音楽として、そして、誇りと生き方として、「バンド」を選んだ新鋭3ピース・板歯目(ばんしもく)、インタビュー!

音楽として、そして、誇りと生き方として、「バンド」を選んだ新鋭3ピース・板歯目(ばんしもく)、インタビュー! - photo by 笹原清明photo by 笹原清明

周りにいろいろ言われすぎて頭が混乱した時でも、バンドでいれば「そっちの意見は聞かずに、この3人でいればいいや」と思える(千乂)

――「生きてこられた」というくらいだから、千乂さんにとっては相当大きな存在ですよね、Teenager Kick Assは。

千乂 そうですね。すごく落ち込みやすい時期もあったんですけど、「これを聴いていないと生きていられない」っていうくらい、私にとって生きる活力というか。Teenager Kick Assが、私が生きる方向を指してくれた感じでした。私、歩くのは好きだけど、外に出ることは好きじゃなくて(笑)。でも、Teenager Kick Assを聴きながら家を出て道を歩くと、その時だけは自分のランウェイを歩いている感覚になる。「学校行きたくないな」って思っている時はTeenager Kick Assを聴きながら家を出て、勝手に強くなっちゃって、違う道に曲がってみたりして(笑)。「私、どうしたらいいんだろう?」と思っている時に、Teenager Kick Assを聴いていたら、「こっちに行こう」って思える感じでした。

――たとえば“バトルカメ”とか、「音楽とともに生きることで強くなれる」という感覚は、板歯目の曲からも強く感じますね。

千乂 確かに。周りに対しての対抗心は、あまりないんですけどね。でも、ずっと人からいろいろ言われることが多かったし、性別が女だから「女の子はもっとこうしたほうがいいんじゃない?」って言われたりとか。そうやって周りにいろいろ言われすぎて頭が混乱した時でも、バンドでいれば「とりあえず、そっちの意見は聞かずに、この3人でいればいいや」と思えて。音楽は楽しくて始めたものだし、この3人で楽しんでスタジオに入ったり、ライブをしたり、この3人で小さくギュッと集まって頑張っていきたいし、そういう気持ちでやってきたなと思います。

――「3人でギュッ」という感覚に対して、おふたりはどうですか?

庵原 「3人でやる音楽」であることを大事にしたいという気持ちはありますね。周りに流されず、「3人でできることをやろうぜ」っていう。今まで出してきた曲も、この3人でできることを大事にしてきたと思うんですよね。この3ピース感というか、生感というか。他の要素をつけ足すにしても、あくまでも「この3人がやっている」っていうことを土台にした形にしたいと思うし。

千乂 私、ヒップホップが大好きで、ひとりでライブに行ったりしているんですけど、私は、ステージに立ってあんなにキラキラできないなと思うんですよね。私たちは自分たちができる、自分たちがやりたいことを最大限やっていきたいです。「こういうの、言葉にできないけどめっちゃやりたい」って頭の中にあるものを、頑張って、この3人でいける最大限まで作っていきたい。

――板歯目は3人それぞれが曲作りをされるということですが、それぞれの個性が曲にも出ていますよね。

千乂 たとえば“KILLER,Muddy Greed”とかは、展開の「どういう感じでくるんだろう?」と思わせる感じとか、歌詞を言葉より音として重視している感じが「大和だな」って思うし。“ちっちゃいカマキリ”とかは、ゆーへーっぽいなと思います。小さい頃から変なことを真剣に言う人なんですよ、ゆーへーは。小学校3、4年生の頃に隣の席に座って授業を受けていたら、窓の外の鳥に話しかけたりしていて(笑)。

庵原 カラスの目線になったり、普段の生活の中で「そこに着目する?」っていうことを歌詞に書いてくるよね、ゆーへーは。

歌だったら、思っていることを書いても怒られないだろうなと思っていて(笑)。音楽はラッキーな場所です(千乂)

――新曲の“くそったれ人生最悪の”は、千乂さんが作詞、庵原さんが作曲にクレジットされていますね。

千乂 この曲は私が先に歌詞を書いて、それに大和が曲をつけてくれて。歌詞は、簡単に言えば、特定の人への悪口なんですけど(笑)。

――そんな感じはしました(笑)。

庵原 千乂さんって、他の人が想像できないくらいストレートに歌詞を書くんですよね。いい意味で緻密に作っていないから、どんな人にでもわかりやすい歌詞になっている。千乂さんの歌詞を100人に見せて「どういう意味だと思う?」と訊いたら、100人が同じことを答えそうなくらい、わかりやすい歌詞と、ギターをガチャガチャ弾いている系のリフが千乂さんらしさなのかなって。“Y(ワニ)”っていう曲とかもそうなんですけど。

ゆーへー “まず疑ってかかれ”とかもそうだよね。わかりやすい。

千乂 頭が悪いから、知らない言葉が多すぎて、使える言葉が限られてるんだよね(笑)。

――千乂さん作詞曲は「想像できないくらいストレート」というのは、僕も強く感じます。心の形が、社会性なんかを気にして歪められずに、そのまま出ているというか。「この感情、こんなにわかりやすく言葉にして歌にしてよかったんだ!?」と思う。

千乂 元々、人の顔色を見ちゃったり、考えすぎなところがあって。常に「どうしたら怒られないだろう?」と考えちゃうんですけど、歌だったら、思っていることを書いても怒られないだろうなと思っていて(笑)。人に向けて悪口を書いている曲もあるし、夢で見たことをそのまま書いている曲もあるし……音楽はラッキーな場所です。

――“くそったれ人生最悪の”の歌詞はどんなふうに出てきたんですか?

千乂 まだガキンチョですけど、19年くらい生きてきて、「わりと、嫌な人いるな」と思うことが多くて。「最初はいい人だと思ってたのに、この人、めっちゃ嫌」みたいに思ったことがあったんです。でも、最悪な出会いをしちゃったのは仕方がないから、その経験を踏み台にしていい人に出会いたいので、とりあえず感謝しておくわ、みたいな(笑)。本当に、そのまんまの歌詞ですね。海外のアーティストさんの曲を聴くと、直接的に人の悪口を書いているような歌詞っていっぱいあるなと思うんです。私も直接的に特定の人への悪口を書いても、音楽の中だし怒られないだろうって(笑)。

――《さようなら人生最悪の出逢いに感謝しておくよ》というラインがいいですよね。

千乂 私はもう次に進んで行くし、でも、なかったことにはしないし……っていう。その時の私のメンタルがそんな感じだったんです。もっと前に書いていたら、もっと酷かったかもしれない(笑)。でも、最終的には「明るくいたい」っていう気持ちもあるし、そういう部分を、大和が曲として出してくれたので超満足してます。それに、私と同じようなことを感じている人もいるのかなと思って。私は違うけど、上司に嫌なことを言われたりとか、説教垂れてくる人に出会ったりとか。

――「自分と同じような気持ちの人もいるだろう」って、曲を作る時に意識しますか?

千乂 「共感してほしい」というか、「いるんじゃないかな?」とは思います。まったく同じということはたぶんないけど、同じことを感じている人はいる……というか、正直、「いてほしい」と思っているのかもしれない。「私だけこんなに辛い思いをしている」と言っている人もたまに見るけど、それって、めっちゃ孤独じゃないですか。ひとりでも自分と同じような人がいてくれたほうが楽というか、まだ救われると思うので。「私と同じ人、いてほしいんだっ」っていう感じで、私は思ってますね(笑)。


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