Dragon Ash@日本武道館

Dragon Ash@日本武道館 - all pics by 橋本 塁(SOUND SHOOTER)all pics by 橋本 塁(SOUND SHOOTER)
Dragon Ash初の日本武道館公演。そう聞いて、意外に思う人は少なくないだろう。音楽の聖地として知られる日本武道館は、成功を夢見る多くのアーティストが真っ先に目指す場所。これまで数多くの成功を収めてきたDragon Ashともなれば、過去に武道館に立つチャンスは幾度となくあったはずだからだ。しかし結成18年を迎えた今、彼らはこのステージに初めて立った。10枚目のオリジナル・アルバム『THE FACES』を引っ提げた全国ツアー『THE SHOW MUST GO ON』のファイナルとして――。その詳細は以下でレポートするが、ライヴを総括して言ってしまえば、彼らが今まで武道館を避けてきた理由、そしてこのタイミングで武道館に立った理由が、この上なく熱く壮大なサウンドと共に雄弁に語られた、圧巻のアクトだった。
Dragon Ash@日本武道館
スタンディング仕様となったアリーナエリアも、1階と2階のスタンド席もぎっちりと埋め尽くされた日本武道館。開演時刻を10分ほど回って開演ブザーが鳴り響くと、フロアのオーディエンスがワッと前方に詰め寄り早くも臨戦態勢が築かれる。そして、うねるベースラインを皮切りにスタートしたのは『THE FACES』の冒頭を飾るインストナンバー“Introduction”。開演前からステージを覆っていた幕にツアーロゴが映し出され、場内は拍手喝采に沸き返る。そのまま“The Show Must Go On”に突入すると、前方の幕が切って落とされメンバーの姿が露に! 『THE FACES』のアートワーク、赤と金のドレープ掛かったカーテン、大小のシャンデリアで装飾されたステージは、さながら「オペラ座の怪人」のようなクラシカルな雰囲気であるのだが……そこから放たれる音塊のヘヴィさに圧倒される。「いつも通りやろうぜ、みんな!」と絶叫するKj(Vo・G)に導かれて、オーディエンスもみるみるヒートアップ。さらにBOTS(DJ)の鋭いスクラッチが冴えわたる“Trigger”、盛大なシンガロングが沸き起こる“Run to the Sun”と最新アルバム曲を収録順通りに畳み掛け、性急でソリッドな『THE FACES』の音世界をダイナミックに押し広げていくのであった。
Dragon Ash@日本武道館
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一転してサンバのリズムで弾けた“For divers area”を経て、「武道館でやることが俺たちとお前たちにとって良いことかわからないけど、怪我せずに一年で一番楽しめて帰れたら、やった意味があるってことだ」と告げるKj。初の武道館公演に気負うわけでもなく、必要以上に普段通りを装うわけでもなく、率直な気持ちを伝えた言葉に温かな拍手が送られる。そこからは“Life goes on”“Neverland”“Today's the Day”“Walk with Dreams”のミドル・チューン4連発。大きな包容力と優しさに満ちたメロディが、場内一丸のシンガロングと共にでっかく響きわたっていく。不屈の闘志と揺るぎない信念を胸に、脈々と血の通ったメッセージを緩急さまざまな楽曲で解き放ってきたDragon Ash。その説得力がゆったりとした楽曲でこそ雄弁さを増すのは今に始まったことではないけれど、天井の高い武道館の特性も相まって、より壮大なスケールで鳴っているように感じる。そんな彼らの真価を改めて痛感できただけでも、この場所でライヴをやる意味があったと言えるのではなかろうか。曲の途中で「ありがとう!」と絶叫するKjだけでなく、阿吽の呼吸でアンサンブルを紡ぎ出すバンド、スポットライトを一身に浴びてダンスするATSUSHIとDRI-Vも、初めての会場でパフォームできる喜びを全身で表現しているように思えた。
Dragon Ash@日本武道館
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そして、イントロから大歓声とハンドクラップが沸き起こった“Here I Am”で己の存在証明を高らかに提示すると、HIROKIのギターソロが炸裂する“Blow Your Mind”で一気にスパーク。「ここに来てくれたお前らとコイツ(サポートベーシストのKenKenを指さして)がいなかったら今のDragon Ashはないから」というKjの口上からKenKenのベースソロを経て“The Live”へ突入すると、場内はオイ・コール吹き荒れる狂騒空間と化していく。勿論、天国のIKUZONEに向けた《いなくなったあなたのためにも》という絶叫にひときわ大きな歓声が上がったことは言うまでもない。続く“Still Goin' On”ではフィーチャー・アーティストであるYALLA FAMILYの50Caliber/Haku the Anubiz/WEZが登場し、絶頂への階段を駆け上がっていく7人。花や水を映し出した映像を背負っての“Golden Life”で恍惚の世界を生み出すと、“繋がりSUNSET”で心地よい横揺れを生み出して、濃淡のグラデーションを鮮やかに描き出してくれた。
Dragon Ash@日本武道館
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「武道館はいろいろ規制が厳しくて。SOLD OUTなのにライヴハウスみたいに人をギュウギュウに入れられないから、暴れづれぇなと思う奴もいると思うんだけど。こうやってサークルモッシュできるようにでけぇ柵作ったからさ。そこで誰も怪我しねぇでガシガシ汗かいて帰れたら、次はもっと人を入れて良くなるかもしれねぇじゃん。そうやってロックバンドのライヴとか夏フェスとか友達とかビールとか、大事なものは自分たちの手で守っていきましょう」というKjのMCに沸き返るオーディエンス。そして大切なものを慈しむように演奏されたのは、“百合の咲く場所で”。色とりどりのレーザー光線が飛び交う中、「武道館はお前らのもんだー!」という絶叫と共にアリーナでは巨大なサークルモッシュが築かれていく。さらに「ロック大好きで来てる奴らが好き勝手できねぇ場所なんか、こっちから願い下げだ」「ミクスチャー・ロックは好きですかー!?」というお馴染みの口上から“Fantasista”へ突入すると、激しいタテ揺れが武道館を襲来! アリーナではダイブをするキッズの姿も見られ、ライヴハウスさながらの熱狂が形作られていく。今ある場所が生きづらい環境であるならば、己の手で変えていけばいい。そんなタフでポジティヴな精神がオーディエンス一人一人に伝播して、会場全体で巨大な祝祭空間を生み出した胸の熱くなるシーンだった。

このままアッパーなクライマックスへ雪崩れ込んでいくのかと思いきや、終盤でも驚きの展開が。“静かな日々の階段を”をしっとり披露すると、なんと後方のカーテンが開いて登場したのは10人程から成るストリングス隊。クラシックの名曲“威風堂々”のフレーズがストリングスで奏でられ、そのままフィーチャリング・アーティストのSATOSHIとKO-JI ZERO TREEを交えての“ROCK BAND”へと雪崩れ込む。さらにストリングスを交えての“Lily”で狂おしいエモーションを爆発させたところで、本編終了。こういったサプライズで特別なステージに華を添えてくれる彼らのサービス精神には改めて恐れ入る。何より素晴らしいのは、彼らならではの鋼のような強さとしなやかさを持ったサウンドの勢いが、ストリングスの優美な旋律を交えてもまったく衰えてなかったことだ。燦然たる輝きと美しさに彩られた、圧巻の幕切れだった。
Dragon Ash@日本武道館
アンコールではBOTSが鳴らす電子ビートに乗せてATSUSHIがダイナミックに肉体を躍動させる“Dance with Apps”からスタート。メンバー全員が登場しての“天使ノロック”で再び熱く燃え上がると、桜井誠の清冽なドラミングが炸裂する“AMBITIOUS”で神々しいまでの高揚感を描き出す。そして再びストリングス隊が登場し、プレイされたのは“Happy Birthday”。前日5月30日はBOTSの誕生日ということで、バースデーケーキが持ち込まれての誕生セレモニーへと突入する。ここでマイクを執ったBOTS、自らを生んでくれた両親や、メンバー、スタッフ、ファンへの感謝の気持ちを丁寧に伝えると、「もう一人だけ感謝したい人がいます」と口にしたのはIKUZONEへの思い。「7人でライヴやっているけど気持ちは8人でやっているんで!」という言葉で締め括ると、場内から熱い拍手が沸き起こった。そしてKjが客席にマイクを向けての高らかなシンガロングが巻き起こった“Viva la revolution”を経て、大ラスを飾ったのは『THE FACES』のラストナンバー“Curtain Call”。終わりの始まりを示唆するようなヘヴィかつエモーショナルな轟音が、黄金の光と共に会場の隅々まで届けられたところで、2時間強にわたるステージは幕を閉じた。
Dragon Ash@日本武道館
最後は7人で手を繋いでお辞儀をして終幕。KenKenはこの日のライヴから発売されたIKUZONEのぬいぐるみを片手に掲げ、改めて8人でのステージであることを強調していた。これまで貫いてきた信念と、ここから進化し変わっていく想い。さらに大きな哀しみをも強く優しいサウンドで抱きしめて、この上ない多幸感とポジティヴィティを描き出した、最高のステージ。そこには徹頭徹尾にわたって大きな感動が宿っていたし、己と音楽に真摯に向き合うDragon Ashのひたむきな姿勢が、改めて浮き彫りになっていた。この後は8月2日のROCK IN JAPAN FESTIVAL 2014の他、夏フェスへの出演が目白押し。彼らの闘志みなぎる音楽が、全国各地の夏空の下で熱く響きわたる日が今から楽しみで仕方ない。(齋藤美穂)

■セットリスト
01.Introduction
02.The Show Must Go On
03.Trigger
04.Run to the Sun
05.For divers area
06.Life goes on
07.Neverland
08.Today's the Day
09.Walk with Dreams
10.Here I Am
11.Blow Your Mind
12.The Live
13.Still Goin' On
14.Golden Life
15.繋がりSUNSET
16.百合の咲く場所で
17.Fantasista
18.静かな日々の階段を
19.ROCK BAND
20.Lily

(encore)
21.Dance with Apps
22.天使ノロック
23.AMBITIOUS
24.Viva la revolution
25.Curtain Call
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