2022年大注目の新星バンド・新東京。そのオリジナルな感性とバンド観、そして奥底に潜む思いにインタビューで迫る!

2022年大注目の新星バンド・新東京。そのオリジナルな感性とバンド観、そして奥底に潜む思いにインタビューで迫る!

世間から見たら、自分たちがやってることってマイノリティだと思うんです。でも自分たちはそこをオアシスだと感じている(杉田)

――“Metro”で、原宿だと思うんですけど、東京の風景を描いていますよね。

杉田 お、そうです。なんでわかったんですか?

――まあ、よく行くので(笑)。でもそこにいるわけじゃなくて、そこから逃げるように《ビードロの扉を開けたら》って歌う。嫌なんでしょうね、そこにいるのが。

杉田 ああ、そうですね……どうだろう。あんまり深く考えすぎてはいないと思っていて、踊りに行くっていうことなんですけど、喧噪みたいなものから逃げて、その人のオアシスに逃げ込むような。そういう空気感。後付けかもしれないですけど、それこそここで言ってる《音楽》っていうのは、メインストリームに流れている音楽とは真逆の場所にある。世間から見たら、自分たちがやってることってマイノリティだと思うんです。でも自分たちはそこをオアシスだと感じている。皮肉じゃないですけど、そういうのはちょっとあったりしますね。

――新東京の音楽はまさにそっち側なんですよね。だけど、そこからいろいろな人に聴かれるというところを目指す。バンドをやるというのも同じような意味がある? つまり、大学を休学してバンドに打ち込むとか、その選択にはある種の逃避みたいな部分もある?

杉田 ああ。でも実際、みんな大学辞めたがってる(笑)。ラジオとかで言って、毎回親に怒られるんですけど。辞めたいね。でも意外と堅実なんですよ、みんな。

――保田さんも大学辞めたいですか?

保田 俺は卒業します。

杉田 はははは!

大倉 僕はもう辞めたいですね(笑)。

杉田 いちばん辞めたがってる。

大倉 勉強が嫌いなんで。なんで大学行っちゃったのかもわかんないし、辞められるならもう明日にでもっていう。だから逆に、バンドがどうにかなってくれないと、僕の人生がどうにかなっちゃう。どっちかなんで。お願いしますっていう感じです。

杉田 でも正直、絶対いけると思って休学していますからね。不安要素があったらしてないメンバーなんですよ。世間から見たら休学して気合い入ってるねとか言われるんですけど、全然、いちばん合理的だよって。正直、そんなに話題になってなかったら(バンドを)絶対やってない。もうやってないでしょ? うんともすんとも言わなかったら。

田中 どうだろう……俺はずっとやってたと思う、結局。この形じゃないかもしれないけど、趣味でも音楽はやってたかな。でもたぶん、すごい自信家なんですよ。だから周りが思ってるよりも、大丈夫だと思ってる。

杉田 「大丈夫?」って聞かれても、意味がわかんないよね。

田中 親にもめちゃくちゃ心配されるけどね。でも今の状態だと1年で大学に戻りなさいって言われちゃうから、もっと頑張らないと。休学は9月までなんで、もうすぐなんです。そこまでに親を説得できるような結果を残さないと。

EPという空間の中で揺さぶってみるっていう感じをやりたくて。その中で、ひとつの色にまとまるようにっていうのはちょっと意識していました(田中)


――その中で新東京2枚目のEPが出るわけですけど、前回まとめた4曲(1st EP『新東京 #1』)と、今回の4曲、どういう違いを感じますか?

田中 結構、楽器隊がより複雑化しちゃったかも。ドラムもベースも難しいし。

大倉 でも、それがやりたくてやってるんで、何も問題はないですけどね。

田中 そのぶん、たとえば“濡溶”とかで変な方向に走っちゃわないように、“Gerbera”で戻したりとか、そういう調整をしながら、独りよがりにならないようにしました。

保田 ドラムは打ち込みなんですけど、ライブではもちろん叩くので。難易度としては難しいですね。ドラムってフレーズ作る時に結構手ぐせが出ると思うんですよ。でも打ち込みで作ると、手ぐせじゃなくて自分にない引き出しからもフレーズを持ってこれたり、思いついたりするんで。演奏はすごいしにくいけど、音的にはかっこいいからこっちを使うってことは普通なんで、えらい難しさになります。

杉田 なんかいつも自分で難しいフレーズ作って、このライブまでに仕上げなきゃいけないって病んでるんです。自分でめちゃくちゃでかい壁を作ってそれを越えられないっていう。

――でも曲にとってはそっちのほうがいいっていうことなんですよね。

保田 そう。そこは妥協すべきじゃないですからね。

田中 まあ、もともと4曲の塊でやってくっていうのはずっとあったから、そのバランスを大事に考えて作っていきました。1曲1曲もちろんやりたいことをやるんですけど、できればEPの順番で聴いてほしいなって思いますね。EPというひとつの空間の中で揺さぶってみるっていう感じをやりたくて。“濡溶”があり“Gerbera”があり、いろいろある中で、ひとつの色にまとまるようにっていうのはちょっと意識していました。

――その全体の色みたいなものを言葉にするんだったら、どういうイメージですか?

田中 表現しにくいんですけど、前回の『新東京 #1』はジャケ写とかも黒に対してグロめの色があるっていうイメージで。音も、言葉で表現しにくいんですけど、グロめの音? 俺はそういう感じだったんです。今回ジャケ写は全部ポラロイドで撮って、ふわふわとした感じで。“Metro”とか“Morning”の音像もリバーブが深めでちょっとはっきりしない感じ。

――ちょっとドリーミーというか。そのへんが共通イメージとしてあったんですね。ちなみに、今回歌詞で「溶ける」とか「溶け合う」っていうモチーフが何度も出てくるんですけど、これはどういうイメージなんですか?

杉田 それ、この間言われて気づいたんですけど、なんで溶けたがるんですかね。表現としてすごい好きだし、たとえば自分の輪郭みたいなものがよくわからなくなると「溶けてるな」って思うんです。たぶん「溶ける」って言葉がすごくいろんな意味を孕んでいるんだと思う。たとえば“濡溶”は彼女と別れた時に書いたんです。めちゃくちゃうまくいってた時期とかって、相手が自分の生活の一部で、ふたりセットでいろんなものが完成していたと思うんですけど、そのセットだったものが分裂した時に、アイデンティティが崩壊した気分になって。彼女ありきの自分だったんじゃないかって。自分ってどういう人間だったの?って。大げさですけど。

――いや、わかります。その、ふたりで溶け合っていた時間や状態というのは、居心地がいいわけですよね。でもそれがなくなったって気づいた瞬間に、自分がなくなっちゃったような感じがする。

杉田 うん、すごい路頭に迷う気分でした。本来あるべき姿はなんだったのか。それがなくなったら自分も変わっていかなきゃいけないし、もともとあった自分というものも突き詰めていかなきゃいけないのに、それが本当にわからない。そういうことを書きました。

――そこもだから、今杉田くんが言ってることと、田中くんのちょっとふわっとしているっていうイメージとの距離感がすごく近い。やっぱり新東京、溶け合ってますね。

杉田 いや、本当にそうなっちゃっているね。もう溶け合っちゃってるから、いいか(笑)。

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