「ありがとうございます。ツアーファイナル、すごく感慨深いです」。ツアー完走の感慨をひと言ひと言静かに語る秋田ひろむ（Vo・G）の言葉に、中野サンプラザ満場のオーディエンスから万感の拍手が巻き起こっていく。最新3rdアルバム『世界収束二一一六』を携えて、追加公演含め7会場8公演にわたって行われてきた全国ツアー「amazarashi LIVE TOUR 2016『世界分岐二〇一六』」のファイナル、東京・中野サンプラザ公演。amazarashi史上最もシリアスな物語性を帯びた『世界収束二一一六』が同時に、最も切実に人間の真実と生命への希求を体現していることを、この日のアクトはまざまざと見せつけていた。

いつもの通り、客席から紗幕で遮られた舞台上に秋田ひろむ、豊川真奈美（Key・Piano）、そして出羽良彰（G）らサポート陣がオンステージ。人間社会が収束に向かい、やがて誰もいなくなってしまった風景を描ききった『世界収束二一一六』の世界観と通底するフレーズのポエトリーリーディングを随所に挿入しつつ、《ここにはもう人類は居ないのだから》と粛然と歌われる“収束”から“季節は次々死んでいく”“タクシードライバー”と『世界収束二一一六』の楽曲を積極的に畳み掛けていく。抗い難い強烈なヴァイブを備えた秋田のヴォーカルは、荘厳なまでの最新作の世界観、紗幕＆舞台背後のスクリーンに映し出される映像クリエイター＝YKBXによる演出と渾然一体となって、ドラマチックな色彩感に満ちた音像の中で黙示録の如きヘヴィネスを放っている。

amazarashiの音楽にはいつも、人間の真実を残酷なまでに鮮やかに射抜くスリリングな覚醒感と、人間の／社会の禁忌に触れる背徳感が表裏一体のものとして存在している。それは取りも直さず、秋田の作る音楽が「正気を保つためには目を逸らし続けていたい真実」を真っ向から描こうとする覚悟に裏打ちされていることを物語っている。廃墟を吹き抜けるビル風を受けながら、地球に残る最後のひとりとして宇宙船を見送る場面を綴った“百年経ったら”。《君が生きてる町も／世界中どこだって誰かの墓場なんだ》という辛辣な言葉越しに、逆説的に人間と生命を慈しむ“花は誰かの死体に咲く”……「終わりゆく世界」を提示するという『世界収束二一一六』のコンセプト性が、この上なく鋭利かつダイナミックに1曲1曲解き放たれ、胸に突き刺さってくる。

“性善説”“雨男”“ラブソング”といった既発曲群を盛り込むことで、『世界収束二一一六』の物語の中に「それでも今日を生きる人間の営み」の温度感を漂わせていたこの日のアクト。「アルバムを作ってる時は本当に、『世界よ終われ』って思いながら作ってたんですけど……」と秋田が満場の観客に語りかける。「でも、全国行ってライヴして、キレイなものをいっぱいもらったんで――みんなにも、メンバーにも、スタッフのみなさんにも。また、青森に帰って、形にしたいと思います」。そんな言葉に、惜しみない拍手が舞台へと降り注いでいった。

そして終盤。人間が合理的と信じる選択の結果として「収束」へと向かう様を描く“多数決”、YKBXの珠玉の映像とともに「最後のひとりの命が消えゆく瞬間へのカウントダウン」の冷徹な場面をエモーショナルに歌い上げた“エンディングテーマ”……といった楽曲に続けて、amazarashiがこの日最後に披露した楽曲は“ライフイズビューティフル”だった。アルバムのラストナンバー“収束”で始まり、人生のエンドロールを“エンディングテーマ”で繰り広げた後になお、《見ろよもう朝日が昇ってきた　人生は美しい》とギリギリの希望を（走馬灯の如き儚さとともに）掲げてみせたこの日のアクトから、そして全細胞を震わせて絞り出すような熱唱から、秋田の切実な想いが伝わってきて、思わず胸が熱くなった。

10月には自身初のセンターステージ＆全方位客席スタイルのライヴ「amazarashi LIVE 360°」を開催するamazarashi。そこでは果たしてどんな世界が繰り広げられるのか。今から楽しみで仕方がない。（高橋智樹）

●セットリスト

01．収束
02．季節は次々死んでいく
03．タクシードライバー
04．性善説
05．雨男
06．ラブソング
07．スピードと摩擦
08．コンビニ傘
09．百年経ったら
10．花は誰かの死体に咲く
11．夏を待っていました
12．スターライト
13．しらふ
14．美しき思い出
15．多数決
16．エンディングテーマ
17．ライフイズビューティフル