LUNA SEA@国立代々木競技場・第一体育館

2014年5月29日。奇しくも新月の日に、LUNA SEAは記念すべきアニヴァーサリーを迎えた。現在のメンバーが集結し、初めてライヴを東京・町田プレイハウスで行ってから、この日でちょうど25年が経ったのだ。その節目を刻むべく、国立代々木競技場第一体育館にて開催された『LUNA SEA 25th ANNIVERSARY LIVE –The Unfinished MOON-』には、幸運にもチケットを手に入れた1万3000人が集結。会場の外にも音漏れや雰囲気を体感したい人たちが溢れ、まさに祝祭ムードに満ちていた。

しかし、開演予定の19時をまわっても、未だライヴがはじまる気配はない。どうやら、こういう日だから友人知人の来訪も多かったようで、後のMCでRYUICHI(Vo)は「リストにない人もたくさん来てくれて時間が押したんです」とぶっちゃけ(さらに、「決してこれはクレームではなくて、25周年を祝いに当然来たよっていう人たちがたくさんいるってことは、俺たちの25年間ってすごく幸せだったなって思います」と、しっかり付け加えていた)。たくさんの人の愛されてきたバンドらしい。そんな理由を、開演前の時点では知る術もないものの、じっと待ち続けるオーディエンス。いよいよ19時30分になろうとした頃、やっと客電が落とされた。
まず、1989年から、1年ずつスクリーンにてカウントアップが行われていく。当時のアーティスト写真が映し出されるたびに歓声や拍手があがり、さらには終幕やREBOOTを経て、辿り着いたのは今日の日付。すると……流れてきたSEは、ケイト・ブッシュの“Babooshka”!  彼らが初期のライヴでSEに使っていた楽曲である。この日、最もセンチメントな瞬間だったのではないだろうか。そしてメンバーが現れると、はじまったのはニューアルバム『A WILL』でもオープニングを飾っていた“Anthem Of Light”。紛れもなく彼らが「今」を鳴らしていることを、語らずとも思い知らされる選曲に、センチメントな気分が吹き飛んでいった。さらに、ボン!という特効をキッカケに走り出したSUGIZO(G・Violin)、INORAN(G)、J(B)に引っ張られるようにヒートアップしていった“TONIGHT”と続く。改めて、大きなステージを華麗に駆け巡らせたら右に出る者はいないバンドだと思う。一人一人に届けるように《キミだけの夜に》と歌わせる展開も、彼ららしい。

「1989年5月29日、我ら5人は町田プレイハウスでライヴを行い、一つになりました。それから25年の時が過ぎ、今日バースディを迎えました」とRYUICHIが最初のMCを行うと、温かい拍手が起こる。そう、思えば彼ら、25年間メンバーチェンジを行っていないのだ。「嵐を呼ぶバンド」と言われるほど、ライヴの日に天候が乱れたりと話題を掻っ攫うことはあったけれど、5人全員が事件も事故もなく生きていることは(しかもカッコいいままで)、何にも代えがたい奇跡である。メンバー自身もそれを噛み締めているのか、本当に笑顔が多かった。“DESIRE”ではINORANとJが向き合いながらプレイしていたが、メンバー同士の和やかなコミュニケーションも増え、どんどんバンドらしくなっていると思う。そういったところも関わってか、“TRUE BLUE”の青から“Rouge”で赤に染まった対比が美しかった照明や、LEDやセットがあったとはいえ、ショウというよりはライヴとして魅せるに十分なステージになっていた。RYUICHIのMCも炸裂していて「25年でアルバム8枚ってどれだけ怠けてるんだって話ですが(笑)。恐竜が進むみたいだけど、その一歩はデカいぞ!」、「俺たちは空を飛んでいるんだ。離陸した途端に宇宙」、「来年はアルバム3枚出します……冗談ですけど(笑)」と、舌好調だった。
そして“乱”“gravity”“Glowing”“Providence”と、『A WILL』の収録曲とライヴで育ててきた楽曲を織り交ぜながら進んでいく。このあたりで気付いたのは、アニヴァーサリー・ライヴでありながら、アルバムを捲るようなしみじみした感覚は皆無ということだ。彼らが如何に自分たちの今に誇りを持っているか思い知らされた。流石に“MOON”の時は、新月というタイミングと、長く演奏されてきたナンバーということで、グッときてしまったけれど。その後、真矢(Dr)が生声で「もっと来いよ!」と叫んだドラムソロ、Jが客席の隅々まで煽ったベースソロを経て、いよいよライヴは終盤へと向かう。

瞬時に熱狂に火を点けた“Déjàvu”、一転してじっくりと聴かせた“I for You”と畳み掛け、RYUICHIが「LUNA SEAは全員がメンバーだからよ!」と叫んではじまったのは、『A WILL』から“Metamorphosis”。これが、やっぱり今の彼らが最高なんだな、参った!と言いたくなるくらい痺れた。メタルなフレーヴァーとキラーリフは殺傷力抜群。ツアーでの進化が、最も楽しみな楽曲だ。さらに、INORANやJが思いっきり客席に近付いていた姿が印象的だった“The End Of The Dream”、SUGIZOのギターソロでRYUICHIが肩を組んで応戦した“STORM”、25年前と今を繋いだ“TIME IS DEAD”と駆け抜けていき、“ROSIER”で激しく美しいエンディングを迎えた。
オーディエンスの♪ハッピーバースディ、の歌声が響き渡る中、5人は再びオン・ステージ。「本当の意味での新しいスタート」、「みんなが驚くような世界を見せられると思う」とRYUICHIが未来を語り、“Thoughts”へ。そして、その後のRYUICHIによるメンバー紹介が可笑しかった。真矢は「秦野が生んだ宇宙一のきらめくドラマー」、Jは「低音の貴公子」、INORANは「宇宙で一番白いシャツが似合っている」、SUGIZOは「宇宙で一番黒い」(衣装もギターも黒かったから)……途中からパートと関係なくなっていますけど!(笑)。そんなRYUICHIをSUGIZOが「紫の袖が似合っています。神奈川が生んだ暴れん坊将軍」と紹介し返していた。和やかなムードの中、“IN MY DREAM (WITH SHIVER)”“BELIEVE”と間違いなく至福なナンバーが続き、「お前ら全員でかかってこい!」というRYUICHIの伝家の宝刀も銀テープも飛び出した“WISH”でライヴは締め括られた。
まだまだ帰れないオーディエンス。今度はウェーヴでメンバーを待つ。こういう場面で、LUNA SEAのファンにとって客席もステージであり、伝える場所であるということがよくわかる。暫くして戻ってきた5人は、RYUICHIの「たくさんのスタッフと、友人と、25年を支えてくれたみんなに贈ります」と“MOTHER”を披露。とてもとても澄んだ空気が流れ、フィナーレとなった。

メンバーも客席も手を繋ぐ恒例のジャンプの後、それぞれが手を振ったりしながらステージを去る中、LUNA SEAのライヴでは殆ど喋ることがないINORANが「25年なんて信じられないけど、これからもよろしくな」と口を開くという、トドメのサプライズまで。あくまで「これまで」に囚われず「これから」を体現したライヴだった。6月から来年3月までは、久々の全国ホールツアー『LUNA SEA 25th ANNIVERSARY LIVE TOUR THE LUNATIC -A Liberated Will-』もはじまるし、『黒服限定GIG 2014』なども予定されている。今日のセットリストは『A WILL』とみんなのアンセムが中心の綺麗な流れだったが、今後は彼らのことだから隠し玉も飛び出してくるだろう。現在進行形のロックバンドとして、もっともっとドキドキさせてくれることに期待が高まった夜だった。(高橋美穂)

■セットリスト

01.Anthem Of Light
02.TONIGHT
03.DESIRE
04.TRUE BLUE
05.Rouge
06.乱
07.gravity
08.Glowing
09.Providence
10.MOON
11.Déjàvu
12.I for You
13.Metamorphosis
14.The End Of The Dream
15.STORM
16.TIME IS DEAD
17.ROSIER

(encore1)
18.Thoughts
19.IN MY DREAM (WITH SHIVER)
20.BELIEVE
21.WISH

(encore2)
22.MOTHER