HAPPY@代官山UNIT

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気負いなく、自らが楽しみ、他人を楽しませる。初のワンマンツアーのファイナルという記念すべきライヴであったわけだが、5人はどこまでも堂々と、自然体で、HAPPYをやり遂げた。つまり、いついかなるときも自分達が自分達でいるということの重要性を、最高の楽曲とともにその身をもって示したのだ。ロック・バンドかくあるべし、というライヴだった。

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大きな注目を集める現在の状況を映したような、老若男女がほぼ均等な割合で入り混じったフロアが暗転したのは、定刻を20分ほどまわった頃。ディズニーランドのエレクトリカル・パレードでもお馴染みの“Baroque Hoedown”が鳴り終わったタイミングで、ステージを覆っていた暗幕が切って落とされ、HAPPYが登場する。ステージ上はスモークの中に銀のバルーンが無数に浮かんでおり、何とも幻想的な在り様である。そして、“Magic”~“Run Run Run”と彼らの最初のアルバム『HELLO』のオープニングを再現する形で演奏が進められる。中期ビートルズと『TOMMY』以前のザ・フーとの間のどこかで鳴るようなサイケ・ポップの連打により、フロアも一気にHAPPYの世界に。続いては、再度暗転し緑のレーザーが放たれる中での“Pity Xmas”。音源では初期デペッシュ・モードを彷彿とさせるエレ・ポップだったはずが、曲後半をパワフルにぶち上げるアレンジによってロック色を強め、さらなるライヴの起爆剤として機能していた。色とりどりの音楽性が、目まぐるしくリード・ヴォーカルと個々の担当楽器が変わる曲構成と合わさることで、ステージに目が釘付けになってしまう。この流動的なフォーメーションは間違いなく今のバンドの強みだが、Alec(G・Vo)がライヴ終盤に言っていた「俺達は雲のように変わっていくバンド」(「雲の流れのようにだろう」とすぐに突っ込まれていたが)という言葉を証明するように、次々と新たな魅力が示されていく。Bob(Dr・Vo)がメイン・ヴォーカルを取る“Government Center”に続く5曲目に披露された新曲では、Alecが歌い上げる甘いメロディにBobがファルセットで60sポップス・マナーに忠実なコーラスを被せ、極上のハーモニーを構築。曲の美しさと合いまり、PA席にフィル・スペクターでも座っているのではないかという有り得ない錯覚に陥りそうになる。

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ここまで、比喩対象として海外の錚々たる面々を書き連ねてきたが、HAPPYの音楽に特定のバンドの影響がくっきりと表れているということではもちろんない。空気のようにロックを吸い、水のようにロックを飲んできた者ゆえの、「自然と鳴らした音がロックの正解になってしまった」というような純粋性がこのバンドには有る。そしてそれは、非常に特異なものでもある。現に、国内はもちろん、海外のどのシーンを見渡してもHAPPYとの特定の共通項を見出すのは難しいだろう。しかしながら、それでいてHAPPYのロックは完璧に2014年の音となっている。なぜか。それは、自分達の鳴らすロックこそが今という瞬間における最高の音楽なのだというバンドの不敵なアティテュードに拠るものなのだと思う。時代の空気を読むのではなく、時代を自分達の空気に染め上げてしまう。

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この日のライヴでは、新曲がさらに2曲披露された。ライヴ中盤に置かれた「列車をイメージして作った」という曲は、壮大なメロディのスロー・バラード。AlecとRic(Syn・Vo)とのかけ合いの格好良さと、ムードを保ったままじわじわと熱を高めていく曲構成の妙から、バンドの新たな決定打となりそうなポテンシャルを感じた。それだけに、曲を終えたときのフロアのリアクションが見たかったので、シームレスに次の曲に行ってしまったのが少々残念だった。もう1曲はアンコールの初めに。ヴォコーダーで変声したAlecがフロアをアジる、ぎらついたディスコ・ポップ。この曲もまたメロの立った良曲である。どの新曲も方向性は異なりながら、そのまま音源化できそうなクオリティに到達しているのが凄い。ただ、既発曲ももちろん、ライヴのハイライトを担っていた。Syu(B・Syn)による軽快なベースラインのグルーヴとコーラスの多幸感が際立つ“Cycle of Life”から、畳みかけるようなアップテンポに自然とフロアから手が挙がった“Cation”、そしてChew(G・Syn)のアグレッシブなギター・プレイを筆頭に今日一番の音圧が解き放たれた“Wake Up”へと続いた怒涛の流れによる、どんどん絶頂を更新していく盛り上がりは圧巻だった。しかも、その盛り上がりが、漏れなく笑顔で楽しそうな観客によって形作られているのが素晴らしい。Alecが語った「まず1人1人がハッピーになって、その周りもハッピーになっていったら、世界は平和になると思う。だから、今日はみんな、出会ってくれてありがとう」という言葉。そんな思想さえ信じてしまいたくなるようなロックの魔法に、この日のHAPPYは包まれていた。(長瀬昇)

■セットリスト

01.Magic
02.Run Run Run
03.Pity Xmas
04.Government Center
05.新曲1
06.Time Will Go On
07.Lucy
08.新曲2
09.Wow Wow
10.Color
11.Cycle of Life
12.Cation
13.Wake Up
14.Win Key Gun

(encore)
15.新曲3
16.Lift This Weight
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