NICO Touches the Walls@東京国際フォーラム

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NICO Touches the Wallsを突き動かす原動力は何か。その答えが透けて見えたような気がした。しかも、それが鬼気迫るような演奏ではなく、肩の力の抜けた演奏で体現されていたことが喜ばしく、また感動的だった。NICOにとって約2年ぶりとなる全国ツアー「まっすぐなツアー」。これは、大きな節目の時を経て再び原点に立ち返った4人が、新たな航海へと乗り出すことを告げた門出のツアーと言えよう。その最終日、東京国際フォーラム公演の模様をレポートする。

NICO Touches the Walls@東京国際フォーラム
NICO Touches the Walls@東京国際フォーラム
結成10周年を迎えた昨年は、初のベスト盤リリース、20日間の篭城型ライヴ、「リベンジ」と位置付けた2度目の武道館ワンマンと、何かに駆り立てられるかのように精力的に動いてきたNICO。今年に入ると過去曲をアコースティック編成でリアレンジしたアルバムを発表し、自らの軌跡とじっくりと向き合ってきた。そんな長い軌跡の末に、確かな何かを掴んだのだろう。“雨のブルース”でしっとりと幕を開けたステージは、とても地に足の着いたもの。“TOKYO Dreamer”“ローハイド”“ホログラム”“バイシクル”“N極とN極”という新旧のレパートリーを駆け抜けながら、力むことなくグイグイとドライヴ感を上げていくサウンドは、現在のNICOの充実ぶりや自信のほどがハッキリと見て取れるものだった。

NICO Touches the Walls@東京国際フォーラム
NICO Touches the Walls@東京国際フォーラム
何より、初めての会場である東京国際フォーラムとの相性が抜群に良かった。光村龍哉(Vo・G)の伸びやかな歌声と、細部まで磨き上げられた音のひとつひとつが、会場の隅々までクリアに響きわたっていく。力強いメロディ、多彩なアレンジ、精緻な描写力で奥深い世界を築き上げるNICOの楽曲のクオリティの高さはすでに周知の事実と言えるが、それが会場の高度な音響システムによって、より鮮烈に浮かび上がる形となっていたのだ。これには本人たちも驚いたようで、「歌っていて本当に気持ちいいんですよ」と光村。中でも、官能的なグルーヴが渦巻いた“いいこになっちゃいけないの”の妖しい高揚感は最高だった。

NICO Touches the Walls@東京国際フォーラム
「約2年ぶりのツアーです。どれだけ待たせるんだよと各地でお叱りを受けましたが(笑)、この2年間はバンドの可能性をググッと広げられた期間だったと思っています」――ベスト盤リリースに伴って全国ツアーを盛大に行うという選択肢もあったはずだが、彼らはそれを選ばず、武者修行のような活動に打って出た。そうすることで、より大きく、深く進化した楽曲とともに全国を周りたかったという意図は、後半のステージを見ても明らかだ。“Diver”の胸をえぐるようなディープな響き。“夏の大三角形”のピュアで温かなメロディ。最新シングル“まっすぐなうた”の前のめりな疾走感。そして本邦初公開となった新曲“渦と渦”の、すべてをなぎ倒すような豪快な爆発力。そのすべてが、新たな季節の到来を示すかのようにパワフルに鳴っていた。さらに底抜けに明るいウエスタンサウンドで巨大な祝祭感を描いた“天地ガエシ”で本編終了。

アンコールでは、今年2月にリリースしたアルバムよろしくアコースティック編成で“手をたたけ”“THE BUNGY”“口笛吹いて、こんにちは”の3曲を披露。メンバー全員でのドラムリレーや、会場一丸の口笛コーラスなど、遊び心あふれるパフォーマンスで観客と楽しみを分かち合っていく4人の姿が印象的だった。今回のアクトでもうひとつ感じたのは、ステージに立つ4人がとにかく楽しそうだったこと。そのストイックな姿勢から、ロックの求道者といった言葉で形容されることの多いNICOだけど、その根底には音楽を奏でることへの本能的な喜びや幸福感が潜んでいる。だからこそ、既存のスタイルにこだわらず楽曲に新たな息吹を与えながら、バンドそのものの進化を素直に楽しむことができる。そんな本質が、まっすぐと放たれる歌と音からありありと感じ取れたのも、この日の大きな収穫だった。この充実のツアーを終えて、これからNICOはどこへ向かうのか。今は大きな期待に胸が膨らむばかりだ。(齋藤美穂)

●セットリスト

01. 雨のブルース
02. TOKYO Dreamer
03. ローハイド
04. ホログラム
05. バイシクル
06. N極とN極
07. いいこになっちゃいけないの
08. かけら-総べての想いたちへ-
09. エトランジェ
10. 君だけ
11. Diver
12. Mr. ECHO
13. 夏の大三角形
14. ニワカ雨ニモ負ケズ
15. まっすぐなうた
16. 渦と渦
17. 天地ガエシ
(encore)
18. 手をたたけ
19. THE BUNGY
20. 口笛吹いて、こんにちは
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