N.E.R.D. @ ZEPP TOKYO

6月に4年ぶりのニュー・アルバム『シーイング・サウンズ』を発売したN.E.R.D.。この8月に野外イベント「MTV VIBRATIONS 08 〜Beach Party Special〜」に出演しているが、ファン待望となる同作を引っ提げての単独来日公演がとうとう実現した。

2003年の初来日以来、コンスタントに単独公演やフェスのステージを観てきたけど、とにかく彼らのライブの魅力は、他では味わうことのできない独自のグルーヴでエキサイトさせてくれるところだろう。これまで本当に沢山のアーティストたちがロックとR&Bやヒップホップを様々な形で融合させてきたけど、ロックの躍動感とブラック・コンテンポラリーのメロウネスや官能性・しなやかさを、軽やかにポップに昇華させることにかけて、他の追随を許さない。

またそのさじ加減が絶妙で、根底にあるドープなロックへの愛情をほとばしらせながらも、それが重厚なほうへと振り切れてしまわないように、ほどよいチープさやいい意味でのミーハー感も残している。その“ミーハー感”というのが肝で、N.E.R.D.のサウンドのもつある種のてらいのなさは、カッコイイ音楽と出会った時の衝撃や昂りを、思い起こさせてくれる。

またそこに、ロックへの強い愛情がある彼らゆえの、内省的でスター不在になりがちな“いまどきのロック”へのシニカルな視点やアイロニーの気持ちが反映されていることもロック・ファンなら読み取れるのではないだろうか(だから、ファレルは嬉々として「スターってこういうもんだろ」という言動をみせて私たちを楽しませてくれる)。

N.E.R.D.の母体となるネプチューンズは00年代を代表するプロデューサー集団。采配ひとつで、N.E.R.D.プロジェクトのサウンドをコアなものにもドープなものにも転がしていけると思うけれど、そうじゃなくて、こういう局面で絶妙なバランス感覚を発揮していけるところが彼らの才能のひとつだと思うし、幅広く愛されているゆえんだろう。

ツイン・ドラム、ベース、ギター、シンセという5人編成のバック・バンドとともに、ほぼ満員の場内の歓声に迎えられファレルが登場。あらためて言うことではないかもしれないが……、歌やラップが図抜けているタイプではないので(個人的にあのファルセット・ボイスは大好物ですが)スキルで魅せるのではなく、エモーションで場内を掌握していくパフォーマンス。背後から繰り出される生のバンド・ビートを誰よりも満喫して、シェイとともにステージ上を跳ねまわっている。

ダテに来日回数が多くないだけに、観客とのコミュニケーション・スキルが高い。必要とあれば、ステージ袖のスタッフにヘルプを出し、通訳さんを介して「次の曲で東京のみんなの最高のジャンプが見たいんだ。楽しんで」と、メッセージを託す。英語圏のお客さんとは一味違う、“言葉”のレスポンスじゃない、日本のオーディエンスならではの“ノリ”とレスポンスしあう、たくましいエンターテイナーぶりをみせつけてくれた。ラスト“エヴリワン・ノーズ”では、20名近くの女の子の観客をステージに上げての乱舞。ステージ上でも女の子たちからのファレルのモテっぷりは可笑しいほどで、ファレルのもつ特異なアイドル性とオーラも、あらためてみせつけられた恰好となった。(森田美喜子)

1.ANTI MATTER
2.BRAIN
3.KILL JOY
4.MAYBE
5.DON’T WORRY ABOUT IT
6.RUN TO THE SUN
7.BOBBY JAMES
8.PROVIDER
9.SOONER OR LATER
10.YOU KNOW WHAT
11.ROCKSTAR
12.SPAZ
13.LAPDANCE
14.EVERYONE NOSE
15.SHE WANTS TO MOVE
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