真心ブラザーズ×藤井フミヤ@渋谷公会堂

昨年、東京スカパラダイスオーケストラ、フジファブリック、MONGOL800、レキシらを迎えて行なわれた真心ブラザーズの企画対バンイベント「マゴーソニック」が今年は一夜限りのイベントとして渋谷公会堂で開催された。対バン相手は現在デビュー30周年アニバーサリーで全国ツアー中の藤井フミヤ。今年デビュー25周年を迎えた真心ですら後輩になり、「フミヤパイセン!」とリスペクトを寄せる超ベテラン同士の初対バンは、音楽シーンで独自のスタイルを貫く2組の持ち味を心から堪能できるライブだった。

まずは真心ブラザーズ・YO-KINGと桜井秀俊のふたりがオープニングのあいさつ。サブタイトルの「オラ、真実の愛が知りてぇ!」はもちろん藤井フミヤの代表曲“TRUE LOVE”にかけたもの。そして、「真実の愛を知ってる人は多いけど、知りたいと言って教えてくれる人は数少ない」とYO-KINGが語り、「お呼びしましょう、藤井フミヤ先輩です!」のコールで稀代のボーカリストのステージが幕を開けた。

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<藤井フミヤ>
「イェイ!今日は盛り上がっていきましょう」とリラックスした口調で登場した藤井フミヤのステージは、赤やピンクにギラつく照明のもと大人っぽいムードが漂うロックナンバー“女神(エロス)”からスタート。友森昭一(G)、石成正人(G)、有賀啓雄(B)、屋敷豪太(Dr)、松本圭司(Key)という盤石のグルーヴが艶のあるフミヤの歌声を支える。そして何と言っても歌いながら魅せるフミヤのダンスはさすがの一言。スルスルと靴が床を滑り、くるっと360°回転。マイクスタンドを華麗に押し倒し、膝を着けて熱唱、極めつけはジャンプからの開脚ポーズ。それでも息ひとつ乱さない洗練された身のこなしに目を奪われた。

「うちのファンは聴き慣れたラブソングですが、真心ファンは聴く機会もないと思います。よかったらしっかりと受け止めて帰ってください」と言って、“TRUE LOVE”へ。一転して中央のスタンドマイクから動かず、アコースティックギターを弾きながら歌うフミヤ。出だしの低音ボイスはゾクリとする程の色気だった。ピアノの音色から始まった“Another Orion”は途中バンドサウンドが加わりドラマチックに展開。フミヤの歌の凄みにお客さんもじっと聴き入っていた。

歌い終えたフミヤ「ラブソングを続けて2曲歌いました。よかったら男性はカラオケで歌ってください。1音下げをおススメします(笑)」と悪戯っぽい表情を見せる。「次は明るいロックをやりたいと思います」と、ここからラストに向けて一気に駆け抜けていく。“Stay with me.”の軽快なドラムとキラキラとしたロックンロールにのせて、マイクスタンドを持ち上げてクルクルと回すフミヤは、大人?セクシー?先ほどまで脳裏に湧いたそんな言葉が吹き飛ぶ、ヤンチャなロックヴォーカリストになっていた。カラフルな照明を受けて“恋の気圧”ではサポートギタリストたちと一緒にジャンプ、ラストの“UPSIDE DOWN”はゴリゴリの激しいロックチューンにのって足を高く蹴り上げるフミヤ。「次は真心ブラザーズ!」と後輩へバトンを渡すと、両手を広げて歓声に応えていた。

真心ブラザーズ×藤井フミヤ@渋谷公会堂
<真心ブラザーズ>
転換中には松田聖子の“青い珊瑚礁”が流れるというニクい演出もあり、数分後いよいよ真心ブラザーズが登場した。ステージには上野一郎(B)、須貝直人(Dr)、うつみようこ(Cho)、ヤマグチユキノリ(Key)らに加えて、マウンテンホーンズも揃った10人編成MB'sがズラリ。夕陽のようなオレンジのライティングを背に“空にまいあがれ”からライブはスタートした。長身のYO-KINGがマイクを手にゆっくりと歩きながら歌い、その横で桜井秀俊は前屈みにギターをかき鳴らしている。ホーン隊から勢いよく幕を開けた“BABY BABY BABY”では、お客さんも手拍子にコーラスに全力で歌に参加する。まだ開始2曲なのにまるでフィナーレのように開放的で眩しい光景が一気に広がった。

メンバー紹介のあと、自身のレーベル「Do Thing Recordings」から11月19日にリリースしたばかりのニューアルバム『Do Sing』の収録曲から“splash”を披露。アルバム音源とは異なるMB's仕様のゴージャスなアレンジがブルーの爽やかな照明と綺麗に溶け合っていた。そしてMCではフミヤのステージを見ていた喜びを、「惚れてまうやろー!」という絶叫で表したYO-KING。桜井は「ブルースリーの映画を見た帰りみたい。マイク倒して開脚とか自分もできるんじゃないかと思っちゃう。でも全然できないけど」と興奮冷めやらぬ様子で語った。

真心ブラザーズ×藤井フミヤ@渋谷公会堂
途中で桜井がボーカルをとったご機嫌なロックンロール“あいだにダイア”(これもニューアルバムの楽曲)では歌い終えて「勝手に歌ったでしょ? ビックリした」とYO-KING。その後も「フミヤ先輩は間奏の時も踊ってたのに、(YO-KINGは)時々DVDで見たらギターソロの後ろで休んでる!覇気がない」(桜井)、「(お客さんは)それを見に来てる(笑)」(YO-KING)なんて流れもあり、「次の曲はがんばってくださいよ」(桜井)、「めっちゃがんばるでー!」と、ゴリゴリのベースから始まったアッパーチューン“I’M SO GREAT!”では、YO-KINGはクラウチングスタートで右へ左へダッシュ。“どか~ん”では会場が振りつけで盛り上がるなか、ちょっと戸惑い気味の新加入キーボードのヤマグチに、「これが真心のライブやで! リハーサルとテンション違うんだ!」とYO-KING。これには桜井が「ロック史に残るアウトロでの説教」と笑いながらツッコミを入れていた。“EVERYBODY SINGIN' LOVE SONG”でブルースハープをかっこよく決めたYO-KINGは、先ほどのMCを受けて桜井のギターソロの後ろで暴れまわり、ラストは“拝啓、ジョン・レノン”。コーラスようこの存在感のある声とバンドアンサンブルが広がるなか、YO-KINGのシャウトが強く響く盛大なフィナーレだった。

真心ブラザーズ×藤井フミヤ@渋谷公会堂
真心ブラザーズ×藤井フミヤ@渋谷公会堂
アンコールの冒頭、「近年稀に見る運動量でした」と振り返ったYO-KING。ここからはマゴーソニックお楽しみのセッションタイムだ。再び真心が藤井フミヤを呼び込むと、マゴソニTシャツを着たフミヤが「急がなきゃ!喋りすぎだよ」と走って登場。とある男子校の先輩後輩ようなのおかしなやりとりの後、フミヤを中央に、真心が脇を固めるフォーメーションでチェッカーズ時代の楽曲“NANA”へ。3人が交互にボーカルをとるなかで、桜井がフミヤ風にクルッと……とはいかず、ぎこちなくターン。その横でフミヤが鮮やかにくるり回ると「この距離でまわるところを見ちゃった!」とYO-KINGがはしゃいだ。続く真心の曲は、“ENDLESS SUMMER NUDE”をセレクト。誰の歌でも自分色に染めるフミヤの声と押して押す真っ直ぐなYO-KINGと声との対比がおもしろい。歌い終えて「真心の歌はあったかくていいね」と言ったフミヤも楽しそうだった。そしてラストは2組の共通のルーツであろうビートルズのカバー“Twist and Shout”。とても素晴らしいステージだった。藤井フミヤと真心ブラザーズ。どこか異色の対バンにも思えた2組だが、どちらも四半世紀にわたり、先人達が残したルーツを大事に自身のポップミュージックを模索し続ける同士でもある。そんなことを最後にじんわりと思い起こさせる最高のフィナーレだった。(秦理絵)

■セットリスト
<藤井フミヤ>
01.女神(エロス)
02.嵐の海
03.TRUE LOVE
04.Another Orion
05.Stay with me.
06.恋の気圧
07.UPSIDE DOWN

<真心ブラザーズ>
01.空にまいあがれ
02.BABY BABY BABY
03.splash
04.あいだにダイア
05.I’M SO GREAT!
06.どか~ん
07.EVERYBODY SINGIN' LOVE SONG
08.拝啓、ジョン・レノン

(encore)
01.NANA
02.ENDLESS SUMMER NUDE
03.Twist and Shout
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