【イエス来日公演迫る!】絶対に見逃せない『危機』50周年記念ジャパンツアーに向けて徹底予習!

【イエス来日公演迫る!】絶対に見逃せない『危機』50周年記念ジャパンツアーに向けて徹底予習! - ©GOTTLIEB BROS.©GOTTLIEB BROS.

イエス、5枚目のアルバムにして、この長いバンドの代表作の地位を保持し続けるアルバム『危機』のリリース50周年を記念してのスペシャル来日公演が迫っている。

直前にドラムス、アラン・ホワイトの逝去という事件も起こってしまったが、それもまたさまざまな運命を長い時間にわたり歩んできたバンドならではの出来事と受け止めるのしかないのだろうし、そういう逆風もまたスティーヴ・ハウを中心とした現メンバーたちは正面から受け止め、最新の、そしてこの時代ならではの『危機』を聴かせてくれるに違いない。

さて、思いっきり時間を巻き戻し、73年3月に実現したイエス初来日。時代は<プログレ>と<ハードロック>と<グラムロック>がやたらと元気が良かった頃。とくに<プログレ>は、71年ピンク・フロイドの箱根アフロディーテに始まり、72年の再来日、同年7月にはジェスロ・タル、そして同月には、エマーソン・レイク&パーマーがなんと、東京後楽園球場!(大阪では甲子園球場!!)で公演と、とんでもない人気を持ってて、そんな空気感の中でのイエス来日実現だった。

『こわれもの』、『危機』と良作が続き、人気は高まる一方という最高の状況、そして次々と訪れるようになった来日バンドの多くが、今では伝説化する高パフォーマンスを行っていただけにイエスへの期待値も大きかった。そして当時の来日公演のメッカ、東京厚生年金会館で見たそれは、感動的なものだった。ストラヴィンスキーの“火の鳥”がドラマチックに流れるなか、リック・ウェイクマンのキーボード類が大きなスペースを取ったステージに静かに現れたグループが突然、演奏を始めたのは、あの“シベリアン・カートゥル”だった。

 
スティーヴ・ハウのギターの細かなフレーズが旅の始まりを告げるように流れ、ジョン・アンダーソンのあのハイトーン、コーラスが絡み合い音場を豊かに広げていく震えるような感覚は今も忘れることが出来ない。いまでは来日公演直後に出たライブアルバム『イエスソングス』('73)によってこのオープニングの様子は、いつでも追体験できるわけだが、いま聴いても特別な感慨は湧く。そんなライブで何より驚かされたのは、レコードで聴いていた呆れるばかりの緻密なアンサンブルがライブの場でみごとに再構築されていたことだった。いまの機材からすれば恐ろしいほど素朴な時代に、それはそれは驚異的なテクニシャンぶりだった。
 
アルバム『危機』のジャケットはタイトルとYESとだけかかれた寡黙な表を開けると内側いっぱいに、ロジャー・ディーン自身もお気に入りというあのイラスト世界が拡がっていくが、その光景が音によって立体化された世界であった。

さて、そこからのイエス物語は、あまりに多岐、複雑だし、聞き手の出会った時期、音楽趣味の傾向、フェイバリット・プレイヤーによって評価はバラバラとなる。70年代前半の、いわゆるプログレ期を至上とする人も多いだろうし(僕も一票)、空前の大ヒットとなった“ロンリー・ハート”をイエスの代表曲とする人は世界中に沢山いる。ただ、80年代後半、ジョン・アンダーソンやビル・ブルーフォード等、おなじみのメンバーが揃いアンダーソン・ブルーフォード・ウェイクマン・ハウ(ABWH)が結成され、クリス・スクワイアやトレヴァー・ラビンを中心としたイエスと対立した頃は悲しかったし、グループ名を巡っての裁判騒ぎのニュースが続いていた頃は興味も薄れていくばかり。


ロックに限らず大物バンドでは往々にしてありがちな本家争いというわけだが、それも90年代前半には、二つの流れが合流することで解決。それを知らせることになったアルバムが『結晶(Union)』というのは、ベテラン・バンドならではの余裕だろう(実際にはこれほど単純な話ではないが)。
 
その後もメンバーの離脱、復帰、新加入などの騒ぎは激しく続いていくのだが、古くからのファンを喜ばせたのが13年3月から14年6月まで、北、南米、ヨーロッパで行われた<Three Album Tour>で、これは『サード・アルバム』(『こわれもの』に変更も)『危機』『究極』を全曲、収録曲順に演奏するという夢の大型企画(笑)。世界中のファンを大喜びさせたものの、厳しいニュースも降りかかる。15年に、自分こそがイエスだ、との思いがもっとも強かったクリス・スクワイアが白血病で亡くなり、さらに今年の5月には、イエスのみならず数々のロック史に残る名盤にも参加してきたアラン・ホワイトが亡くなっている。
 
かつてスティーヴ・ハウはインタビューで、クリス、ジョン、ビル、リック、そして自分というラインナップほどすごかった時代はなかった、というようなことを言っていた。激しく同意したいが、それを再現することは永遠に不可能となったのである。しかし、そのエッセンスの現在形を、彼自身がもうすぐ聞かせてくれるのだから期待は大きい。

もともとこのツアーは本来であれば『リレイヤー』の再現として20年から行われる予定であったが、新型コロナウィルスの世界的大流行により延期、約2年間の待機状況後ではバンドとして『リレイヤー』を隅から隅まで知っているわけではないとスティーヴは判断して『危機』へと変更となった。ここらの経緯を『ロッキング・オン』8月号のインタビューでもスティーヴは語っている。「ここにきて『危機』に替えたっていうのは、そうすることでファンのみんなもよく知っている、ぼくたちの自信に満ちた、クオリティの高い演奏を提供できるはずだというところからなんだよ。それは『危機』だからできることであって、『リレイヤー』じゃないんだよね」。
 
逆に言えば『リレイヤー』再現という楽しみもこの先にも残されたわけだから、聴き手としてもさらに盛り上がって『危機』へと挑めるわけだ。

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これを書いてる時点で最新の<Close to the Edge 50th Anniversary Tour 2022>公演は22年6月29日アイルランド、コークで、そのセットリストを見ると、『トーマト』からの“自由の翼”に始まり『サード・アルバム』の“ユアズ・イズ・ノウ・ディスグレイス”や“クラップ”、『こわれもの』からの“燃える朝焼け”などの人気曲で盛り上げていき、10曲目として組曲“危機”が始まり“同士”、そしてラストとして“シベリアン・カートゥル”が演奏され本編終了。
 
アンコールは“ラウンドアバウト“スターシップ・トゥルーパー”とこの時代のイエスを愛するファンには最高のプレゼントが用意された。


スティーヴを別格として最古参となったジェフ・ダウンズ(Key)、12年以降、共に看板を守るジョン・デイヴィソン(Vo)、ビリー・シャーウッド(B)、そしてアランの代わりにジェイ・シェレン(Dr/Per)という編成は、あの時代を再現するにふさわしいテクニシャン揃いとなっている。50年という歳月のイエス物語を新たな船による航海でたっぷりと楽しませてくれるに違いない。(大鷹俊一)


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