曲を亀田さんが書いてくれた時点で、やっぱりかなり、広く遍く共有できるお話というか。ともすると、人間誰しもっていうところに遡らないと太刀打ちできないというか、似合わないというか。これはまず、そういうことでしたね。“仏だけ徒歩”みたいな、ある特殊な願望、仏陀再来すればいいのにっていう女がいて、その素質がある男がいるとか、そういう自分勝手なストーリーじゃないじゃないですか。

――うん。

椎名 やっぱ、このタイミングで両極のものがちゃんと残ったらいいなって。

――ちょうどベスト盤を出す時に、ビシッとはまりましたね。

椎名 ええ。事変だと、根源的なところにスッと素直に行けるのは、なんでだろうなと思ったら、自分だけが曲を書いてるわけじゃないから、詞に集中できるっていうのもあるのかな。なんか照れないんですよね。

――改めてこのベスト盤を出す今のタイミングで、林檎さんはこのバンドと出会って何が変わったと思いますか?

椎名 考えられないですよ、東京事変がない状態って。いろんな意味で、どうしても、こうしなきゃいけなかったというか。うーん、抗えなかった。避ける道がなかったと思いますけどね。


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考えられないですよ、東京事変がない状態って。 抗えなかった。避ける道がなかったと思います(椎名) 現在発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』1月号表紙巻頭に東京事変が登場! 9年9ヶ月ぶりの表紙巻頭。 メンバー全員集合、全歴史『総合』インタビュー、一世一代の全部のせ!!…
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