UVERworld@国立代々木競技場 第一体育館

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この夜、TAKUYA∞(Vo)が何度も繰り返し放っていた言葉が2つあって、それは「グルーヴ」と「幸せ」であった。「今日のグルーヴは最高だ。このまま、グルーヴでグルーヴしていきます! グルーヴってなに?って顔してるなオイ!」と笑いを誘いながら、バンドメンバー同士の音の語らいが大勢のオーディエンスに伝わり、オーディエンスの反応がステージに返ってエネルギーの循環を育むという、「グルーヴ」の形をご機嫌に説明する。「俺もう、馬鹿にされても何とも思わないよ。UVERworldを始めてから、ずっと幸せだよ」。そんなふうにも語られていた、「UVERworld LIVE TOUR 2015」の後半戦、「UVERworld 結成15周年&デビュー10周年記念LIVE」@東京・代々木の2日目である。

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「おい男ども、力貸せ! 女に、この夏最高の空間を作ってやろうぜ!」と呼び掛けて繰り広げられる“シャカビーチ〜Laka Laka La〜”のトロピカルなダンスと歌声にしても、「UVERworldが10年も保つわけねえって、誰が言った!?」とぶちかまされる“誰が言った”を、2人で取っ組み合うような仕草から鮮やかなワルツのステップに移行して締め括る信人(B)+TAKUYA∞にしても、確かにこの日のUVERworldとオーディエンスは、アニバーサリーを全力で謳歌し、幸福感で塗りつぶしてやろうとする意気込みに満ち満ちていた。真太郎(Dr)は、いつになく真剣に感謝の思いを伝えていたかと思えば、「スクリーンでも本気で演奏しているメンバーの表情がご覧頂けるかと思いますけれども、セックスしてるときと同じ顔になっております」と告げる。まあ、結果的には平常運転である。

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巨大な体育館全域に立ち籠める「グルーヴ」は、必ずしもラウドで勢いのある演奏から感じられるものではなく、彰(G)の情感豊かなディレイのフレーズから切り出される“志 -kokorozashi-”や、“7th Trigger”中盤の静謐なパートをオーディエンスの手拍子が後押しする瞬間からも立ち上ってくる。最新シングル“I LOVE THE WORLD”は、おびただしいレーザーとオーディエンスのリストバンド型ライトの煌めきに彩られて強烈な肯定性を振り撒いていた。何よりも、「なるべく大切なものを持たないようにして上京して、すべてをバンドに捧げられるようにした。でも、10年経って、本当に失くしたくない、離れて欲しくないもので、この手は一杯になっちまったんだよ」と披露される“僕の言葉ではない これは僕達の言葉”は、こんな大勢の人々が詰めかける幸福なアニバーサリーの空間に相応しい一曲であった。

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真太郎ひとりがステージに残り、克哉(G)と誠果(Sax・Manipulator)、そして彰と信人がそれぞれフロア後方のリフターに乗り込んで高い位置で演奏するインスト曲“Massive”は、いくらイヤモニで音を確認していると言っても、バンドにとっては難しいはずのパフォーマンスだ。そんなとき、オーディエンスと共有する「グルーヴ」は重要な手掛かりになる。“No.1”を披露するとき、TAKUYA∞はオーディエンスに向けて「10周年のUVERworldを、見せつけてやろうぜ!」と呼び掛けていた。「見せてやる」ではなく「見せつけてやろうぜ」。何よりも、ファン(=Crew)に寄せるそんな信頼こそが、アニバーサリーの幸福感を裏付けていたのだと思う。

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「いろんな大人たちとケンカして、怒りのエネルギーを音楽にぶつけてきたけど、そういうの、もういいよ。苦手だ俺。これからは、こうやって最高に幸せな音楽を作って、届けたい。それが気持ちいいから」。TAKUYA∞はそんなふうにも語って、温かい拍手を浴びていた。怒りを、伝わる表現に仕立て上げるには途方もないエネルギーが必要だし、表現するためにわざわざ怒りのエネルギーを掘り起こすのは本末転倒で、不健全だ。何より、UVERworldは結成から15年、デビューから10年の闘いを経て、今や大勢のファンと幸福なグルーヴを分かち合うことができるステージに立っている。でも、僕はこう思う。TAKUYA∞は、これからも怒るべき時に怒り、そのエネルギーを音楽に落とし込むはずだ。僕がどうこう言う話ですらなく、TAKUYA∞はある日、脊髄反射みたいなスピードでまた怒ると思う。彼は恐らくそういうアーティストだし、UVERworldはそういうバンドだ。

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会場内で無限にエネルギーが循環する、幸福なグルーヴに身を委ねていたTAKUYA∞は、思わず“IMPACT”の演奏を忘れて後に仕切り直すというハプニングもあった(正直に自己申告していた)けれど、それぐらい心が満たされる、アニバーサリーライヴであった。今後は同会場で「QUEEN’S PARTY(女祭り)」の2日間があり、そして佐賀文化会館(9/9)、神戸での「結成15周年&デビュー10周年記念LIVE」(9/12)、同じく神戸での「KING’S PARADE」(9/13)と、舞台を移してツアーは続く。ほとんど間を空けずに、「“15&10”Anniversary Tour」も繰り広げられるので、各地公演を楽しみにしていて欲しい。(小池宏和)
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