新木場STUDIO COASTの建物内に入ってすぐにあるのはRIGHTTZA TENT。Getting BetterのDJ陣や出演アーティストが絶え間なく音楽を流し続けるDJブースだ。そしてフロア内にあるのが、メインステージ=FRONTIER STAGEと下手側に設けられたサブステージ=FUTURE STAGEで、この2つのステージを交互に使いながら約8時間にわたって計12組のアーティストがライヴを行っていく。
UK.PROJECT社長・遠藤氏から「『このイベントのトリを飾るバンドが火付け役も果たしたら面白いんじゃないかな』って言ってみたら、『面白いですね』と返してくれるような人たちです」と紹介され、FUTURE STAGEに現れたのは、翌日のFRONTIER STAGEでトリを務めるTOTALFAT! 小さなステージから大きなステージを眺めては悔しい思いをしていた当時の楽曲“Show Me Your Courage” や最新曲“夏のトカゲ”などで、フロア丸ごと熱狂の渦中へ。「全バンド命をかけてお前らを楽しませます。楽しんで帰ってください」。Shunのアツい言葉と沸き上がる大歓声がイベントの幕開けを華々しく飾った。
FRONTIER STAGEに最初に現れたのは峯田和伸。そしてざわめきと歓声。それもそのはず、東京での銀杏BOYZ名義のライヴは実に5年ぶりだという。アルバム『光のなかに立っていてね』をリリースしたこと、メンバーが脱退してツアーができなかったことを語ると、「でもあいつらは『峯田、俺たちは構わず1人でも歩いて行け』って。俺がどんだけ幸せか分かりますか!」。そう叫び“人間”でライヴをスタートさせたのだった。峯田も「俺の後ろに聞こえませんか? あいつがギター弾いて、あいつがベース弾いて。銀杏BOYZってみんなとの空気だと思ってて、鳴ってねえんだけど聞こえる音ってあると思う」と言っていたが、聴き手一人ひとりとじっと向き合うような音楽はアコースティックギターと歌のみでも健在。微動だにしないオーディエンスたちはきっと、そのすべてをできるだけ逃さないように集中していたのだろう。新曲“なんでこんな好きなんだろう”を含む7曲が届けられた。
続いてFUTURE STAGEに登場した松本素生(GOING UNDER GROUND)も弾き語りスタイル。インディーズ期のアルバム『思春期のブルース』をUK.PROJECTからリリースした縁で「卒業生枠」での出演だ。開始早々ギターの弦が切れ、銀杏BOYZ・峯田からギターを借りることでトラブルを乗り切る場面も。アコースティックギターから分厚い和音を響かせながら、透明感と甘酸っぱさを兼ね備えた歌声で場内を魅了していった。
サウンドチェックを終えたBIGMAMAはそのままFRONTIER STAGE上に残って“Animanimus”でライヴをスタート。「ここにいる全員でジャンプして新木場揺らしまくろうぜ!」と“Swan Song”、さらに「今日にピッタリな歓びの歌」と紹介していた“No.9”など、「今年もUKFCのステージに立っている」という歓喜を自身の音楽のなかで目一杯表現していく。ハンドマイクでステージ上をヒラヒラと舞う金井政人(Vo・G)、何度もステージ前方へ踏み込みながら演奏を重ねる東出真緒(Violin)&柿沼広也(G・Vo)――と、大きく体を動かすメンバー。そして金井は最後にフロアへダイブ! 「楽しくてしょうがない」と言わんばかりの姿が印象に残った。
TOTALFAT・Shunから「インドネシアからはるばる来てくれました。TOTALFATに似たメロコアバンドで、ポップだから楽しめると思います!」と紹介され、FUTURE STAGEに登場したのはPee Wee Gaskins! 速いBPMによる昂揚感とドラマチックな展開を併せ持つサウンドで、きゃりーぱみゅぱみゅの楽曲のメロコア風カバー“CANDY CANDY”などを披露。「次ノ曲ハ佐村河内ガ書キマシタ!」など、片言な日本語でのジョークも微笑ましかった。
映画音楽のように壮大なSEをバックにFRONTIER STAGEに姿を見せたのはMO’SOME TONEBENDER。“FEEVEER”からスタートすると、武井靖典(B)が持つ「祭」と書かれた巨大うちわが視線を集める。 “Lost In the City”ではサイリウムがサイケデリックな世界観に拍車をかけ、“ロッキンルーラ”では百々和宏(Vo・G)がシャウトをはじめ、けたたましく楽器たちが鳴きまくり、手数は多いのに獣のような衝動で叩く猛烈なドラムソロも炸裂――こうして息つく間もなく極彩色の世界は展開し、ラストの“凡人のロックンロール”では武井の頭に電光掲示板付きヘルメットが、というカオスっぷり。クラクラするほどの狂騒が駆け抜けた。
UK.PROJECT初の試みとなるオーディション「Evolution!Generation!Situation!」の親善大使=the telephones・ノブこと岡本伸明(Syn・Cowbell・Shriek)がFUTURE STAGEに登場。「大・大注目のバンド!」との言葉を受けて登場したのは特別賞を受賞したpirukuru。骨太な3ピースサウンドのてっぺんには、日本語詞だけど発音は英語に近いヴォーカル。そのバランスが絶妙。王道のギターロックを全力で鳴らす姿は、多くの人の心に響いただろう。
カラフルなアフロのカツラを被って現れ、2秒でそれを投げ捨てる――こんな登場シーンはもちろんthe telephonesによるもの。「UKFC、天井に届くくらいジャンプしようぜ!」と“Hyper Jump”からスタート。まるごとシェイクされているかのようにグチャグチャに入り乱れながら大盛り上がりのFRONTIER STAGE。“I Hate DISCOOOOOOO!!!”の力強い大合唱でも“A A U U O O O”のアルファベットをもじったジェスチャーでも、フロア一面に咲く笑顔を見ていると「イベントは後半に差し掛かっているのにそんな元気どこに残ってたの?」と思えてしまう。ノブによるダンスレクチャーもあった“Don’t Stop The Move, Keep On Dancing!!!”で大団円を迎えた。
FUTURE STAGEには再びオーディション親善大使・ノブが登場し、「ヘルシンキ・ラマダン!」→「クラブー!」という摩訶不思議なコール&レスポンスを繰り広げる――この呪文のような言葉、実はバンド名なんです。ということで続いては、最優秀アーティストの称号を手に入れたHelsinki Ramadan Clubの登場。掴みどころがなくやたらと耳に残るメロディラインと、ブレイクを巧みに用いたリズムワークが光る。“バンドワゴネスク”では念願のコール&レスポンスもしっかりと果たした。
さて、FRONTIER STAGEにはPOLYSICSが参上! SEで既に踊っている人々に対して「まだライヴ始まってないのに!」なんて言葉は無用だろう。登場するなりおなじみの「トイス!」で沸かせると、 “ACTION!!!”では「オイ!」コール、“Let’s ダバダバ”ではサビで大合唱、“Digital Coffee”では手を大きく左右に……と大盛り上がりのフロア。そして「金井くんも言ってたけど、出演者が一番楽しんでるね!」とハヤシ(G・Vo・Syn・Programming)。このお互いのエネルギーの莫大さ、加速に加速を重ねても破綻しないバンドの地力、どの曲のイントロでも歓声が起こるというキラーチューンだらけの状態……。POLYSICSというバンドのすごさを改めて実感した。
FUTURE STAGEのトリを飾るのはasobius。昨年はデビューから約3カ月後にUKFCに出演した彼らだが、今年の気合いほとばしる演奏や、「このまま終われるのUKFC! もっと盛り上がっていこうぜ!」「休憩させる気なんてありません!」など甲斐一斗(Vo)の強気な発言が頼もしく思えた。9月20日に会場&通販限定シングルのリリース(詳しくはこちら→http://ro69.jp/news/detail/108254)という嬉しい知らせを挟みつつ、ドラマチックに展開していく音の世界。甲斐の指揮棒に合わせてたくさんの腕が上がるその景色は、とても幻想的で美しかった。
そしてFRONTIER STAGEのトリとしてこの日を締めくくるのは[Alexandros]! 川上洋平(Vo・G)が「ずっと(出番を)待ってたからね! 暴れ足りない!」と言っていたが、その想いを発散するかのように切れ味が鋭く挑発的にすら感じる演奏を重ねていく4人。更に、“Kick&Spin”で川上がもみくちゃになりながらフロアやFUTURE STAGEへ下りて歌ったり、「DISCO!」「トイス!」と先輩の決め台詞をオーディエンスとともに叫んだり、といったアクションでも会場を沸かせる。しかし暴れ馬のようなアッパーチューンだけではなく、“Starrrrrrr”や“Adventure”など懐の深い楽曲を豊潤に響かせる姿に、バンドの成長と彼らのロマンの大きさをヒシヒシと感じたのだった。アンコールでは、「UKFCのいいところはなあなあにならないところだと思います。他のバンドに対して、悔しい・ぶっ倒したいって気持ちが沸く」と川上。メタリカの“Master of Puppets”を大胆に取り入れたアレンジでの“Cat 2”、さらに“city”を演奏し、ラストまで駆け抜けた。そして「UK.PROJECTに大きな拍手を!」という言葉に導かれて温かな拍手が会場いっぱいに満ちる。このイベントがたくさんの人々に愛されているということを実感する場面はこの8時間のなかに何度もあったが、それでもやはり感動的なラストシーンだった。(蜂須賀ちなみ)