ヒトリエ @ LIQUIDROOM ebisu

ヒトリエ @ LIQUIDROOM ebisu - all pics by 平野タカシall pics by 平野タカシ
 「バンド始めて2年半、長かったし、短かったけど、ここにいるみんなが僕の、僕らの誇りです。本当にありがとうございます!」と熱気あふれるフロアを見回して一言一言語りかけるwowaka(Vo・G)の言葉に、ソールドアウト超満員の会場から惜しみない拍手喝采が沸き上がるーー2月19日にリリースされた最新アルバム『イマジナリー・モノフィクション』のリリース・ツアーとして開催された、『ヒトリエ 2014年東名阪ワンマンツアー「マネキン・イン・ザ・パーク」』のファイナル、東京・LIQUIDROOM ebisu。「かつてボカロ・シーンで名を馳せたwowaka(Vo・G)がバンドの肉体性を獲得した」という評価は、『イマジナリー・モノフィクション』にもこの日のライブにもそっくり当てはまるのだが、実際にこの場所で体験した4人の演奏は、そういった位置づけを遥か置き去りにして未知の高揚感の彼方へかっ飛んでいくような、至上のスリルに満ちていた。
ヒトリエ @ LIQUIDROOM ebisu
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 シノダ(G・Vo)のトリッキーな高速ギター・フレーズと競い合うように4人で灼熱ダンス・ビートを繰り出す“アイアイ・アンドミー”、躍動感そのもののメロディを歌い上げるwowakaの速射砲の如きヴォーカルがフロア一面ハイジャンプへ導いた“生きたがりの娘”、といった『イマジナリー・モノフィクション』の楽曲群と、ボカロ時代からのキラー・ナンバー“ワールズエンド・ダンスホール”を織り重ねながら、序盤からいきなり沸点超えの熱気を生み出してみせる。「wowakaの楽曲と世界観を具現化するための場」としてスタートしたヒトリエはしかし、wowaka自身はもちろんシノダ、イガラシ(B)、ゆーまお(Dr)それぞれの意志と覚醒によってその構造を根底から変え、紛れもないバンドとしての強靭さと爆発力を存分に放射しまくっていた。たとえ最初から「ロック・バンド」としてスタートした同世代バンドであったとしても、ヒトリエが今ここで鳴らしているアンサンブルの剛性と切れ味を超えられるバンドは極めて少数のはずだ。そう思わせるに十分すぎる爆発力が、この日のステージには確かにあった。
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 その後も“アンチテーゼ・ジャンクガール”“(W)HERE”“浮遊と沈没と”といった最新アルバム曲に、フロア丸ごとダンス天国へと叩き込んだ“るらるら”、サイケ・ブルース~ファンクと展開する“inaikara”などを交えながら、オーディエンスをぐいぐいとその音世界の奥深くへと導いていく。「客電がつくとビビりますね……大変なことをしちゃったんじゃないかなって(笑)」と照れくさそうに、しかし満足感を隠しきれない様子のシノダ。「大阪と名古屋でやってきたんですけど、波瀾万丈な旅でありまして……」と言いつつ、「初日:大阪にwowakaが打上げで飲み過ぎて起きなくなって、『僕、台車持ってきます!』と言ったイベンターのスタッフが車椅子を借りてきて運ばれた話」「名古屋公演を観に来たシノダの悪友のヤジがひっきりなしに飛んでやりづらかった話」などツアーの裏話で観客を沸かせていく。「だいたい1000人ぐらいはいるんですかね。この、1000人規模の人間を、皆殺しにするセットリストを、これからやります!」と雪崩れ込んだ後半は、シングル『センスレス・ワンダー』から“darasta”“センスレス・ワンダー”を連射! さらに『イマジナリー・モノフィクション』から“ever ever ever”の狂騒ビート、“踊るマネキン、唄う阿呆”の疾走ダンス・ロックを畳み掛け、場内をむせ返るような熱気で満たしていく。
ヒトリエ @ LIQUIDROOM ebisu
 「名古屋も大阪も経て、僕らもいろいろとーー個人的にも、自分の曲だったり、音楽に対して、思うことがあって」と、ここでwowakaが語る。「こう言ったら誤解を与えるかもしれないけど……歌詞とか、他人事っぽく作ってるなあって。自分ではドライな感じで作ってるのが、歌って、みんなの前でライブしてるうちに、他人事と思えなくなってきてーー他人事じゃないんだけど(笑)ーー歌うのが最近、すごく楽しくなってきました」。さらに続けて「歌詞とかもね、自分のことを書いてるつもりないんだけど、なんか歌ってるうちに、歌詞に同情してくるんだよな(笑)。だからもう、まるっきり自分のことだなあと思いながら歌ってます。これもね、みんなの前で歌う機会が作れて、そこにみんなが来てくれてるからです。本当にありがとうございます!」……そんな彼の飾らない言葉が、1音1音びりびりと身体と心を震わせる演奏と一丸となって、いつまでも胸に残った。
ヒトリエ @ LIQUIDROOM ebisu
 終盤は“カラノワレモノ”“サブリミナル・ワンステップ”を連射してフロアの温度をさらに高めたところで、超高速のギターとドラムが切り結ぶ“SisterJudy”、レーザー光線が目映く飛び交う中“モンタージュガール”が無上の加速感を描き出してーー本編終了。4人が舞台を去った後、アンコールを求めてメンバー1人1人の名前を呼びながら手拍子が巻き起こり、wowaka/シノダ/イガラシ/ゆーまおが再びオン・ステージ。「リキッドルーム、僕もすごく好きなライブハウスで。僕、上京組なんですけど、東京に来て、好きなアーティストを観に何度も来たことがある場所で、僕らを好きな人を集めてライブができたし。すごく感慨深いんですよ」。“泡色の街”を演奏した後、今この瞬間の喜びを改めて口にするwowaka。「……でも、こんなんで終わるバンドじゃないので。もっともっと、みんなに素敵な景色を見せていきますので。力が尽きるまで、僕らと一緒にいてください。よろしくお願いします!」。そんなエモーショナルな彼の言葉に、ひときわ熱い拍手と歓声が沸き上がっていた。この音楽はまだまだ進化する、もっともっと先の風景を見せてくれるーーという濃密な期待感が、“ハネルマワル”“ローリンガール”の多幸感とともに会場に満ちあふれた、最高のツアーファイナルだった。(高橋智樹)


[SET LIST]
01.アイマイ・アンドミー
02.生きたがりの娘
03.ワールズエンド・ダンスホール
04.アンチテーゼ・ジャンクガール
05.アレとコレと、女の子
06.るらるら
07.(W)HERE
08.inaikara
09.浮遊と沈没と
10.darasta
11.センスレス・ワンダー
12.ever ever ever
13.踊るマネキン、唄う阿呆
14.カラノワレモノ
15.サブリミナル・ワンステップ
16.SisterJudy
17.モンタージュガール

Encore
18.泡色の街
19.ハネルマワル
20.ローリンガール
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