【インタビュー】ASH DA HEROの本質を浮き彫りにする、TVアニメ『杖と剣のウィストリア』OP主題歌“BELIEVERS”。楽曲に込めた想いを4人が語る

【インタビュー】ASH DA HEROの本質を浮き彫りにする、TVアニメ『杖と剣のウィストリア』OP主題歌“BELIEVERS”。楽曲に込めた想いを4人が語る

日本のカルチャーは僕らが思っている以上に海外に細分化されながら届いていて、好きな人はすごくディグってるなって

──新しいテクノロジーとクリエイターの関係性って、面白いですよね。音楽の歴史を辿ってみても、新しいテクノロジーがクリエイターに新しい発想を与えることが起こり続けていますから。

ASH ロックも時代毎に新しいテクノロジーが生まれて、それをうまく使えた人がいて、それを見て真似しようとしたけどできなくて生まれたものがあって⋯⋯っていう繰り返しですよね。エレキギターもそうですし、PAシステムも戦争で使われていたものですし。

──高出力のアンプ、PAシステムの登場によって、ジミ・ヘンドリックスが前代未聞のサウンドを奏でたわけですからね。

ASH AIも賛否両論がありますけど、手段がまたひとつ増えたということで、今後また別の形にもなっていくんでしょうね。音楽の構造がよくわかっていない人が、「こういうのを作りたい」って頭の中で思いながらAIにディレクションをして曲を作っていくことも出てくるでしょうし。インターネットが始まった時とか、自分はその頃まだ小さかったのであんまり体感としてはなかったですけど、そういう感じだったのかなと思います。

──機械で形にできることが増える分、人力の表現の価値が高まる面もありますよね。 “BELIEVERS”も人力演奏の熱量が伝わってきます。

WANI 普通のリズムっぽく聞こえるけど、結構遊び心のあるドラムになってます。こういうのもAIには負けないところです(笑)。剣と剣で戦う『ウィストリア』みたいな感じで聞こえるように、シンバルの入れ方も工夫してますね。

Sato ドラムとベースが一緒になってベーシックなことをやっている部分もあるんですけど、ギターレスの曲でもあるので、たとえば2コーラス目で飛び道具を使っていたり、Bメロのアルペジオっぽいフレーズとか、耳につくフレーズも要所要所に入れています。

──この曲で改めて実感するのは、ターンテーブルは楽器ということで。

Dhalsim 僕もそう思ってずっとやってます。レコードを前後に動かして音を出して、それを細かく切るのは「スクラッチ」と言うくらいなので雑音ではあるんですけど、「それを曲にいかに落とし込むか?」ってことなんですよね。毎回、曲に対して「さあ、どうするか?」ってなるんですけど。

ASH 毎回、大喜利だよね?

Dhalsim うん。たとえば最初から最後までずっとスクラッチをすることもできますけど、それは聴いてられないですからね。音をどうはめるのかをすごく考えます。遅く手を動かしたら低い音、速く動かしたら高い音が出ますし、意外と音程も大事なのがDJなんです。アニメでこの曲を聴いた子供たちとかが「この音、何?」ってなってくれたらいいですね。

【インタビュー】ASH DA HEROの本質を浮き彫りにする、TVアニメ『杖と剣のウィストリア』OP主題歌“BELIEVERS”。楽曲に込めた想いを4人が語る
──アニメの制作サイドの方々からは、“BELIEVERS”にどのような反応を頂きました?

ASH 「オープニング、やばい」みたいな感じでXでつぶやいてくださっています。アニメの初回の数時間後に“BELIEVERS”の配信が始まるので、反応が楽しみです。小学生とかが「バンドやりたい」とか思ってくれたら嬉しいですね。

──『ウィストリア』で“BELIEVERS”を聴いてロックに目覚めたという人、何年後かに出会うことになるかも。

ASH 抱きしめますよね。そんな子が現れたら。

WANI 「対バンしようぜ!」って言う(笑)。

──(笑)。『ブルーロック』の“Judgement”もそうでしたけど、アニメの曲は海外のリスナーとの出会いにも繋がりますし。

ASH 『ブルーロック』は世界に僕らを連れて行ってくれた作品です。海外と国外の隔たりっていい意味でなくなっていて、グローバライズされているのを感じます。海外の人もほぼリアルタイムで日本のアニメを観ているので、アメリカとかに行っても、最新の作品のコスプレイヤーがいるんです。先日のアメリカのライブでも、早速『スティール・ボール・ラン』のジャイロ・ツェペリが何人もいました(笑)。あと、今回のシングルでGYROAXIAの“MANIFESTO”をセルフカバーしたんですけど、バンドリ!やARGONAVIS(『from ARGONAVIS』)が海外に届いているのも感じましたね。「GYROAXIAがきっかけでASH DA HEROを知りました」というのをアメリカで言われて、日本のカルチャーは僕らが思っている以上に海外に細分化されながら届いていて、好きな人はすごくディグってるのを感じました。

【インタビュー】ASH DA HEROの本質を浮き彫りにする、TVアニメ『杖と剣のウィストリア』OP主題歌“BELIEVERS”。楽曲に込めた想いを4人が語る

自分だけの時間──居場所みたいなものの権化みたいなのが音楽だし、もっと言うならばロックってそうあるべき

──アニメの音楽を手掛けたミュージシャンが海外でライブをするのは、今や珍しいことではなくなりましたよね。

ASH アニメ文化がワールドスタンダードになったおかげで、日本のバンドに対する関心も間違いなく高まっていると思いますし、日本のバンドが作っている楽曲の構成はアメリカとは違うことが多いのも新鮮なのかもしれないです。そういう違いがコンプレックスだった時期もあったんですけど、今は「これをやったほうがオリジナルだな」と感じるようになりました。海外のクリエイター、ミュージシャンが、「J-POPっぽいのを作ってみよう」「J-ROCKっぽいのをやってみたい」ってなったらいいな。僕らが「この曲のアレンジはリンキン・パークみたいにしたい」とか言ってたように、海外のミュージシャンが「日本のASH DA HEROの“Judgement”のサビみたいな感じを持ってこよう」とか、日本のアーティストの楽曲がリファレンスに使われるようになって、逆輸入J-POP、J-ROCKみたいなものが届く未来があるのかもしれないと想像すると、めちゃくちゃ面白いです。

──海外でライブをするのも、未来のそういう動きに繋がるのかもしれないです。

Sato アニメをきっかけにASH DA HEROを知ってくれて、メンバー一人ひとりも知ってくれるようになっているのは、肌で感じています。“Judgement”を海外のライブでやると、みんな歌ってくれるんですよ。

──“BELIEVERS”は、海外のファンも歌ってくれそうです。

ASH コーラスの「ウォーウォー」は、ぜひ歌ってほしいですね。

──込められているメッセージは海外の人にとってもリアリティがあるでしょうし、日本以上に切実なものとして捉えられる状況もあると思います。

ASH 初見で届けるのは相当難しいと思うんですけど、好きになってくれたあとに英訳とかを見て感じ取ってほしいです。

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──今回のシングルには“Prologue”のニューバージョンも収録されますが、込められているメッセージは“BELIEVERS”と地続きですよね?

ASH まさしくそうです。“Prologue”は、大事なライブの時に必ず歌ってきたんですけど、「音源にしてなくない?」って気づいて。僕のソロ時代の最初のインディーズ盤の曲ですし、当時のプロトタイプで一度も演奏してないんですよ。ライブバージョンでずっと演奏してきたので、「録ったほうがよくない?」と。ASH DA HEROは昨年で10周年を迎えたので、この曲で新しい章を始めるというのを打ち出すうえでもいいのかなと思いました。

──《この世界には 居場所なんて無い/なんて君がそう言うならば/僕は作ろう》とか、まさに“BELIEVERS”でも描かれていることと重なると感じました。

ASH 生きている中で孤独を感じる瞬間は、誰しもがあると思っていて。そういう時に「決してひとりではない」って言うのは簡単だけど、やさぐれている時は誰の言葉も信用できないし、「綺麗事言われたって心に響かねえよ」ってなりますよね。でも、綺麗事として捉えられてしまう言葉を、心に届くエネルギーに変えられるのが音楽だと思っています。孤独を感じる理由って自分と世の中との距離、軋轢、差異で、「私はこう思ってるのに世の中はこうじゃない」というジレンマが、孤独や分断を生んでいくんです。「その気持ち、100%わかるよ」なんて言うつもりはまったくないですが、「ちょっとだけはわかってやりたいと思ってるやつが少なくともここに4人いるから、ちょっとでも届いたんだったら、いつでも俺らに会いに来て」ということを僕らはやり続けているんです。だから僕らはライブをやめないんですよね。

──それが居場所を作るということ?

ASH はい。学校に居場所がない、家に居場所がないとか。家なんて絶対に居場所がなきゃいけないはずなのに、ない人もいるはずだから。「悪い子だって言われたっていいから、俺らのところに来ればいいじゃん。ここには君の時間があるから、ここでもう1回新しく踏み出してみたら?」っていう。そういう居場所であり続けたいというのは、ずっと歌い続けていることですね。

──好きな作品と向き合っている時間も居場所ですよね。再生ボタンを押して好きな曲を聴いている時間も居場所になりますから。

ASH ほんとそうですね。自分の大好きな作品を独り占めできる空間は居場所だと思います。学校の友だちと話が合わなくても、「いいんだよ。俺はこれが好きなんだ」って曲を聴いてる時間、「みんなはサッカーや野球をやってるけど俺はギターを弾くんだ」みたいな、そういう自分だけの時間──居場所みたいなものの権化が音楽だし、もっと言うならばロックってそうあるべきかなっていう。20人のクラスだとして、18人が「この曲知ってる~!」ってなってても、残りのふたりが「でも、私しか知らない音楽がある」ってなるのがロック、ヒップホップ、パンクとか、ストリートカルチャーの役目だと思うので。

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