all pics by 新保勇樹恒例の登場SEであるThe Crestsの“Sixteen Candles”が流れ、天井にシャンデリア輝くステージにクハラカズユキ(Dr)、フジイケンジ(G)、ヒライハルキ(B)、チバユウスケ(G/Vo)の4人が登場。ムーディーな空気に包まれたのも束の間、1曲目の“LOVE GOD HAND”に突入するなり鋭利でタイトなビートが走り出す――5月28日にリリースされた7thアルバム『COME TOGETHER』の全国ツアーファイナル。全31公演に及んだライヴ行脚の最終日にThe Birthdayが見せてくれたのは、格段に強度と深度を増したバンドサウンドの凄みと、長いキャリアを重ねてもなお尽きることのないロックンロールへの夢とロマンだった。
「愛の手を!」コールが響きわたる“LOVE GOD HAND”で、初っ端からライヴハウスさながらの狂騒感に包まれた渋谷公会堂。続く“Buddy”では、大波のようにうねるクハラとヒライのビートに乗って、フジイの流麗なギターフレーズが、そしてチバの焼けつくようなシャウティングヴォーカルが、とてつもない熱量を発しながら場内を駆け巡っていく。その音の鳴り一発で目の前の風景を一変させてしまうような、純度100%のロックンロール。それぞれに殺傷力抜群のリフとビートと歌声が妖しく絡み合うThe Birthdayのグルーヴは、やはり格別なものがある。去る10月3日のNHK大阪ホール公演に引き続き、バンドにとって初の渋谷公会堂ワンマンとなったこの日。そんなアウェイ感を微塵も感じさせないほど、堂々と突き進むサウンドの凄みに圧倒させられっぱなしのオープニングであった。
アルバムツアーということで、序盤は『COME TOGETHER』収録曲を連打。ブギーな高揚感に彩られた“アイノメイロアイノネイロ”、チバのロマンチックな歌詞世界が花開いた“星の首飾り”、そして、ザラついた音の隙間から眩いエモーションが溢れ出す“SAKURA”の圧倒的な祝祭感。メンバーもさまざまなインタビューで語っていた通り、バンド史上最高にメロディアスと言っていいアルバムの楽曲群が、目も眩むような輝きでもって届けられていく。その一方で冒頭からクハラの破壊力あるドラミングが炸裂した“KIMAGURE KING”では、獰猛なグルーヴで攻め立ててオーディエンスの「オイ!」というけたたましい掛け声を誘引。「今日家を出るとき真っ黄色のパーカーを着たオジサンが前から歩いてきて。誰かと思ったらケーシー高峰でした」という、その後のクハラのマイペースなMCも含めて、柔剛自在な展開でオーディエンスの衝動を引きずり出していくThe Birthdayの鉄壁のパフォーマンスはこの日も絶好調のようだ。
フジイのギターとチバのブルースハープが美しいハーモニーを奏でた“STAR MAN”を終えると、客席のあちこちから「フジケン!」コールが沸き起こる。フジイが加入して早3年半、ハード・エッジな緊張感から伸び伸びとした解放感にシフトして、肩の力の抜けたサウンド・スタイルを突き詰めてきたThe Birthday。それでもなお熱いロック魂が沸々と燃えたぎっているようなサウンドは、ここに来てグッと豊潤さと説得力を増しているような気がする。ゆったりとしたリズムで奏でられた“KNIFE”も、淡々としたオルタナ・サウンドが紡がれた“LEMON”も、ヒリヒリとしたエモーションを湛えて胸に迫ってきたのは、そのためだろう。攻撃的なサウンドで圧倒せずとも聴き手の心に深い爪跡を残すことができる現在のThe Birthdayのロックンロールは、ある種の高みに達したと言えるのではないか。
オーディエンスの腰をスウィングさせた“Red Eye”、「ちょっと久しぶりな曲を」と披露された“プレスファクトリー”でギアを上げると、“PIERROT”で再び爆発! フジイ加入前の楽曲“JOIN”も飛び出し客席をガッツリと揺さぶっていく。さらに“情熱のブルーズ”“なぜか今日は”の連打でまっしぐらにドライブしつつ、フジイの重たいギターストロークで幕を開けた“星に願いを”では、無数の光が煌めくステージセットをバッグにチバの熱っぽいヴォーカルが届けられる。そして“COME TOGETHER”のパワフルなビートに客席中の拳が突き上がったところで、本編ラストを飾ったのは“くそったれの世界”。《とんでもない歌が 鳴り響く予感がする》という歌詞そのままの、とんでもない歌と音が鳴り響き続けた90分のステージは、ハンドマイクを客席に向けてオーディエンスのシンガロングを煽るチバの躍動と、クハラのエネルギッシュなドラミングを軸としたソリッドな轟音によって盛大なクライマックスを迎えた。
アンコールでは、イントロが鳴るなり大歓声に沸いた“ALRIGHT”をドロップ。続く“涙がこぼれそう”で歌い出しからオーディエンスの大合唱を導くと、胸のすくようなサウンドを豪快に走らせて会場を眩い光で包み込んでいく。その後メンバーが去って客電がついても鳴りやまない拍手に応えてダブル・アンコールに登場すると、“さよなら最終兵器”を大ラスに披露。《お前に会えて良かったよ 心底》という直球のフレーズが、ロックンロールの中心を射抜いたような直球のバンドサウンドと重なり合って、溢れんばかりのエモーションを生み出したところで、この日のステージは幕を閉じた。メンバーが去った後のエンディング、ステージに無数の光が煌めく中で場内に響いたのは、ディズニーの“星に願いを”のピアノの旋律。目も眩むような夢とロマンに溢れ、いつでも何度でもロックンロールに出会ったときの興奮を呼び覚ましてくれるThe Birthdayの音楽を象徴するような、ドラマチックで感動的なエンディングだった。(齋藤美穂)
■セットリスト
01.LOVE GOD HAND
02.Buddy
03.アイノメイロアイノネイロ
04.星の首飾り
05.SAKURA
06.KIMAGURE KING
07.STAR MAN
08.KNIFE
09.LEMON
10.Red Eye
11.プレスファクトリー
12.PIERROT
13.JOIN
14.情熱のブルーズ
15.なぜか今日は
16.星に願いを
17.COME TOGETHER
18.くそったれの世界
(encore)
19.ALRIGHT
20.涙がこぼれそう
(encore 2)
21.さよなら最終兵器