3月1日に、ニューアルバム『Tank-top Flower for Friends』と、2022年8月25日の日本武道館を含む「ヤバイTシャツ屋さん “ぶどうかん” TOUR 2022」3本(他の2本は、愛知県刈谷市の「葡萄観光農園 小林農園」と、北海道の「はこだてわいん葡萄館本店」前駐車場で開催※特典映像のみ収録)等を収めた映像作品『Tank-top of the DVD SPECIAL Ⅱ -NIPPON BUDOKAN-』をリリースするヤバイTシャツ屋さん。
本人たち曰く、バンドの初期に近いような、明るさや元気さやフレッシュさに溢れた、そのニューアルバムの中から、特に強く耳にひっかかる曲、特に面白い曲をいくつか選んで、それについて訊いたインタビューをお届けします。
なお、それ以外の、アルバムの全体像や、3人が今感じていること、考えていることなどについて訊いたインタビューは、発売中の『ROCKIN’ON JAPAN』4月号に掲載されています。そちらもあわせると、ニューアルバムと今のヤバTがより深くわかるので、ぜひあわせてお読みいただければ幸いです。ではどうぞ。
インタビュー=兵庫慎司
位置情報共有アプリを僕のまわりの人と入れてて、友達が集まると燃えるんですよ、そこが。俺のおらんとこでめっちゃ燃えてんっすよ(こやま)
──ニューアルバムの中の、ここで初めて聴ける何曲かについて、話してもらいたいんですが。まず“俺の友達が俺の友達と俺抜きで遊ぶ”、この曲、すごい!と思ったのが……こういう音楽性のバンド、いっぱいいるじゃないですか、ここ15年ぐらいずっと。こやまたくや(G・Vo) はいはい。
──このイントロ、この展開、この曲調。山ほどいるじゃないですか。
こやま 山ほどいます。
──それをわざとやって、他のどれよりも曲がいい、というのがね。
こやま はははは。いや、マジで、曲の部分に関して言うと、めちゃめちゃ適当に作りましたけどね。適当にというか、あるあるで。
しばたありぼぼ(B・Vo) よくある曲という。
──で、そういう曲にみなさん、英語の歌詞、もしくは内面を吐露するような日本語の歌詞をのっけるところを、ヤバTだからこの歌詞。というのも、素晴らしいと。
しばた ノンフィクション。
こやま ノンフィクション。「なんでこれを歌詞にするねんシリーズ」ですね。
──はい。ただし、ヤバTのこれまでの「なんでこれを歌詞にするねんシリーズ」とちょっと違うのはこの曲は、ちゃんと聴くと、ちゃんと悲しい。
こやま (笑)。
しばた みんなにもちょっとね、思い当たるフシとかがね。
──これは昔の話?
こやま これはわりと最近ですね。ここ数年の話です。結構あるんですよね、俺が紹介した友達が、俺が連れて行った友達と、俺なしでめっちゃ遊んでる。
もりもりもと(Dr・Cho) 紹介された側も、ちょっと、わかりますよね。
しばた ああ、逆のね。
もりもと 逆パターンというか。
──でも、最近ならまだよかった。こやまさんはツアーとかで忙しいから、こやまさん抜きで遊んでいる、という可能性も──。
こやま いやいやいや、それがね、位置情報共有アプリを僕のまわりの人とか、結構入れてるんですよ。だから、僕がどこにいるかとか、その友達がどこにいるかとかがアプリでわかるんすよ。で、集まるとね、燃えるんですよ、そこが。俺のおらんとこでめっちゃ燃えてんっすよ。俺は家マークついてるから、みんな俺が家にいることはわかってるんですよ。
しばた 使うな、そんなアプリ!(笑)
──現代ならではの、深刻な問題ですね。昔だったら──。
こやま わからなかったし、なんとでも言えたじゃないですか。嘘もつけるし。嘘つけないですから、位置情報で燃えてると。
しばた やっぱり、みんなこういうのSNS(Instagram)のストーリーとか見て、思ったりすんのやろな。「あれ? 俺、今日空いてんのにな」とか。
──だから今までの「なんでこれを歌詞にするねんシリーズ」から、さらに進化しているなあと(笑)。
しばた 心がね。“DQN(の車のミラーのところによくぶら下がってる大麻の形したやつ) ”とは、また違うよな。あれより重いやん、こっちのほうが。
こやま そやな。曲の構成、ほぼ一緒なんですけど。
しばた やから、たぶん初期っぽいんですよね。
本来俺は、この足の長さやったら身長もっと低いはずやのに、胴が長いおかげでちょっと身長を稼げてるって小学生ぐらいの時からずっと言ってたんです(こやま)
──“ダックスフンドにシンパシー”も、足が短いんじゃなくて胴が長いんだ、という──。こやま メッセージ性ありますよね、すごく。僕、すごく座高高くて。言ったら足短いんですけど、胴が長いだけや、って思ってて。本来俺は、この足の長さやったら身長もっと低いはずやのに、胴が長いおかげでちょっと身長を稼げてる、っていうふうにずっと言ってたんです、小学生ぐらいの時から。ほんまに、クラスでいちばん背が高い人と、同じ座高やったんすよ。めちゃめちゃ背ぇ低いのに。
しばた・もりもと (笑)。
こやま 衝撃やって。俺、この座高やったら170超えてへんかったらおかしいな、みたいな。っていう思い(笑)。
しばた メッセージ性。
──“インターネットだいすきマン”も、いいですよね。
こやま 今回のリード曲ね(笑)。
しばた これに関しては、もりもとがギリダメと言っている。
もりもと うん、難しいですよね。
しばた もりもとジャッジ的には、「本当にこれ、アルバムに入れるんですか?」のやつです。
もりもと ちょっとその、なんて言うんですかね……ヤバイTシャツ屋さんのアルバムに本当に入るのかどうか、というところ。まあ、しっくりくればなんでもいいと思ってたんですけど……あと、自分が何をするかもわかってなかったんで、最初。こやまさんがピアノだけ入れてるデモを聴かせてくれたんですけど。ドラム、打ち込みだし、歌に駆り出されたんで……まあ、僕の苦手なジャンルのタイプですよね。
こやま・しばた はははは!
──本音がシンプルに出ましたね。
こやま なんでや!
もりもと ふたりは面白がってるんですけど。面白いし、かわいい曲だなと思うんですけど、それを自分の中でどう消化して表現するかっていうところは、自分次第なところがあって。それにちょっと時間がかかるな、っていう。まあでも、僕も“インターネットだいすきマン”のひとりだなと思うと、別に共感はしますし。ただその、最近のこやまさんの、いろんなことに気を遣いながら作詞をする中では、だいぶ攻めてるなとは思って。ここまで切り込んだ表現をするのも、今だったらいいのかな、と思いつつ。あとは、ライブですよね。ライブでお客さんがどういう感じでこの曲を楽しんでくれるかっていうのは、今週末わかりますね。
──あ、やるんですね。歌詞カードに《(↑ライブではみんなで叫ぼう)》っていう箇所があるけど、この曲、ライブでやるのか?と思ってました。
もりもと はい。初披露が待っているので。
こやま 明日やります、広島で(※2月4日・広島 アステールプラザ 大ホール)。
──でもこの曲、こやまさん的には会心の出来なのでは。
こやま そうですね。これぞヤバイTシャツ屋さん。
もりもと あら、そう!?
しばた 「あら、そう!?」って言ってる(笑)。
もりもと まあでも、こやまさんらしさは全開だなと。「これがこやまたくやだ」と名刺代わりにしても、なんの間違いもないような。
こやま 歌詞に《おんな》って出てくるとこがいいと思いますね。言わないっすもんね、今日び、歌詞で。これをしばたがあの声で歌ってるから、大丈夫そうに聴こえるっていう。
──《そのクソリプを送っていた友達が/PS5の販売詐欺に遭っていたよ》って、最高ですね。本当かどうかは置いといても。
こやま ほんまなんですけどね(笑)。なんかね、高校の友達のアカウントがあってね、変なリプライをめっちゃ有名人に送ってて。「なんやこいつ」と思いながら見てたら、「詐欺に遭ったかもしれません」ってツイートしてて(笑)。
──確かに、知り合いが有名人に変なリプをしているのを見ると、引きますね。
こやま (笑)。「こいつのリテラシー、ヤバいな」っていう。
しばた ちょっとびっくりしちゃいますよね。
もりもと 自分のツイートにそういうのが来た時、チェックするんですけど、やっぱりだいたいそうなんですよね。それを生きがいにしてるというか、いろんな人に話しかけまくってる。で、プレゼントキャンペーンとかもバーッとリツイートしてる人が多いっすね。
──だからこれも、“俺の友達が俺の友達と俺抜きで遊ぶ”と同じく、現代ならではの病を描いた曲だなあと。
こやま 時代ですねえ。