スガ シカオ@EX THEATER ROPPONGI

スガ シカオ@EX THEATER ROPPONGI - all pics by 中河原 理英all pics by 中河原 理英
「今日は最初から最後までスガ シカオがアコースティック・ギター1本でやりきるライヴなので、若干退屈な部分もあるかと思います。でも、そこはグッと想像力でカバーしていただいて(笑)。鳴ってないドラムの音やベースの音などを思い浮かべながら、自由に聴いていただければと思います」という挨拶に、オール着席スタイルの客席から沸き起こる笑いと拍手。その様子を満足そうに眺めながら、おもむろにギターを奏でるスガ シカオであった――毎年恒例となっているスガ シカオの弾き語りツアー「Suga Shikao Hitori Sugar Tour 2015」。その追加公演ファイナルが、今年も2月26日、デビュー18周年記念日となったこの日に東京・EX THEATER ROPPONGIで開催された。

SEと観客の拍手に迎えられ、たった一人で現れたスガ シカオ。ギターと譜面台、わずかな機材のみが用意されたステージ中央に構えると、アコギを勢いよく掻き鳴らして“コノユビトマレ”をスタートさせる。弾き語りとはいえ、エフェクトペダルを器用に踏み替えて繰り出される電子音と一体になったサウンドは、ダイナミックそのものだ。客席からも自然にクラップが沸き起こり、場内の温度はみるみる上昇の一途を辿っていく。2曲目では早くも代表曲の“黄金の月”をプレイ。重たい電子ビートや鋭いカッティングと絡み合いながら、聴き手の心にスッと染み込むようなスガの清涼感ある歌声が場内いっぱいに広がっていく。

スガ シカオ@EX THEATER ROPPONGI
冒頭の挨拶からの“見る前に跳べ.com”“フォノスコープ”の連打では、スガの両脇に2台の巨大モニターが登場。スガの顔や手元をアップで捉えたライヴ映像が流され、たった一人でプレイし歌う彼のパフォーマンスを視覚的にも堪能させる趣向である。事実、アコギのボディを叩いてリズムを刻み、弦を弾いてメロディを奏で――と鮮やかな手さばきで多彩な音像を立ち上らせていくさまは見応え十分。それを映像で迫力たっぷりに見せることにより、スガの躍動的なエネルギーが観客にも伝わって、プレイ中から「ヘイ!」とか「ワー!」とかいう掛け声が客席から自然と沸き起こる、熱いステージに繋がっているように思えた。

スガ シカオ@EX THEATER ROPPONGI
“航空灯”でセブンスコードのブルージーなサウンドを奏でた後は、スガ シカオ流クラブ・サウンドが炸裂。“サナギ”“アイタイ”をアタック感の強い電子ビートで届け、幻惑的なムードを築いていく。とはいえ、単に快楽的なムードにならないのがスガらしさ。心の闇をつぶさに捉えた歌と、どこか湿り気を帯びた繊細なメロディが、硬質なエレクトロサウンドと溶け合うことでグッと鮮烈に胸に響いてくるような気がした。そして圧巻だったのが、自身がテーマソングを手がけるNHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』を話題にしたMCを経て、電子音を極力抑えたシンプルな弾き語りでじっくり聴かせた“LIFE”からのパートであった。MCでは「自分もプロフェッショナルとして地道な音楽活動を続けることで、多くの人に希望を与えていきたい。その体験が、巡り巡って自分の新たな創作のヒントになれば」ということを語っていたスガ。その切実な想いが、ギター1本で届けられるシンプルな歌と言葉のひとつひとつに込められているような気がした。中でも、威勢のいい掛け声を浴びせながら熱っぽい歌を届けた“Progress”の生々しさは群を抜いていた。

スガ シカオ@EX THEATER ROPPONGI
約2年間のインディーズでの音楽活動を経て、昨年スピードスター・レコーズにてメジャー復帰を果たしたスガ。そんな自身の現状を投影させるかのように、最新シングル“モノラルセカイ”では、信じる仲間と一緒に世界と闘っていこうとする意志をメロディアスに綴っていく。続く“ストーリー”では、同期ものの機材でボイスパーカッションを重ねて濃厚でファンキーなサウンドを開陳。さらに恒例のコーラス練習を経て観客総立ちの大シンガロングが沸き起こった“午後のパレード”、8.6秒バズーカーの旬ネタから「ちょっと待ってちょっと待ってお兄さん」のフレーズをループさせながらソリッドなギター・ソロを披露した“19才”の連打で、場内を歓喜の渦に落とし込んで本編終了となった。

アンコールでは“Re:you”で場内を熱く燃え上がらせた後、デビュー曲“ヒットチャートをかけぬけろ”を投下! 曲中には「メンバー紹介をします! ギター、スガ シカオ! ヴォーカル、スガ シカオ! 手拍子&声援、お客さん‼」という粋な言葉も飛び出して、総立ちのお客さんとともに華やかなクライマックスを立ち上げてみせる。スガが去り、客電が点いても鳴りやまない拍手に応えて登場したダブル・アンコールでは、“夜空ノムコウ”をラストに披露。しっとりとした弾き語りのバラードと、「またライヴで会おうね!」という挨拶でしばしの別れを告げて、ステージを後にするスガ シカオであった。

スガ シカオ@EX THEATER ROPPONGI
昨年の弾き語りツアーではストリングス隊が登場する場面もあったけど、今回は終始ひとりで務め上げたステージ。照明や映像効果が最小限に抑えられ、スガの歌とプレイにグッとフォーカスするような演出にも、彼の「今」を感じ取ることができた。本編中には「昨年メジャー復帰して、新たなスタッフとの出会いもあった」ことを嬉しそうに語っていた、スガ。また「昨年は97年のデビュー当時のスタートラインにやっと戻れたような気がする」という発言もあった。こうして信じる仲間と新たな船出を果たしたからこそ、たった一人で自らの歌と音をシンプルに突き詰めるステージで、原点に立ち返ることが今の彼には必要だったのではないか。さらに「今年はアルバムを作りたい」という嬉しい発言も。バンド編成での「FUNK FIRE」ツアーも定期開催していることだし、こうしてフックの効いた活動を地道に続けることで、スガ シカオの生み出す音楽はより強く、奥深いものになっていくことだろう。来るデビュー20周年イヤーに向けて、その歩みはますますパワフルになっていきそうだ。(齋藤美穂)

■セットリスト

01.コノユビトマレ
02.黄金の月
03.見る前に跳べ.com
04.フォノスコープ
05.航空灯
06.サナギ
07.アイタイ
08.愛について
09.LIFE
10.アストライド
11.傷口
12.コーヒー
13.Progress
14.モノラルセカイ
15.ストーリー
16.午後のパレード
17.19才

(encore)
18.Re:you
19.ヒットチャートをかけぬけろ

(encore 2)
20.夜空ノムコウ
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