Galileo Galilei@Zepp DiverCity

Galileo Galilei@Zepp DiverCity
日本とニューヨーク。国境を越えて音楽という共通項をもとに育まれた友情が、とても幸福な形で結実した一夜だった。Galileo Galileiが全国6都市をまわった秋の全国ツアー「Galileo Galilei "broken tower tour"2015」は、東名阪の3ヵ所に盟友・POP ETCをオープニングアクトに迎えて行なわれた。ポップ・エトセトラは、これまでのガリレオ作品に共同プロデューサーとして参加している間柄で、今年3月のガリレオ自主企画でも共演。長年親交を深めてきたが、今回のように一緒にツアーをまわるのは初めてだ。

開演10分前にステージに登場したクリストファー・チュウ(Vo)とジョナサン・チュウ(G)、そしてジュリアン ・ハーモン(Dr)。メンバー3人のうちふたりが兄弟というポップ・エトセトラの編成もガリレオと似ているが、この2組の共通点は、深くかげりを帯びたインディーポップ的な佇まいと、オルタナティヴな感性、そしてなにより、そこから独自のポップミュージックを見出そうという気概そのものだ。親日家であるクリストファーは、ガリレオを「GG」と呼び、「ここでツアーが終わるのが寂しいです」と上手な日本語であいさつ。1月27日にリリースするニューアルバム『Souvenir』から、躍動感のあるビートで踊らせた“Please Don't Forget Me”まで4曲を披露して、ガリレオへと繋いだ。

Galileo Galilei@Zepp DiverCity
この日のガリレオは、サポートメンバーにDAIKI(G・Key)と藤井清也(G)という、ふたりのギタリストを迎えた5人編成だった。2台のシンセが重なり合う混沌としたインスト曲“Chill Boy”からライヴがスタートすると、続く“Sex and Summer”で、尾崎雄貴(Vo)の少しハスキー気味で抑揚の効いた歌声が会場に響き渡った。そして、尾崎和樹(Dr)が力強いドラムを繰り出した疾走感溢れる“恋の寿命”へ。ガリレオのライヴは、時期ごとにバンドのムードを色濃く反映させながら、CD音源を再構築して披露される曲が多い。今回のライヴでは、和樹のビートが一段と強化されたダイナミックなアンサンブルが印象的だった。そのなかで雄貴の歌もまた訴求力のあるエネルギッシュなアプローチだ。そこには、より肉体的でパワフルな最新のガリレオの世界が広がっていった。
 
6曲を終えて、「攻めのセットリストでいくので。今日は心して聞いてください」と、雄貴。続く“リジー”では、ステージに光と影で繊細な模様を描き出したかと思えば、淡いピンク色の光がほのかに会場を染めた“花の狼”では美しい光の演出にも目を奪われる。そして、雄貴がギター1本で哀愁漂うメロディを歌い出し、佐孝仁司(B)のベースラインが深い味わいを刻んだ“山賊と渡り鳥のうた”へというように、『PORTAL』以降の楽曲を中心にしながらライヴは進んでいった。アルバムリリースにひもづかないツアーということもあり、とても自由で、リラックスしたバンドの雰囲気がいい。

「さっきポップ・エトセトラが最後にやった曲を覚えていますか? 実は、あの曲にインスパイアされて作った曲です」と、雄貴が紹介した“Birthday”では、和樹と佐孝がコーラスに加わり、言い様のない興奮が高まっていく。フロアからは手が挙がったり、そっと身体を揺らしたり、思い思いに音楽を楽しむ良いリアクションが返ってきた。なかでも、珍しく生々しい言葉で綴った自殺者の遺書のようなナンバー“くそったれども”は鮮烈だった。《くそったれ くだらない地球という星》と、吐き出すように投げかける雄貴の語気が荒い。そこから、いよいよクライマックスへ。バンド初期から大事にしてきた“ハローグッバイ”に続き、6月にリリースされたシングル“嵐のあとで”の長いアウトロで雄貴がエモーショナルな歌声をあげると、これまで何度もガリレオのライヴで感動的なエンディングを飾ってきた名曲“星を落とす”で壮大なラストを飾った。

Galileo Galilei@Zepp DiverCity
アンコールでは、12月にリリースされる新曲“クライマー”が披露された。アニメ『ハイキュー!!』のエンディングテーマとして書き下ろされたこの曲の雄弁さを、雄貴は「スポーティな、バーン!っていう曲」と説明したが、実はそれが言い得て妙で、これまでのガリレオにないぐらいダイレクトにエネルギーが満ち溢れたナンバーだった。思えば、今回のツアーのタイトル「broken tower tour」の「tower(塔)」は、タロットカードでは崩壊や惨劇を意味する。その不吉な意味合いに、メンバーの真意をいろいろと想像してしまうのだが、もしかしたら、そこに己の価値観を壊して進んでいこうというガリレオの「その先」への意志が込められているのかもしれない。

アンコールの2曲目ではポップ・エトセトラを呼び込んで、8人編成によるスペシャルコラボで、スプリームスの“You Can't Hurry Love”(恋はあせらず)をカヴァー。そして最後に、「止まらず来年まで走っていくので、付いてきてください」と雄貴が言うと、ラストナンバー“親愛なる君へ”。ギターを持たず、スタンドマイクで歌った雄貴がハンドクラップを求めると、会場中がひとつになった。

Galileo Galileiは、これまでもいくつもの変遷を経て今に至るバンドだ。そんなガリレオからはいま、クリエイターとしての探求心、音楽家としてのストイックさ以上に、プレイヤーとしてのタフな存在感、みんなを引き連れていく牽引力を強く感じる。現在はアルバムを制作中であり、来年にはリリースしたいと語ったガリレオ。いまのモチベーションが作品に直結しているならば、相当エネルギッシュな作品になるのではないか。この日、発表された過去最多18公演をまわる全国ツアーにも期待は膨らむ一方だ。(秦理絵)

●セットリスト

01. Chill Boy
02. Sex and Summer
03. Jonathan
04. 恋の寿命
05. Imaginary Friends
06. 老人と海
07. リジー
08. Good Shoes
09. 花の狼
10. 山賊と渡り鳥のうた
11. 青い栞
12. コバルトブルー
13. Birthday
14. くそったれども
15. ハローグッバイ
16. 嵐のあとで
17. 星を落とす
(encore)
18. クライマー
19. You Can't Hurry Love (feat. POP ETC /スプリームスのカヴァー)
20. 親愛なるきみへ
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする