2015年に結成され、昨年11月から現在の5人体制となったアイドルグループ「フィロソフィーのダンス」。クリエイターの純度の高い創作エネルギーとメンバー各々の豊かな個性が理想的な形でシンクロしたとき、かけがえのない輝きが生まれるのが「アイドル」なのだと、最新EP『One Summer Dream』を聴くと心から実感できる。ファンク、ソウル、ディスコミュージックを下地としたグルーヴィーなサウンドが活き活きと躍動し、5人の歌声が多彩な表情を浮かべる作品だ。多種多様なグループが活躍している現在のアイドル界で異彩を放ち続けるこのグループの表現スタイルは、本人たちのどのような意識に根差しているのだろうか? 奥津マリリ、佐藤まりあ、日向ハル、木葭のの、香山ななこに語ってもらった。
インタビュー=田中大
バチバチにかっこいい曲と歌、そしてちょっとヘンテコなダンス(笑)。そこが他のアイドルとは違ういい味だと思っていました(木葭のの)
――ファンク、ソウル、ディスコミュージックを土台としたサウンドは、フィロソフィーのダンスの音楽を特徴づける要素として大きいですよね?奥津 はい。それはずっとやり続けてきたことですし、どの曲にもそういうエッセンスが入っていると思います。
日向 始動したときはまだコンセプトが決まっていなくて、「いい楽曲をいい歌で届ける」というスタートだったんです。こういうジャンルと出会ったことによってフィロソフィーのダンスのカラーも生まれて、いろんな方々に知っていただけるきっかけになりました。
佐藤 「曲を知らなくてもいいから踊ってください」みたいなことを私たちはよく言うんです。そういう楽しみ方ができるのは、こういうジャンルの音楽の魅力だと思っています。
――昨年加入したおふたりは、フィロソフィーのダンスの音楽のどのようなところに魅力を感じていました?
木葭 バチバチにかっこいい曲と歌、そしてちょっとヘンテコなダンス(笑)。そこが他のアイドルとは違ういい味だと思っていました。加入する前から好きだったんです。
日向 初期の振り付けをお願いしていた方が、「このジャンルをアイドル界に浸透させるには?」と考えたそうなんですけど、「コミカルにしたほうが丁度いいだろうな」という結論に至ったとおっしゃっていました。後になって話していたことなので最初からそう思っていたのかはわからないですけど、きっちりやりすぎると親しみやすさがないから、あえてこういうダンスにしてみたということなんだと思います。
――ユーモラスな要素を入れつつも、「かっこいい」に着地する匙加減になっていますよね。
奥津 はい。「真面目にふざける」みたいな感じです。
香山 私も加入前からフィロソフィーのダンスの曲が大好きで、すごく聴いていたんです。ライブをメンバーも心から楽しんでいるのが伝わってきて、観ながら一緒に楽しんでいました。
奥津 決まったことを決まった通りにやるのも大事なんですけど、その場で感じたことをその場でちゃんと表現するのも大事なんですよね。それはいいライブに繋がる要素だと思っています。
アイドルの音楽はアイドルの売り場に置かれているというだけで、音楽自体はそれほど他と変わらないはずなんです(奥津マリリ)
――マリリさんは、もともとはシンガーソングライターですよね?奥津 はい。一切踊ったことがなかったので、ダンスのことは何も知らなかったんです。でも、声や表情だけではなくて、全身で表現する楽しさをダンスを通じて知りました。全身全霊で伝えるのもアイドルのよさだと思っています。
――アイドルになる前は、アイドルミュージックに対する偏見はありました?
奥津 ありましたよ。偏見という感じではないんですけど、シンガーソングライターの前はバンドマンだったんです。ギターロックとか尖った音楽が好きだったので、「俺はロックだから、売れるために音楽をやってるんじゃない」みたいな強い思想を持っていた時期があって。間違ったロックの精神というか(笑)。斜に構えていた時代がありました。アイドルの音楽はアイドルの売り場に置かれているというだけで、音楽自体はそれほど他と変わらないはずなんです。音楽が好きなら、「アイドル」「バンド」「シンガーソングライター」というような売り場で判断するのではなく、音楽自体を聴いて向き合ってほしいなと思います。聴いてもらうことによって、アイドルの面白さも伝わるようなグループになりたいです。
――「アイドル」は特定のサウンドスタイルを表す言葉ではないから、自由さもありますよね。
奥津 そうですね。「クリエイターの方々がやりたいことをアイドルが具現化している」みたいな面もあるのかなと思います……そんなグループもいます(笑)。
――ハルさんも、もともとバンドをやっていたとか。
日向 はい。自分がアイドルになるとは思っていなかったですし、もうちょっと若かったらお誘いがあっても断っていたと思います。でも職を手にしたくて、音楽で生きていきたくて、歌う場所が欲しくて、「何かお仕事ください」とプロデューサーの加茂(啓太郎)さんにお話をしたときに、「今アイドルグループを作ろうと思ってるんだけど、オーディションを見にくる?」って言われたんです。
――アイドルになって気づいたことはあります?
日向 マリリの話の続きみたいにはなるんですが、アイドルを始めてから「歌が上手くてアイドルっぽくないね」って言われるようになって、そこに違和感を覚えています。アイドルはレベル分けの言葉でもないから、歌が上手いアイドルも、ダンスが上手いアイドルもたくさんいるんです。でも、「ちょっと技術が足りていないのがアイドル」みたいなイメージが世間にはあるみたいで、それが悔しいです。楽曲がすごく面白いグループもたくさんいるし、歌える人もたくさんいるから、そういう存在が日の目を見るきっかけにもなりたくて。「アイドルも上手いんだよ。それが当たり前なんだよ」になればいいなと思っていて、そのためにもアイドルの看板を背負ったままいろんな場に出て行きたいというのが、私がアイドルを続けている理由のひとつです。