Ken Yokoyama w/10-FEET@豊洲PIT

Ken Yokoyama w/10-FEET@豊洲PIT
愛とサプライズに満ちた、楽しく、かけがえのない対バンであった。年が明けて仙台・名古屋・大阪・東京と、4都市のそれぞれサイズの異なる会場で2公演ずつ、計8公演を行うKen Yokoyamaのコンセプト・ツアー「The Rags To Riches Tour V」。全公演で10-FEETが対バンを繰り広げ、また仙台 MACANAにはHOTSQUALL、名古屋 APOLLO BASEにはSECRET 7 LINE、大阪 FANDANGOにはG-FREAK FACTORY、東京 FEVERにはWANIMAもゲスト出演。辿り着いたファイナルの舞台は、豊洲PITである。

Ken Yokoyama w/10-FEET@豊洲PIT
Ken Yokoyama w/10-FEET@豊洲PIT
Ken Yokoyama w/10-FEET@豊洲PIT
先行するのは10-FEETだ。お馴染みの登場SEをオーディエンスの熱い歓声とクラップが後押しし、場内の空気を劈く鋭いギター・リフが導くのは“JUNGLES”だ。のっけから、TAKUMA(Vo./Gt.)のパワフルにがなり立てる歌声と、オーディエンスの一斉コーラスが正面衝突する。みぞおちに響くKOUICHI(Dr./Cho.)のビートが急激に表情を変え、NAOKI(Ba./Vo.)とのスイッチング・ヴォーカルで“focus”も叩き付けると、TAKUMAは「Kenさんで爆発したいやつ、力溜めたいやつは、10-FEET大人見でもいいぞ! 自分が一番楽しめる方法でいこうや。俺らも楽しませて貰うわ!」と告げていた。のだが、直後に沸騰不可避の“Everybody's Fighting”による爆走、そして“RIVER”とぶっ放すものだから笑ってしまった。言っていることと音が、良い意味で違う。音が、大人見を許さない。PIZZA OF DEATHの青いTシャツを着込んだ男子をステージに上げ、“RIVER”終盤のラガ・パートを任せてしまうという盛り上がりぶりだ。

Ken Yokoyama w/10-FEET@豊洲PIT
Ken Yokoyama w/10-FEET@豊洲PIT
Ken Yokoyama w/10-FEET@豊洲PIT
「Kenさんの曲、1曲覚えて来ました!」と“Don't Make Me Pissed Off Fuckin' Son Of A Bitch”をカヴァーし、更にHi-STANDARDの“START TODAY”を被せてくる辺りは、さすがと言うべきか愛情がだだ漏れの一幕だ。全身でグイグイとスウィングしてゆくNAOKIのベースが強烈な“1sec.”に続いては、“VIBES BY VIBES”のBPMが速い速い。オーディエンスの雄々しい歌声にまみれながらもメッセージが真っすぐに胸元へと飛び込んで来る“蜃気楼”は《僕はKenさんのライヴに〜》と歌詞を変えて届けられ、終盤は“goes on”から“Stay Gold”カヴァー、そして渾身の“その向こうへ”という熱いナンバーの連打で駆け抜けるのだった。

さて、ステージの転換を経ると、「Ken Yokoyamaがトイレ行ってる間に、2、3曲やっていいんだってー! 初めましての人はこんにちは、ゲスの極み乙女。です」と飛び入りしてしまう、WANIMAの3人である。Ken Bandのためにセッティングされた楽器を拝借し、伸びやかで楽しげなコール&レスポンスでオーディエンスを巻き込みながら、“Hey Lady”、“昨日の歌”、“BIG UP”とコンパクトな尺のナンバーを立て続けに放つ。小回りの効くフレッシュなパンク・サウンドだが、メロディのスケール感がやたら大きく、しなやかなところが素晴らしい。そこにKen Yokoyamaが登場し、和気あいあいとしたムードでそのままKen Bandのパフォーマンスへと突入していった。

Ken Yokoyama w/10-FEET@豊洲PIT
Ken Yokoyama w/10-FEET@豊洲PIT
「今日が10-FEETと8本目。大阪あたりから、もう寂しくなっちゃってさあ」とツアーの楽しさを滲み出させながら、軽やかにスタートして力強い歌で引き込むオープニング曲は“WALK”だ。決して多くを語るわけではなかったけれど、人々の心情を見透かしたように日の丸を掲げて「友達や仲間のこと心配するのに、理由なんかいらねえよな」と披露される“We Are Fuckin' One”が、触れる者の胸を焦がす。そして「今年もいろいろあると思うけど、何かあったら一緒に戦ってくれるかい」と傾れ込む“You And I, Against The World”は、率先して戦いに赴くKen Yokoyamaの姿をありありと映し出す音像だった。

バンドそれぞれのファンに向けて、ライヴに足を運んでくれるのが一番嬉しい、とあらためてサポートを求め、なぜかMay J.に憧れて髪が長くなっている、と冗談めかすと、Matchan(Dr)の打ち鳴らすカウベルでMay J.コールを誘いながら新曲“Dream Of You”を披露する。どこか愛らしいメロディでユーモラスな歌詞を転がす、ロックンロール・ナンバーであった。Jun Gray(B)率いるJun Gray RecordsからSCOTLAND GIRLのアルバムがリリースされることが紹介され、また正月に体重が増えてしまったというMatchanが体重や体脂肪率について話していると、「そういう数字出すと、何ベクレルだったらいい、みたいな話になるじゃん。馬鹿な人は数字の話するんだよ。もっと感性でいけよ」とKenさんらしいツッコミが入ったりもする。そしてHidenori Minami(Gt)によるリード・ヴォーカルでemberのカヴァー“I Do”やトロピカル・パンク・グルーヴに沸く“Popcorn Love”がプレイされ、この辺りはPIZZA OF DEATHの連帯感を伝えるような時間になった。

Ken Yokoyama w/10-FEET@豊洲PIT
Ken Yokoyama w/10-FEET@豊洲PIT
「ライヴ・ハウスには、怪我、置き引きや痴漢、チケットの転売とかいろんな問題があるけど、俺たちバンドはもちろん、みんなが暗黙の了解でルールを作る文化だと思ってる」「そういうみんなの横の繋がりから、いつか海外のバンドもぶっ飛ばすような、カッコいいバンドが出て来るよ。俺、信じてるからな」。そんなふうに語って、“This Is Your Land”が10-FEETコールやKenちゃんコールを巻き起こしながらプレイされた後には、Kenさんによるソロ・コーナーが控えていた。ギター一本に「語らせる」という印象の、自由闊達なアレンジで聴かせる“Somewhere Over The Rainbow”。この日貰ったばかりというギブソンのアコギを携え、リクエストに応えるHAWAIIAN6のカヴァー“Tiny Soul”。そしてSIONによる“がんばれがんばれ”のどこまでも優しい歌を届けると、じっ、と聴き入っていたオーディエンスは音が鳴り止んだ瞬間に大喝采を上げる。本当にスペシャルで、濃密な一幕であった。

Ken Yokoyama w/10-FEET@豊洲PIT
バンド・メンバーがステージに戻ったところで、思い切り良く“Running On The Winding Road”を切り出して再燃する。「パンク・ロック!」コールを誘いながらの“Punk Rock Dream”から“Ricky Punks”シリーズ3連発というパンク猛打賞モノの展開だ。「このツアーで言ってたんだけど、俺、いつまで出来るか分からねえよ? もう45だしさ。10-FEETとかWANIMAとか、頼むぞ。お前らも頼むぞ。俺と同じ考え方してくれ、って言ってるんじゃないよ。気持ちだけ、気持ちだけ持って帰ってくれ」。そう告げるKenさんだったが、だからこそと言うべきか、“Let The Beat Carry On”は、今という貴重な瞬間に刻み付ける、前のめりな大熱演になった。こんなふうに強い覚悟を抱いて、これからもKen Yokoyamaは一回一回のステージを特別な時間にしてゆくのだろう。

今回の対バンは対等だと思ってるよ、と語ると、ここで10-FEETを呼び込んでステージを預けてしまう。Jun Grayのベースを手にしたNAOKIがステージ上手側に立つポジションで、グリーン・デイの“Basket Case”をカヴァー。さらに、3人で一言、二言と打ち合わせすると、もの凄い勢いでハイスタの“Turning Back”も叩き付けて大歓声を浴びる。進行が押してしまったということで、「脇で軽くお説教されましたー!」と急ぎ足で戻るKen Bandは、“Believer”で最後にマイクをフロアに投げ入れてオーディエンスにがっつりと歌を委ね、大団円を迎える。締めて3時間超、ライヴという特別な体験を、あらためて噛み締める一夜であった。(小池宏和)
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