28日の恵比寿リキッドルームのソールドアウトを受けての追加が、この日の渋谷クラブ・クアトロ公演だった。でもって追加の本公演もソールドアウトで、さらに聞けば29日の梅田クアトロもソールドアウトしているという。つまり全公演完売。とにかく、破格の勢いでブレイク街道を驀進中のザ・ロイヤル・コンセプトである。昨年のサマソニ、今年のJAPAN JAMと単独公演に続く3度目の来日にして、彼らのベースがここ日本にがっつり築かれたのを実感する初単独ツアーなのだ。デビュー・アルバム1枚きりの新人海外バンドのオープニング・アクトがチャットモンチーというのもなかなか凄いことだと思うが、新体制ではまだ4公演目だという彼女たちの新曲披露も含むパフォーマンスを、ぎっちぎちに埋まったクアトロで観ることが出来たのはスペシャルな体験だった。
そんなチャットモンチーの終演から30分後、さらにぎっちぎちに埋め尽くされた会場の大歓声に迎えられ、ロイヤル・コンセプトが “美しく青きドナウ”のBGMに乗って登場する。オープニングは“Goldrushed”、そして華やかなコーラスとハイハットの乱れ打ちでオープニングから早くもクライマックス級の盛り上がりを記録してしまうのがロイヤル・コンセプトというバンドなのである。全編クライマックス、全編サビ、みたいなハイ・カロリー極まりない彼らのポップ・ソングだが、ライヴでは一気に存在感を増すドラムスのねばっこく強烈なアタックによって、そのハイ・カロリー極まりないポップ・ソングに相応しい身体と筋肉が与えられる──そんな納得感と万能感が彼らのライヴにはある。「また日本に来ることができて、ほんとに、ほんとに、ほんとにハッピーだよ!」とデヴィッド(Vo&G)。ちなみにデヴィッド、来日時の入国審査でアーティスト・ヴィザを提出したら係員に「ワン・ダイレクションの人?」と訊かれたそうだ。その話を聞いて爆笑の場内だったが、このエピソードがジョークとして成立するのは彼が実際1Dレヴェルにキュートなルックスの持ち主だからだろう。
“D-D-Dance”では軽やかなモータウン・ビートで会場をダンス・フロアに変え、一気に加速する“Busy Busy”では縦ノリのポゴ・ダンスをそこにさらに加えていく。かと思えばヴォコーダー大フィーチャーでダフト・パンクみたいなことになるディスコテック・ナンバー“World On Fire”では会場から「World On Fire!」の大コーラスがおこる。全編サビ、全編クライマックスと先ほど書いたけれども、ロイヤル・コンセプトのそれはひとつの必殺技で押し通す単調なものではない。曲毎に様々なアプローチを試しているのだけれども、最終目的地としての「ポップ」だけは絶対に揺るがない、そういうものなのだ。だからこそ、全編サビ、全編クライマックスである以上に全編楽しい!こんなに幸福感がずっと続くライヴというのもなかなかない。
ほぼ全曲踊りっぱなし&コーラスもばっちりと凄まじい盛り上がりだったこの日の会場だが、曲間は「アイ・ラヴ・ユー!」等のかけ声がたまに飛ぶくらいで、基本は大人しく次の曲を待っている、という日本のファンならではの光景に、「サマソニで初めて日本でプレイした時、曲間が凄い静かでシーンとなるのに驚いたんだ。他の国ではお客さんはずっとワイワイ喋ってるからさ。日本のみんなは曲をちゃんと聴いてくれてるんだよね、こんな国は日本だけだよ。でも、未だにシーンってなるとちょっと緊張する(笑)」とデヴィッド。続く“Shut The World”はシンセ大フィーチャーのシンフォニック・ナンバーで、次の4つ打ち強調でエレクトロ・ダンス・アンセムと化していた“Damn”と合わせ、後半に向かってドラムスからキーボードへとバンド・アンサンブルの中軸が移っていくのを感じる流れだ。彼らのデビュー・アルバム『ゴールドラッシュ』は1曲毎にきっちりまとまり、「出来上がっている」ポップ・ソング集という趣だったが、それらの曲がライヴでは意外なほど柔軟にかたちを変え、改めて「育っていく」のを感じる。
昨日10月26日が誕生日だったジョナサン(Key)を祝い、この日唯一のチル・ナンバーだった“In The End”を終えるとショウはいよいよ最終コーナーへ、ポスト・パンキッシュな小刻みリフとベタな歌メロの絶妙のコンビネーションの“Radio”で完全に温まりきったところに最強アンセム“Gimme Twice”投下!デヴィッドは「日本のみんなはいつも最高の笑顔をくれる。僕らは寒い国から来たからね、笑顔が必要なんだよ」と言っていたけれど、ぐるりと見渡した会場にはほんとうに笑顔しかなかった。ラストの“On Our Way”は東京のファンへのメッセージも交えたヴォコーダー・プレイで熱狂はさらにヒート・アップ、デヴィッドは客席に身を乗り出して歓声に応えていた。
アンコール1曲目は初お披露目の新曲“Smile”。未だかつてないファンクネス搭載のナンバーで、マグナス(B)たちのコーラスといいR&Bなロイヤル・コンセプトの新境地のヒントになりそうだ。そしてラストは “Girls, Girls, Girls”から“Cabin Down Below”という最高のエンディング!1時間強とコンパクトなセットだったけれども、終演後の会場には「幸せ!」と上書きされた笑顔が満ち溢れていた。(粉川しの)
セットリスト
1. Goldrushed
2. D-D-Dance
3. Busy Busy
4. World On Fire
5. Shut The World
6. Damn
7. In The End
8. Radio
9. Gimme Twice
10. On Our Way
En1. Smile
En2. Girls, Girls, Girls
En3. Cabin Down Below
ザ・ロイヤル・コンセプト @ 渋谷CLUB QUATTRO
2014.10.27