【インタビュー】sanetiiの音楽は、君をひとりにさせない! 孤独も自信の無さも歌い飛ばすシンガーソングライター、初のロングインタビュー

【インタビュー】sanetiiの音楽は、君をひとりにさせない! 孤独も自信の無さも歌い飛ばすシンガーソングライター、初のロングインタビュー
sanetiiの“アメイジンググレイス”を初めて聴いた時の心地よい違和感を今でも覚えている。ギターロックとボカロサウンドを融合した、ノリがよくてみんなに愛されそうな曲調にのせられていたのは、ふと死を見つめてしまうようなじんわりと体を蝕んでいく孤独という感情だった。一方でライブを観ると、そんな暗い曲でも観客全員が飛び跳ね、シンガロングする熱狂が渦巻いていて驚かされる。
SNSの存在を無視できない今の世の中では、周りと自分を比べて自信をなくしたり孤独を感じたりすることはもはや日常の出来事の一部になっているのだろう。このインタビューの中でもsanetiiは自分に自信が持てない部分があることを素直に語ってくれたし、新曲の“SPEC!”はまさにそんな自分や、自分と似たような人を鼓舞するように作られた楽曲だ。
なぜsanetiiの音楽を初めて聴いた時に違和感を感じたのか。それは孤独に手を差し伸べたり、寂しさに焦点を当てて共感を呼ぶ楽曲はたくさんあっても、あるがままを描き、これが当たり前だと言わんばかりに自然に明るい曲に昇華した作品が珍しかったからだと思う。これからの時代、そんな曲を生み出すsanetiiはますます人々の心の拠り所となるに違いない。

インタビュー=有本早季


僕が歌っていいんかなっていうのがずっとあった。でも褒められることも多くて、意外とひとりでできるんかなと思った

──最初に音楽に興味を持ったきっかけはなんですか?

小学校の時は、ゆずとか嵐とかメジャーなアーティストばっかり聴いてて。ちょうどその頃、母親が趣味で4000円ぐらいで買ったギターを家で弾いてたんですよ。そのギターを自分も遊びで弾いたのが、音楽に触れた最初の経験かもしれないです。で、小5の時、父親にドラム叩かされて。

──(笑)叩かされて!?

なんか急にスタジオに連れて行かれたんです。父親は昔、趣味でバンドをやってて。僕は当時、ドラムを見たこともなかったけど、そこでドラムに触れたのをきっかけに、気づけば曲をコピーするようになって。兄が家で音楽を常に爆音で鳴らしてた影響で、中学校に入ってからはアークティック・モンキーズとかグリーン・デイとか、洋楽も聴くようになりました。中学の友だちとはアークティック・モンキーズのコピバンして、高校生の時にGarageBand(音楽制作アプリ)で初めてオリジナル曲を作って。

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    photo by 武井 勇紀

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──オリジナル曲を作るようになったきっかけは?

高校の英語の授業で、自分の特技を発表し合う機会があったんです。それまではあんまり作曲したことはなかったんですけど、コードを適当にあてて、歌詞カードをみんなに配って、っていうのをやって。それを先生がすごく気に入って、ノリノリで歌ってくれたんです。僕はただただハズかったんですけど(笑)、ひとつの成功体験になって、それから曲を作るようになりました。独学だったんで、正直、全然かたちにもなってなかったし、音も悪かったんですけど、楽しんでた。その時期に、邦ロックが好きになったんです。兄が本格的にバンドをやってたので、兄たちの曲を真似して作って聴かせたら、「結構ええやん」って。それがもう1個の成功体験。褒められて嬉しかったのが、作曲をし始めた理由でもありますね。

──そのままバンドをやりたい気持ちにはならなかったんですか?

その気持ちは強くあったんです。別の高校の友だちとバンドをやってたこともあったし、大学に入ってからは軽音部でバンドを組んだし。でも、僕の独断で全部決まっていく感覚があって、共同作業って難しいなって。それで、ソロのほうがいいんじゃないかと思うようにもなったんですけど、歌ったことはなかったし、発声練習もしたことないし、僕が歌っていいんかなっていうのがずっとあったんですよね。でも、1回自分で歌ってみようと思って作ったのが、大学3~4年の時に出した“宇陀噺”っていう曲で。全然知らない人からコメントをもらったり、褒められることも多くて、あ、意外とひとりでできるんかな、と。

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“フォーエバートゥエンティーンズ”とか“アメイジンググレイス”を作った時に、暗い心境を明るいメロディにのせることができて、自分のひとつのかたちができた

──“フォーエバートゥエンティーンズ”や“アメイジンググレイス”がバイラルチャートでランクインした時は、どういう心境だったんですか。

“宇陀噺”を出した頃は暗黒期間で。大学を留年したのもあって、すごく孤独やったんです。自分が精神的に参っているのが曲にも出てたけど、その頃はそれが自分の色やと思ってた。自分の好きなものというよりも、尖ってたほうがかっこいいっていうオルタナ思想というか。でも、“フォーエバートゥエンティーンズ”や“アメイジンググレイス”で暗い心境を明るいメロディにのせることができて、それが評価してもらえた時に、自分のひとつのかたちができた。だから精神的にすごくよくなりましたね、ほんとに。それで一気に人とつながれた気がしました。人ともっと関わっていったほうがいいなって、そこで気づいたかもしれないです。もともと人と喋るのは好きなので。

──それも成功体験ですよね。“プロメテ”のようなメロディアスな曲もあれば、 “リスミーリスミー” や新曲の“SPEC!”みたいな、リフレインがあって語呂が気持ちいい曲もありますが、「今回はこういう方向性の曲を作ろう」と決めてから作り始めるんですか。

曲は、その時ほんとに思った感情をベースに作ってます。そのあとメロディを思いついて、オケをあてていって。感情がベースにあって、そこに音楽を入れていく。だから、毎回めっちゃ変わります。結局、ちょっと暗くはなるんですけど。“プロメテ”は、それこそ「つながってくれてありがとう」みたいなメッセージで、今まででいちばん明るいと思う。

──“プロメテ”は、ストリングスも取り入れてたりして、より柔軟なアレンジで広がっているのと、シンガロングパートも印象的。曲を作る時に、こういう人に向けて歌いたいってイメージされているんですか。

僕は人のためというより、自分のために勝手に歌ってる。自分が経験してることじゃないと、ほんまのことは言えないなと思ったりして。だから、自分と同じ状況の人がたまたまそこにいれば、その人に向けてってなるし。「これは私のことやな」ってそれぞれの人が思うのもいいなと思ってるし。別にメッセージが伝わらなくても、曲が楽しいから聴くとかでも全然いいなと思ってて。誰かを救おうとか大層なことを考えてるわけではなく、たまたまその人が僕の歌に共感してくれたらっていう感じ。

──“プロメテ”というタイトルやテーマはどういうところから発想したんですか。

バイラルチャートにのったおかげで僕を知ってくれた人が多いと思うんです。そういう意味では、曲を作って活動を始めたのは僕だけど、その人たちによって僕は始めさせてもらった、その人たちが始めてくれた、という言い方もできると思う。“プロメテ”は、ギリシャ神話に出てくる、人間に火を与えた「プロメテウス」にかけてます。みんなが始めてくれた火を絶やさないようにっていう感じ。「プロメテウス」と最後まで言うとちょっとおこがましい気がしたので(笑)、「プロメテ」って途中で止めてるんですけど。

──だからMVも集大成的な、いろんな要素を取り入れたものになってるんですね。

過去のことへの感謝なんです。1年前の“フォーエバー〜”が出たぐらいから聴いてくれた人に、より刺さるかなという。もっと多くの人に向けて作ったつもりではあるんですけど、特にそういう人たちにありがとうと言う曲ではあります。


次のページ人と比べんでいいよって。自分にしかない絶対的なスペックが必ずあると思ってる
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