2000年代のロックにとって最大のムーヴメントであり続けているもの、それがエモだ。特にアメリカのエモは最早ロックのいちジャンルではなく超メインストリーム、ロックのスタンダードになりつつある。ジミー・イート・ワールドはそんなエモ・シーンにおける大御所と言えるバンドで、96年のメジャー・デビュー以降、最前線でこのシーンを引っ張り続けている。日本でも2001年の『ブリード・アメリカン』で一気にブレイク、現在も某ビール・メーカーのCMソングになっている“スウィートネス”を筆頭に、エモと言われたら真っ先に彼らを連想するような名曲を何曲も生み出している。
最新作『チェイス・ディス・ライト』を引っさげての来日となった今回のツアー、渋谷AXが立錐の余地なき超満員なのも当然か。『チェイス・ディス・ライト』の1曲目“ビッグ・カジノ”で幕開けたそのステージは、2曲目にして早くも“スウィートネス”が惜しみなく投下される。Aメロがすなわちサビで楽曲の全てであるという、反則スレスレ、そしてシンプル極まりない本曲は、オーディエンスの合唱をもって初めてそのカタルシスが100%になるという究極のシンガロング・アンセム。“スウィートネス”で「オッオー!」と絶叫し、“ブリード・アメリカン”で「アッハーン!」の合いの手をパーフェクトに入れないことには、JEWのライヴに本当に参加したことにはならない。強烈なバックライトで照らされる客席は、もうひとつのメイン・ステージなのである。最新アンセムの“オルウェイズ・ビー”も加わり、前半にして早くもクライマックスな盛り上がりを記録する。
前へ前へ、上へ上へと竜巻のように駆け抜けていく疾走感、それがJEWの醍醐味だが、同時にライヴ中盤でフィーチャーされたハード&へヴィ、地面を踏みしめるようなミドル・テンポのナンバーも効いている。エモの第一人者と呼ぶに相応しい風格が感じられたのが、そんな瞬間だった。緩急付けつつラストの“ミドル”まで1回もテンションを下げることなく突き進んだ1時間20分、格の差を見せ付けるような圧巻のステージだった。(粉川しの)
ジミー・イート・ワールド @ 渋谷AX
2008.03.17