ブラッド・レッド・シューズ @ 渋谷クラブクアトロ

ロックンロールにとって、色気と禁忌は不可欠なスパイスである。このブラッド・レッド・シューズのライヴ・パフォーマンスを観てまず頭を過ぎるのは、そんなロックンロールの法則だったりする。ブラッド・レッド・シューズはブライトン出身のデュオ。超絶美少女なローラ・メアリーがギターを弾き、フェミニン美少年なスティーヴがドラムを叩くという、簡単に言ってしまえば「逆ホワイト・ストライプス」な構造を持つ新星だ。ただし彼らはブルーズの血肉化、モダナイズに闘志を燃やすストライプスとは音楽性が抜本的に異なり、ノイズ・ラウド・ミュージックとしてのグランジを再解釈したような、ひんやりと醒めたホワイト・ノイズを基調とするバンドだ。

とにかく音がデカイ。ギター・リフとドラムスの「線」がメインで、コード弾きのような「面」が極力排除されているにも拘らず、音がデカイ。そう、のっぺりとした音圧で押し切るラウドネスではなく、しなる「線」の太さ、硬さでラウドを演出するタイプの、ドライでタフなサウンドメイクが彼らの特徴である。しかもヴォーカルはローラ・メアリーとスティーヴがランダムに掛け合い、時にユニゾンになるシンプルな構造。つまり、音の「隙間」は多々あるのに、それが緩さやローファイではなく、一歩先が読めない危うさのようなテンションに転じていくのが素晴らしい。

前述のように彼らのパフォーマンスには色気と禁忌が漂いまくっているわけだが、ティピカルなフィーメル・ロッカーの情念ドロドロ系とは一線を画すローラ・メアリーのクールネスもいい。「ろぉらぁっ!!」と野郎連の野太い歓声が何度も飛んでいたのも納得、新しいロック・アイコンの誕生である。(粉川しの)
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