9mm Parabellum Bullet@渋谷CLUB QUATTRO

9mm Parabellum Bullet@渋谷CLUB QUATTRO - all pics by 橋本塁all pics by 橋本塁
「ただでさえDJ泣かせのバンド名なのに、すでに各地でいろんなDJ、パーソナリティが苦笑している今回のシングル(笑)、みんなもう聴いてくれましたか?」という菅原卓郎(Vo・G)の呼びかけに、降り続く大雨にも負けず渋谷CLUB QUATTROに集まったオーディエンスから熱い大歓声が噴き上がる――。

9mm Parabellum Bullet@渋谷CLUB QUATTRO
9mm初となるクアトロA-Sideシングル『反逆のマーチ/ダークホース/誰も知らない/Mad Pierrot』の発売日に行われたスペシャルライヴ=「9mm Parabellum Bullet QUATTRO A-Side Single『反逆のマーチ/ダークホース/誰も知らない/Mad Pierrot』Release Party at SHIBUYA CLUB QUATTRO」。趣向と企てが山盛りのセットリスト越しに、変幻自在な音像のすべてを「ロックバンド:9mm」の掌中に収める4人のタフネスを真っ向から響かせてみせた、最高のアクトだった。

9mm Parabellum Bullet@渋谷CLUB QUATTRO
9月9日=「9mmの日」ということで、20時の開演に先駆けて18時からタワーレコード渋谷店でゲリラライヴを開催、まさかのダブルヘッダー実現となったこの日の9mm。最新のアーティスト写真同様にスーツ姿でキメた4人が轟かせたのは、『Movement』(2011年)の幕開けを飾る“荒地”! 舞台から伸びた花道に滝善充(G)が飛び出して奏でるサイレンの如きギターサウンドが、クアトロを満たした観客の衝動を震わせフロアを揺さぶり、さらに3rdアルバム『Revolutionary』(2010年)の“invitation”へ……ここ最近のライヴとは明らかに異なる選曲が、このライヴの特別な意味を早くも物語っている。

ステージ上手には、落語などでお馴染みの「めくり」(出演者の名前を書いた紙の札)が設置されており、冒頭部分で掲出された名前は「菅原卓郎」。つまり、ライヴ序盤のこのブロックは卓郎の選曲によるもの。この「卓郎セレクト」パートはその後、鉄壁アンセム“Discommunication”を経て、クアトロA-Sideシングルの卓郎作曲ナンバー“誰も知らない”へ続く。「メンバー4人が1曲ずつ作曲&プロデュース」というシングルの趣旨を、それぞれの新曲を含めそのままライヴへと展開してみせた、ということだ。

ちなみに、下記セットリストで言うと、“Mr.Suicide”“星に願いを”“光の雨が降る夜に”“Mad Pierrot”がかみじょうちひろ(Dr)選曲、後半の“Mr.Brainbuster”“Motorbreath”(メタリカのカバー)“ダークホース”“悪いクスリ”が中村和彦(B)のブロック、“反逆のマーチ”“ハートに火をつけて”“sector”“Punishment”が滝善充セレクト。インディーズ曲ありインストありカバーあり……といった幅広い選曲で、四者四様のロマンを燃え上がらせていた。

9mm Parabellum Bullet@渋谷CLUB QUATTRO
そして何より、クアトロA-Sideシングルの新曲群の訴求力。4人の演奏の爆発力を卓郎の歌が雄大なスケール感へと編み上げていく卓郎曲“誰も知らない”。ツーバスのシャッフルビートが不穏な妖気とともに響くかみじょう詞曲のロックンロール“Mad Pierrot”。鋭利な8ビートとともにロックのロマンを疾駆させる和彦曲“ダークホース”。観る者の交感神経を爽快にバグらせる音色×フレージング×ビートで無上のカオスを描き上げる滝作曲の“反逆のマーチ”。まるで色彩も形も異なる4つの音像が乱反射し合いながら、紛れもない「9mmのロック」を浮かび上がらせていく――という今回のシングルの核心を、この日のアクトはどこまでも鮮烈に提示していた。

9mm Parabellum Bullet@渋谷CLUB QUATTRO
加えて、中盤の4曲は、「ここまでクアトロにちなんできてるもんだから、選曲も『クアトロ』で大喜利をしようかなと思って」という卓郎の言葉通り、「ク」「ア」「ト」「ロ」で始まるタイトルの楽曲を配置。“黒い森の旅人”“atmosphere”“Trigger”……と沸き返ってきたフロアが、「ロ」を前にして「あれっ?」とざわつき始める。「みんな、気づいたか? 9mmの曲には、頭に『ロ』がつく曲が1曲もねえ!(笑)。というわけで、誰もが知ってるあの名曲を――」と演奏したのは、なんとスピッツの“ロビンソン”! 「“ROSIER”(LUNA SEA)と迷ったんだけど」と後のMCで卓郎は話していたが、「超硬質メロコア」あるいは「開放的メタル」とでも言うべき熱量とともに鳴り渡る9mm版“ロビンソン”が、クアトロの夜をひときわ熱く彩っていた。

9mm Parabellum Bullet@渋谷CLUB QUATTRO
さすがにダブルヘッダーの疲れが出たのか、終盤パートの途中でセレクター:滝当人の右手指がつってしまい演奏不能になるハプニングもあったものの、“ハートに火をつけて”では滝がギターフレーズを熱唱(!)、“sector”“Punishment”のスラッシュ曲連射で卓郎がギターをアシスト(滝は“Punishment”でギターを置いてクラウドサーフ!)という場面が観られたという点でも「特別」だった今回のライヴ。10月の対バンツアー「カオスの百年TOUR 2015」に触れ、「またゼロからやるような気持ちで全国各地に行って、全国どんな会場に行っても、こんなふうな盛り上がりが見せられるようなバンドに、もう一度なろうと思ってます。よろしく!」と改めて決意を語っていた卓郎。9mmの「その先」への期待感を、4人の音が無限増幅してみせた爆演だった。(高橋智樹)

●セットリスト

01.荒地
02.invitation
03.Discommunication
04.誰も知らない
05.Mr.Suicide
06.星に願いを
07.光の雨が降る夜に
08.Mad Pierrot
09.黒い森の旅人
10.atmosphere
11.Trigger
12.ロビンソン (スピッツcover)
13.Mr.Brainbuster
14.Motorbreath (メタリカcover)
15.ダークホース
16.悪いクスリ
17.反逆のマーチ
18.ハートに火をつけて
19.sector
20.Punishment
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