KANA-BOON@Zepp Tokyo

KANA-BOON@Zepp Tokyo - all pics by 高田梓 / AZUSA TAKADAall pics by 高田梓 / AZUSA TAKADA
「僕たちは、変わらない、ってことを大切にバンドをやっていて……メジャーデビューしてるくせに、なんやこの浪人生感は、ってことなんですけど(笑)。変わらないまま、カッコいいステージに立って……このZepp Tokyoも、聖地ですからね。憧れのバンドがたくさん出てて。立つことが出来て光栄です。これからも、浪人生みたいにダサい、変わらない僕たちを、変わらず、皆さんが好きでいてくれたら嬉しいです」。“シルエット”を披露する前に、谷口鮪(Vo・G)はそんなふうに語っていた。

KANA-BOON@Zepp Tokyo
変わらないものの価値をしっかりと見据え、守り抜いてゆくためには、一体どれだけの努力と成長を要するのだろう。開演から2時間、楽しさの中にも、そのことをひたすら突きつけてくるライヴだった。東名阪「クアトロだってばよ!編」、大阪城ホールと武道館「夢のアリーナ編」も勘定に含めると、丸3か月に及んだ「KANA-BOONのとぅるとぅるかむとぅるーTOUR」。「全国とぅるとぅる編」のファイナルである。翌5/22のZepp Tokyo、5/26の大阪・Zepp Namba、そして5/30の沖縄・桜坂セントラルと追加公演が行われるため、以下少々の演奏曲表記にはご注意を。

KANA-BOON@Zepp Tokyo
KANA-BOON@Zepp Tokyo
新作『TIME』収録曲や近年のシングルカップリング曲を多数フィーチャーし、MVのダンスが本当に踊れているのか検証しつつ“なんでもねだり”も披露されるという選曲。ステージはのっけから小泉貴裕(Dr)の猛烈なビートで幕を開け、谷口は「KANA-BOONです!よろしK*&@#$っ!!」と勢い余った挨拶を挟み込みんでは曲また曲と飛ばしまくる。それでも、KANA-BOONらしい明瞭なサウンドと歌声はがっちりオーディエンスを掴んで離さない。飯田祐馬(Ba)が「そろそろ時期かなと思って」簾を購入したというMCのくだりでは、「そしたら、古賀が簾しらんねん。スダレってなに?」(谷口)「ご飯とかにこう……通は、ご飯に乗っけて食うねん」(古賀隼斗/G)と珍回答で笑わせてくれる。「古賀の前髪!」とフロアからもヒントが飛んで楽しい。

KANA-BOON@Zepp Tokyo
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そんな古賀は、「すだすだすだすだすだすだすだれ〜♪」と歌声を巻き起こす“ないものねだり”の後「知らんくせに、すだすだ歌ってんの」と飯田からツッコまれたり、ステージ上で東京のお菓子を食レポ(結局、メンバー4人で仲良くシェア)したりとイジられキャラを引き受けていたのだが、いざ楽曲となると随所に熱いギターヒーローの顔を覗かせる。昨年のシングル4作と『TIME』によって、KANA-BOONのサウンド表現はより強烈なエモーションが引き出されたけれども、ステージ上で率先して生々しい感情表現を担うのが、古賀のギターなのである。会場の壁面にサイケデリックな模様が踊る中、ワウペダルを駆使したプレイで幻想的なパフォーマンスを増幅させる“愛にまみれて”や、眩くダイナミックな意志の広がりを伝える“生きてゆく”も素晴らしかった。

KANA-BOON@Zepp Tokyo
KANA-BOON@Zepp Tokyo
ツアー前にはエモーションがハミ出すようなパフォーマンスを見せていた4人だが、このファイナルの舞台では新作曲群もがっちりとこなれ、激しく渦巻くエネルギーの手綱を握って自由自在に乗りこなしている。いつか見た鮮やかな感情の色彩が、くすんだり濁ったり、変わってしまわないように、KANA-BOONはありとあらゆる方法で努力を重ね、成長を続けている。怖いのは、停滞し風化してしまうことの方だからである。谷口はその上で「変わらず、皆さんが好きでいてくれたら嬉しいです」と告げたのではないだろうか。なお、アンコールの一幕では、古賀のギターアンプ裏に簾の現物が仕込んである、という気の利いた方法でようやく答え合わせに成功。古賀は、自身の前髪部分に簾を掲げてみせるのだった。(小池宏和)
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