──楽曲を貫く思想は概念的ですが、一方で詞はとてもリリカルで美しい表現が多いと思っていて。天体にまつわる言葉がすごく出てきますけど、その由来はありますか?この1秒1秒の今が自分の生命だと思ってて、歌詞にはそこを書きたいと思ってる(ツミキ)
ツミキ おそらくなんですけど、小さい頃、天体にすごくハマってた時期があって。サンタさんに天体望遠鏡をプレゼントしてもらって、ベランダで父親と天体望遠鏡で土星を見たりした経験が映像としてずーっと染みついてるんですね。あと、僕はロマンを作品に落とし込むのも好きで。そういう経験の中で、この曲にはこのスイッチが合うんじゃないかって考えた時に、天体が出てくるのかもしれないです。
──“雨にうたえば”の《きらめきのきょうをうたい続けよう》、“どうにかなっちゃいそう!”の《永遠とか要らない/今だけを切り取っていたい》、“ミッドナイト・リフレクション”の《永遠なんて要らない だってひからないから》みたいに、「今」にフォーカスした言葉もよく出てくるなと。
ツミキ ああ、確かに。それは完全に無自覚でした。でも、未来とか過去って、ただの飾り──って言ったらちょっと言いすぎかもしれないですけど──この1秒1秒の今が自分の生命だと思ってて、基本的に歌詞にはそこを書きたいと思ってます。その人がこの楽曲に出会った瞬間が、その人にとっての今だと思うので。
──今ツミキさんが仰った思想は、みきまりあさんが書かれた“ブリーチ”(『ルール』収録)にも通じてるなと思います。“ブリーチ”で、僕がすごく好きな歌詞が、《すべてのものに終わりはくるなら/あたしは今だけを愛したいよ》というところなんですけど、ブリーチの髪という美しく保つのが難しい、まさに今だけのものにその思いをたとえて歌っているのがグッときました。
ツミキ “ブリーチ”、いい歌詞ですよね。僕もすごく好きなんですよ。
みきまりあ ははは。めっちゃ嬉しいです。“ブリーチ”はめちゃくちゃ落ち込んでる時期に、感情的に殴り書きでバーッてメモ帳に書いたものをツミキさんに渡したら、いい感じにまとめて作品に落とし込んでくれたので、すごいなと思って。
ツミキ (笑)僕はクリエイティブの過程が好きなので、何かをひらめく瞬間とか、「あ、この曲が誰かに聴かれたらこうなるかも」みたいに思いを巡らせる瞬間に楽しみがあるんですよね。そういう枠組みを飛び越える瞬間がすごく好きだから、枠はたくさん作ってほしいです。
みきまりあ 私に?(笑)。
──ふたりとも、なんというかアスリートみたいですね(笑)。枠を作ってもらってそれを飛び越えたいツミキさんと、歌唱において難しい課題を与えられてそれを超えたいみきまりあさんと。
ツミキ ははは。
みきまりあ 確かに(笑)。戦ってる感じだよね。
──あと、歌詞でいうと、ツミキさんは曲によってひらがなと漢字の使い分けがすごく巧みだなと思ってて。“umbrella”、“ゴーストキッス”みたいな漢字を多用した近代文学調の曲もあれば、“night draw”や“ミッドナイト・リフレクション”では、「この言葉がひらがななんだ」と思うことがあって──《よる》《きみ》《ひかり》《かなしみ》とか。そういう使い分けにツミキさんの美意識を感じるんですけど、その語彙は何から形成されたと思いますか?
ツミキ 正直、明確なボーダーラインはなくて、その場で思ったように書いてるだけなんですけど──小さい頃から、国語の教科書が好きで。1年生の教科書はひらがなで書いてるじゃないですか。で、小学6年生になった時に1年生の教科書を開くと、「ひらがなで書かれていることでまったく違うように感じるな」みたいなことを思って、そういう美意識が形成されていったんだろうなと思います。あと、詩に熱中してた時期があったので──谷川俊太郎さんとか五味太郎さんが小さい子向けに書かれた詩や、反対に中原中也とかのもう少し入り組んだ堅苦しい詩とか──それは大きいヒントになってる気がします。編曲とかなり近いところがあるとも思ってるんです。漢字で書くかひらがなで書くか英語で書くかって音色の違いだと思うんですよ。ピアノで演奏するかギターで演奏するかで作品の風景が変わってくるのと一緒で、ひらがなで書くことで子どもが歌ってるように感じるみたいな。視覚的なものなのに音があるのは面白いなと思いますよね。「ひかり」もひらがなで書いたほうが柔らかい光のような気がする、みたいな感覚があるかもしれないです。
──最新曲“ミッドナイト・リフレクション”は劇場先行版『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』の挿入歌ですが、歌詞にはツミキさんの言葉への美意識が光っているし、天体への興味が『ガンダム』の世界観とも呼応していて、タイアップながらちゃんとNOMELON NOLEMONの新曲だなと感じました。この曲ができた経緯は?“ミッドナイト・リフレクション”は本番も宅録で、ほんとにワンルームの部屋で歌ってて(笑)。ぽつーんと佇んでる感じからだんだん広がっていくという曲に情景がリンクしていた(みきまりあ)
ツミキ 最初は『ガンダム』サイドから資料をもらって、そこにあったヒントを自分なりにひもといて、サウンドや歌詞で「宇宙飛行」を表現できないかという構想を立てました。構成的には、ワンルームの小さい部屋からサビに向かってドーンっと広がっていく、大気圏を通過してどんどん速度が上がっていくみたいなストーリーで。
みきまりあ この曲は本番も宅録で録ってて、ほんとにワンルームの部屋で歌ってて(笑)。ぽつーんと佇んでる感じからだんだん広がっていくという曲に情景がリンクしていたのが印象的でした。
──タイアップに向けて曲を作ることも、ある意味では枠組みの中で表現することに近いですよね。
ツミキ まさしく自分が想定してないものを、自分の思想で落とし込むという過程がすごく楽しくて。あと、総合芸術として、映像と重なった時に曲の聞こえ方が変わったりするのは、自分のアウトプットのはずなのにインプットになっていて、自分を成長させてくれる機会だなと思ってます。
──ツミキさんはクリエイターとして成長していきたいという意思が強いんですね。
ツミキ 言葉が難しいんですけど……僕は技術がなかったんですよ。音楽自体も遊びで始めたので、自分が表現したいのにできないもどかしさがすごくあったんですよね。それが悔しくて、克服するために自分なりにいっぱい成長しないとって、始めた当初からずっと思ってて。
──その努力の結果、自分の頭の中に鳴ってる音楽を表現する技術は徐々についてきていて、だからこそ今はそれを超えた偶発的な喜びをユニットで求めるフェーズに達してると。
ツミキ まさにそうです。
──今、ツミキさんにはNOMELON NOLEMONのほかにも、楽曲提供の仕事やAoooとしての活動もある中で、NOMELON NOLEMONはどういう存在ですか?
ツミキ NOMELON NOLEMONは、自分の中で「ポップスをやる」ということをテーマに置いてるんですよね。逆に言うと、ほかの作品──楽曲提供の場合はちょっと違うんですけど──自分が歌唱したりAoooで活動したりすることには、ポップスという要素をあんまり感じてなくて。NOMELON NOLEMONは、自分の表現を使ってポップスに昇華するにはどうしたらいいかを考えるユニットという認識です。
──みきまりあさんもソロ活動をされていますが、NOMELON NOLEMONはどういうものでしょう?
みきまりあ 自分を成長させてくれる場所ですかね。ノーメロがなかったらたぶんこんなに歌も……うまくなってるかというと……。
ツミキ 自分で「うまい」って言うのが恥ずかしかった?(笑)。
みきまりあ うまくないですけど(笑)、成長できてなかったってめちゃくちゃ思うので。成長させてくれる場所だし、だんだんそれが自分の一部になってきて、一緒に成長していけたらいいなと。ノーメロを始めてから性格も含めてすごく変わりましたし。前はよくも悪くも楽観的だったんですけど、今は責任感が増してきて。さっき話した自分の中での最低ラインもどんどん高まってきてるので、ちょっと大人になったというか……ちゃんといろんなことを考えるようになりました(笑)。
──最後にユニットとしての将来のビジョンを聞かせてください。
ツミキ ポップスのど真ん中で自分たちの音楽がランキングで1位を獲るみたいなことがあれば光栄なんですけど──それよりもやっぱり心に残る音楽を作ることが目標で。うーん……何か具体的なものを出したいな。“君が代”とか……“君が代”は言いすぎか(笑)。
みきまりあ 国歌だね(笑)。
ツミキ (笑)それくらい誰もが知ってる曲というか。僕個人の夢が、教科書に載ることなんですけど、それに見合う曲を作りたいです。
みきまりあ 私はとにかく長く続けていきたいと思ってます。そのためには、リスナーの方の協力も必要だと思ってるし、自分たちが曲を出し続けないとって思ってて。あとは……パッと出てこないですけど──ほんと宇宙まで届いたらいいなって思いますね。ふたりとも広すぎるけど、こんなこと言って大丈夫かな?(笑)。
ツミキ 大丈夫です!
──アスリートなふたりがそのふたつの壁を乗り越えられるのを楽しみにしてます!
ツミキ 僕も楽しみです。
みきまりあ 頑張ります!
ヘア&メイク=髙 千沙都
スタイリング=Minoru Sugahara
衣装協力=remer store ☎03-6276-7644