【インタビュー】注目のふたり組音楽ユニット・秘めごと。音楽をやめるつもりだった日から現在までを語る。韓国のワンマンライブも即完!

【インタビュー】注目のふたり組音楽ユニット・秘めごと。音楽をやめるつもりだった日から現在までを語る。韓国のワンマンライブも即完!
ボーカリスト・詩音と、コンポーザー・木天蓼のふたりからなる音楽ユニット、秘めごと。2021年、音楽活動をやめようとしていた詩音と、自分のやりたい音楽を追求したい気持ちが膨らんでいた木天蓼が出会い、まるで子どもたちが秘密基地で遊ぶように、ふたりだけの「秘めごと」としてこっそりとプロジェクトをスタート。そこから楽曲の求心力によって、4月に行われた東京キネマ倶楽部でのワンマンライブはソールドアウト、さらに6月に韓国にて行われるワンマンライブも即完という記録を打ち出した。音楽だけでなく芸術全般を愛しながら探求する木天蓼と、木天蓼がようやく出会えた声の持ち主である詩音、ふたりが描き上げる世界観とは。

インタビュー=矢島由佳子


歌うことが好きだったはずなのに、だんだん楽しくなくなっていた(詩音)

──木天蓼さんが詩音さんに声をかけたところから秘めごとが始まったそうですが、当時はそれぞれどんな想いを抱えていたんですか?

木天蓼(Composer) 昔から、音楽だけというより芸術に関するすべてのもので自分を表現したい欲求がありました。当時は(作家として)ひたすら曲を作っていた中で、自分がどうしてもやりたい音楽を純度高いまま歌ってくれる人に出会えたらいいなと思いながら、女性ボーカリストを探していたんです。そうしたら詩音さんが歌っている動画をネットで見つけて、その歌声にビビっときて「会ってみましょう」ってなったんですけど、その時、詩音さんはまさしく音楽をやめようとしていて⋯⋯。

詩音(Vo) 以前は弾き語りで音楽活動をやっていたんですけど、自己主張もあまり得意なタイプではなくて、でも数字はつけなきゃいけなくて⋯⋯歌うことが好きだったはずなのに、「お客さんに知ってもらうためには、どうやったらうまくできるんだろう」「どうやったら数字が伸びるんだろう」っていうことばかりを考えるようになって、だんだん歌うことが楽しくなくなってしまって。それなら趣味というか、ただ楽しく歌うほうが自分には向いているんじゃないかと思って、その頃はちょうどコロナ禍でもあったので、カバー動画をSNSに上げたりしていました。とりあえずその時期は自分の好きな歌を歌って、楽しかった頃の気持ちを思い出そうという感じでやっていて、それをたまたま見つけてくださったのが木天蓼さんでした。

──木天蓼さんがボーカリストを探している際、詩音さん以外にも、色々なボーカリストの歌を聴かれたんですか?

木天蓼 はい、すっごくたくさん聴きました。

──その中で、詩音さんの声のどういうところにビビッときたんですか? 木天蓼さんは当時、どういった声を求めていたのでしょう。

木天蓼 今、いろいろなタイプの声が出尽くしていると思うんですよ。でも、詩音さんの歌声を聴いた時に、「このタイプは知らないぞ」ってなって。僕が作った曲を詩音さんが歌った時の声質や表現方法が、聴いたことがないものでした。細かくかかるビブラートのニュアンスであったり、真ん中の帯域がぐっと上がって心にズシンとくるような歌声が、唯一無二だなって思いましたね。だからこれは宝だと思って、「これが世に出ないのは間違っている」「限られた人だけが聴いている状況はもったいなさすぎる」とまで思って。劣等感を抱えて、何をやってもうまくいかなくて、音楽をやめようとしていた詩音さんの前に、この能天気な俺が「めちゃくちゃええやん」って現れたという(笑)。詩音さんの声を活かすためにもっと曲を書こうと思ったら、それが結局自分のやりたい音楽をやることにも繋がっていったので、これはすごく健康的だなと思って。

詩音 ちゃんと多くの人に聴いてもらおうよ、というふうに言ってもらって、でもライブはあまりやりたくなかったので、とりあえず「秘めごと」のようにふたりでこっそり曲を作って出してみよう、というところから始めました。当時は「自分を知ってくれた人は、何を好きになってくれているのだろう」「純粋に音楽で好きになってくれた人はどれくらいいるのだろう」と疑ってしまう自分がいて、自信もなくなっていたので、秘めごとを始めた時は純粋に歌、声、音楽を知ってもらいたいということから顔も隠す形にしました。

木天蓼 謎だらけのまま、ふたりで曲を作ってミュージックビデオも撮った“狼と羊”をYouTubeにポンってあげたら、最初は全然回らなくて。でも心のどこかで「いや、全然大丈夫」と思っていたんです。そうしたら実際、どんどん再生数が増えていって、めちゃくちゃバズったとかではないですけど、最初にクリエイターたちがざわざわしてくれて、そこからちょっとずつ音をディグっている人たちの層に刺さりだした感じでした。それで詩音さんが「ライブをやってもいいかな」って思うところまで行ったのはすごいなと、今でも思います。

詩音 歌うことは好きだけど、人前に立つことは好きではなかったし、顔を隠していたのでライブでどう表現すればいいかも不安で。でも徐々に曲をリリースして見つけてくれる人が増えた時に、「ライブを観たい」というコメントがあったり、ライブではまた違う表現の仕方ができるんじゃないかなって思えるようになっていたので、「今後絶対にやっていこう」というより「まずは1回やってみよう」というふうに初ライブをやりました。実際に1回やってみたところから徐々に、「ライブもやっていいかな」っていうふうになりましたね。

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対となるものに美学を感じていて、まさしく詩音さん自身がそれを体現している。それを音で表現するのが、秘めごとの軸なのかなと思います(木天蓼)

──人前に立つのが好きではなかったというのは、前の活動をされている中でそういう気持ちになっていったのか、それとも、もともとそうだったけれどアーティストを志したのか、どちらですか?

詩音 いまだに自分でもわかっていないんですけど⋯⋯知ってもらいたいっていう欲はあるけど、いざ人前に立つとあまり見てほしくないというか。もちろん見てほしいんですけど、あんまり見ないでほしい⋯⋯。

木天蓼 パワーワードだね(笑)。

詩音 家族にも「なんでそんな性格なのに(音楽を)やりたいの?」って言われます。アーティストの方を見るといいな、自分もできたらなって思うんですけど、自分の根本はそんなタイプではないよなっていうネガティブな部分と、「でもやってみたい」というポジティブな部分が葛藤しているというか。それまでの活動は無理をしていた部分もあったと思うんですけど、秘めごとになってからは、自分の劣等感やマイナスな部分も表現しているので、ありのままの自分でやれている感じがしています。秘めごととして活動しながら、自分を見つけている状態なのかなっていうふうに思いますね。

──ステージに立つアーティストの中には、「見てほしいけど、見ないでほしい」っていう気持ちが心の片隅にあるタイプの人もいると思うんですけど、それはあまり口にすべきことではない、みたいな空気がある気がするんです。そういう矛盾もありのまま表現しているのが、秘めごとなんだと思います。“劣等感”というアンセムもありますし、他の曲でも《嫌い》というワードがよく出てくるよな、というのも気になっていました。

木天蓼 表裏一体と言いますか、対となるものに美学を感じているところがあって。まさしく詩音さん自身がそれを体現している。それを音で表現するというところが、秘めごとの軸になっているのかなと思います。ひとつの言葉にはいろんな意味があって、たとえば「嫌い」という部分だけを抜き出すとただ「嫌い」になるんですけど、その「嫌い」をいかに有効活用するかを考えながらやっていて。ネガティブなイメージがある言葉の中にこそ美しさを感じていて、実はそこにいちばん前向きさがあると思うんです。それは詩音さんと出会って一緒に作業していくうちに肌で感じ取ったことでした。実は前向きな面をすごく持っている人だからこそ、それを表現するにはどの言葉をチョイスしたらいいかを考えています。ポジティブな言葉もネガティブな言葉も詩音さんが歌うことによって、陰でも陽でもない、それらが混ざり合った時のなんとも言えない感情とか、日本人が感じる侘び寂び的なところ、ノスタルジックやメランコリックな部分が出ると思っていて、それが大衆のみんなの日常に溶け込める音楽になっているのかなと思っています。

【インタビュー】注目のふたり組音楽ユニット・秘めごと。音楽をやめるつもりだった日から現在までを語る。韓国のワンマンライブも即完!

次のページ意識してない、ジメジメしている、湿気の多いものに風を当ててドライにしてくれるのが歌だと思う(木天蓼)
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