きのこ帝国 × くるり@Zepp DiverCity

きのこ帝国 × くるり@Zepp DiverCity - きのこ帝国/all pics by 上飯坂 一きのこ帝国/all pics by 上飯坂 一
メジャー初のアルバム『猫とアレルギー』リリース直後のきのこ帝国は、全国7公演のツーマンツアーを敢行。岡山と福岡ではアカシック、大阪でSalyu、名古屋で安藤裕子、札幌でGalileo Galilei、仙台でねごとと相見え、ファイナルの東京・Zepp DiverCityではくるりとの対バンが繰り広げられるという、先輩格アーティストが多く名を連ねたラインナップであった。

きのこ帝国 × くるり@Zepp DiverCity - くるりくるり
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先攻のくるりは、岸田繁(Vo・G)と佐藤征史(B・Vo)、サポートに松本大樹(G)、野崎泰弘(Key)、福田洋子(Dr)、加藤哉子(Cho)、そしてRopesメンバーとしても知られるアチコ(Cho)という7人編成。ふくよかな音像で“ワンダーフォーゲル”を繰り出すのだが、推進力もパワフルで素晴らしい。“シャツを洗えば”の女声パートは加藤とアチコがユニゾンで見せ場を作り、雄大に広がる音響美で魅せる“Morning Paper”は、今回の対バンにもうってつけに思えた。「きのこ帝国にお呼ばれしまして。たいへん光栄であると共に、なんで我々が呼ばれたのか分からないまま来てしまったんですが」と笑わせる岸田である。

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この後には、「Aだっけ?」と出だしの音を確認しつつ、新曲も披露される。軽快かつ風通しの良いビートポップであり、ピアノからオルガンへと転がる野崎のプレイもナイスであった。抑制を効かせながら音の奥行きを受け止めさせる“ばらの花”の後には、“everybody feels the same”、“Liberty&Gravity”、“ロックンロール”という個性まみれの名ロックチューンを連発し、極めつきにはエモーショナルなオルタナサウンドの先駆者として“虹”を披露するという、さすがの迫力を感じさせたステージであった。

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そしてあーちゃん(G)、西村“コン”(Dr)、谷口滋昭(B)、最後に佐藤千亜妃(Vo・G)が姿を見せ、後攻のきのこ帝国のステージがスタート。1曲目は、じわじわと波のように寄せるサウンドのイントロが立ち上がり、美しく揺らめく歌声を激しいディストーションが追う“足首”だ。内気な心象風景の中から《歌おう、歌を歌うよ》と決意が立ち上り、新作曲の中でも随一のパンクスピリットを宿した“YOUTHFUL ANGER”ではひしゃげたギターリフがぶち込まれる。くるり・岸田も絶賛していた“海と花束”の、ディープな思考をありのままに描き出す音の渦。この音響美へと一気に到達してしまう、4人の瞬発力と技術に舌を巻く。

きのこ帝国 × くるり@Zepp DiverCity - きのこ帝国きのこ帝国
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あーちゃんが柔らかくドリーミーなシンセフレーズを奏で、穏やかな歌詞の中に包まれる“怪獣の腕のなか”。続く“猫とアレルギー”でもあーちゃんはキーボードに向かっており、歌われるべきテーマの変化と歩調を合わせるように、温かな楽曲を引き立てる音色を響かせていた。《12月の空気を吸い込んで/くしゃみをひとつ》といった歌詞も時期にぴったりだ。そしてメジャーデビュー曲となった“桜が咲く前に”へ。印象深いメロディのフックが、記憶と感情にしっかりと寄り添ってゆく。一曲毎に「ありがとう」と穏やかに感謝の言葉を残す佐藤の姿も、以前の彼女とは随分違って見えた。

きのこ帝国 × くるり@Zepp DiverCity - きのこ帝国きのこ帝国
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轟音パフォーマンスが光る“ミュージシャン”や“夜が明けたら”は、これまでのキャリアの経験値もあって強烈な印象を残した。現時点のインパクトの大きさで言えば新曲群よりも上かもしれない。ただ、かつて歌の中で孤独な痛みに向き合ってきた彼女たちだからこそ、他者と関わる幸福な時間へと寄せる思いも、未来へと馳せる希望も、人一倍強い。だから、新しい歌で、新しい演奏で、キャリアを築こうとするきのこ帝国の姿は、極めて人間らしい生命力に満ち満ちていた。今後、新曲群は演奏回数を重ねるにつれ、過去の作品とは異なる輝きを増してゆくだろう。そう、今のきのこ帝国の音楽は、そんな「予感」そのものの形をしているのだ。

きのこ帝国 × くるり@Zepp DiverCity - きのこ帝国きのこ帝国
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くるりとの共演に対し「感無量でした」と、言葉は多くないが最大限の感慨を伝える。惜しくも両バンドの同名曲対決は果たされなかったが、ここで“東京”を披露し、本編の最後はメジャーデビューシングルのカップリング曲“Donut”で締めくくった。さらに、「アンコールありがとうございます……何か喋った方がいいですかねえ? あ、アンコールありがとうございます。さっき言ったか」と告げ、メンバーが身につけたツアーグッズに触れる。そんな佐藤の言葉は少々たどたどしかったけれど、ファンキーな“クロノスタシス”や、しなやかな決意に満ちた“ありふれた言葉”の堂々たる歌いっぷりは、オルタナティヴなままポップに人々と関わろうとする彼女たちの姿勢を象徴するかのようであった。

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きのこ帝国は、来春3月から全国9公演のワンマンツアーを予定している。また、くるりが2015年内に立つ最後のステージは12月28日のCOUNTDOWN JAPAN 15/16・EARTH STAGE。同日には岸田擁するサンフジンズも、COSMO STAGEに出演する予定だ。(小池宏和)

・セットリスト

くるり
01. ワンダーフォーゲル
02. シャツを洗えば
03. Morning Paper
04. 新曲
05. ばらの花
06. everybody feels the same
07. Liberty&Gravity
08. ロックンロール
09. 虹

きのこ帝国
01. 足首
02. YOUTHFUL ANGER
03. 海と花束
04. 怪獣の腕のなか
05. 猫とアレルギー
06. 桜が咲く前に
07. ミュージシャン
08. 夜が明けたら
09. 東京
10. Donut
(encore)
11. クロノスタシス
12. ありふれた言葉
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