常にライブと向き合い、急成長を遂げ続けている東京・府中発ロックバンドkobore。フルアルバムとしては約1年7ヶ月ぶりとなる新作『Purple』は新たな挑戦へ臨みながらも、奇をてらうことも肩肘を張ることもなく作り上げた純度の高い一枚だ。冒頭を飾る“ジェリーフィッシュ”でいきなりこれまでにない空間的な音像を響かせるが、しっかりと彼ららしい匂いが漂っており、その出来栄えに胸が高鳴るはずだ。バンドとして歩みを進める中で変わりゆく価値観だけでなく、譲れない想いをも詰め込んだ新作について佐藤 赳(G・Vo)と田中そら(B)のふたりに話を訊いた。
インタビュー=ヤコウリュウジ
しっかり作り込むことをメンバー間で意識するようになってから、楽曲に対する熱や踏み込み方がかなり違ってきたんじゃないかと思いますね(佐藤)
――今回の新作、一曲一曲に存在感があるんだけど、肩に無駄な力が入ってないというか、ただただいい曲を積み重ねたような印象がありました。佐藤 ありがとうございます。「テーマとかありますか?」って結構訊かれるんですけど、あんまりそういうのを決めるタイプじゃなくて。本当におっしゃる通り、一曲一曲、自分たちの好きを詰め込んだ一枚になってます。
田中 ただ、確実に今までの作品と違うのは、新しいことに挑戦してる曲が多いことですね。その発端は興味本位のものが多いんですけど、やりたいことをやったっていう感じなので、今までのkoboreを好きな人に「koboreらしくて最高」って言ってもらえるのか、ちょっとわからないところもあって。
佐藤 その覚悟はあるよね。そう言われてもいいぐらいの。
田中 もちろん、受け止めてほしいと思ってるんですけどね。でも、赳が歌入れした時点で「やっぱりkoboreだな」と思う場面も多かったんで、なんだかんだ大丈夫かなって感じてます。
――新しいことへの挑戦というのはあえてしてみたんですか?
佐藤 あえてというか、コロナ禍というのもそうなんですけど、僕らも制作の仕方が変わってきてて。昔はスタジオで合わせて勢いで曲を作ってたのが、だんだんと「こっちのコードがいいんじゃない?」とか「展開もこういうふうにしたほうがいい」みたいなコミュニケーションを取って、しっかり構成していこうっていう。スタジオでバーンってやって、すぐにできるのがかっこいいと思ってた時期もあったけど、最近はそうじゃねえなって。しっかり作り込むことをメンバー間で意識するようになってから、楽曲に対する熱や踏み込み方がかなり違ってきたんじゃないかと思いますね。
――そこで音楽的欲求も生まれてきて、自然と挑戦していったような感じ?
佐藤 そうですね。今回、クラップや金管楽器を入れてみたりとか、koboreらしくないと言われてもおかしくない覚悟で臨んでる一枚だと思います。
――でも、自然にkoboreの新作だなと聴けたんですよね。奇をてらう感じもしなかったし。
田中 嬉しいです。僕らはそれを望んでたりするんで。
佐藤 自分たちの中では大きな挑戦だったりはするんですけど、それが表立って出ないほうがいいだろうし。
コピーはオリジナルに勝てないって思ってるタイプと、それを吸収してどれだけkoboreにするかっていうタイプ。だからこそできた一曲一曲なんじゃないかなって(佐藤)
――制作自体はいつぐらいからスタートしたんですか?田中 話自体は昨年の夏ですね。
佐藤 『Orange』を出したあとに「次はアルバムだね」って(スタッフから)自然な威嚇がきて(笑)。
――はははは(笑)。『Orange』は昨年6月リリースだから、1年も経ってないんですよね。
田中 ペースは早いですよね。
――だから、それ以前から制作はしていたのかなと思ってました。
佐藤 そうでもないですね。実際にアルバムを出すって決めて、まだ時間があるなと思って制作が止まったりもして、そういえば作らなきゃっていう時にはもうワンマンツアーが始まるっていう(笑)。
――ツアー中に制作したことによるフィードバックはありましたか?
佐藤 それは特になくて。ただ、ツアー中の機材車で聴いた音楽とかがフィーチャーされてたり。機材車で移動してる時って暇なんで、いろんな音楽を聴いて引き出しを作る時間にしてるんですよ。
――サブスクでトレンドを追うようなことも?
佐藤 そういった流行りの音楽も聴きますし、Bandcampとかですげえインディーズの洋楽バンドをあさってみたりとか。自分の中ではそれが楽しくてやってるんですけどね。
――そらくんはインプット的なところはどうですか?
田中 コロナ禍になってからは特にそうなんですけど、あんまり音楽を聴かなくなって。特に制作モードに入ると、まったく聴かないんです。音楽をやっていくうえでいろんな音楽を聴いたほうがいいって言われるんですけど、小さいころからかっこいい人たちの音楽をたくさん吸収してる自負があるので、今はそこで体験した音楽だけで練り出したほうがいいかなと思ってて。もうアルバムは作り終わったんで、最近は新しいアーティストを探したりもしてるんですけどね。
――そう考えると、おふたりは真逆ですね。
佐藤 そうっすね。たぶん、コピーはオリジナルに勝てないって思ってるタイプと、それを吸収してどれだけkoboreにするかっていうタイプ。だからこそできた一曲一曲なんじゃないかなって。制作の時、「そこでそういう音なんだ!?」みたいな話し合いも結構重ねられたんで。
――作品全体の印象として、柔和さがより出てきたような感じもしました。
佐藤 そうですね。今まで尖ってたつもりはないんですけど、『Orange』とかを聴いてると自我が強かったイメージだと思うし。今回、寄り添える曲が多いのかなと。「お前、こうしろよ」っていうよりも「こうでもいいんじゃね?」みたいな。
――性格というか、価値観みたいなところに変化が生まれた部分も?
佐藤 もう25歳なんで変わるでしょうね。24から25とか、25から26とか、1年がデカいじゃないですか。で、その大事な時期にコロナ禍で何もできてないし。僕ら、メジャーデビューして、1回もライブをフルキャパでやったことがないんです。
――あぁ、そうなりますよね。
佐藤 メンタルがやられたとかじゃなくて、あれは人間をも変えるなって思うし。