TK from 凛として時雨@TOKYO DOME CITY HALL

TK from 凛として時雨@TOKYO DOME CITY HALL
破壊と構築が隣り合わせにあるような、緻密でカオティックなサウンドスケープ。ウィスパー・ヴォイスと絶唱を行き来しながら、祈りも絶望も同時に吐き出すTK from 凛として時雨(以下、TK)の歌声。それらが渾然一体となった音世界の奥深さと稀有さを、改めて痛感させられた夜だった。2ndミニアルバム『Secret Sensation』を引っ提げ、仙台/大阪/愛知/福岡を巡った全国ツアー「TK from 凛として時雨 TOUR 2016 ”Secret Sensation”」のファイナル公演。ソールドアウトのTOKYO DOME CITY HALLでは、新たな表現を手に入れたことで、その彩度と濃度を各段に高めたTKの歌と音がダイナミックに鳴りわたっていた。

暗転と同時にSEが鳴り響き、ステージを覆う沙幕越しにTK/BoBo(Dr)/大古晴菜(Piano)/佐藤帆乃佳(Violin)/TOKIE(B)の姿が照らし出された途端、フロアに大歓声が沸き起こる。鉱物的な手触りを持った電子音からスタートしたのは“subliminal”。ステージを覆ったままの沙幕に映像を投影しながらの演奏で、静と動の間を彷徨うメランコリックなサウンドが、会場を異空間へとワープさせていく。“flower”の途中で沙幕が上がると、5人のプレイヤーがありったけのエネルギーを放出する嵐のようなサウンドがスリリングに吹き荒れ、場内の高揚感はMAXへと到達した。
TK from 凛として時雨@TOKYO DOME CITY HALL
清冽なギターやエレピの音色が乱反射しながら聴き手の衝動を掻き立てる“Dramatic Slow Motion”。奇想天外なメロディが生み出す大きなうねりの中でTKの直情的な絶唱とギターリフが冴えわたる“Crazy Tampern”。リリースツアーといえど最新アルバムの収録曲は全5曲というわけで、この日はセットリストにふんだんに盛り込まれた過去曲もそれぞれ強烈な輝きを放っていた。

しかし、やはりハイライトとなったのは『Secret Sensation』の楽曲だろう。鮮烈なクラブサウンドとともに、かつてなくミニマルなアンサンブルとメロディアスな歌が届けられる“Secret Sensation”。ピアノの優美な旋律が彩りを添える中、重たいリズムの上で心の疼きや叫びをつぶさに表現していくような“ear+f”。どちらも硬質なエレクトリックサウンドが効果的に導入されており、何より感情をそのまま吐き出したようなシンプルな歌に心を揺さぶられる。昨年、凛として時雨が初の海外レコーディングを行った場所=ベルリンのハンザ・スタジオでレコーディングされた本作だが、こうした環境の変化がTKのソロの表現にも大きな化学反応をもたらしたのかもしれない。

そんな変化を経てのツアーだからこそ、過去の曲においてもそのメッセージ性がグッと増しているように感じたのは私だけだろうか。陽性なサウンドと退廃的な歌詞世界との対比が美しい“contrast”、TKひとりがステージに残りピアノ弾き語りで柔らかな歌を届けた“罪の宝石”、ギター/ピアノ/アップライト・ベースの3ピースで深海のような音世界を築いた“fragile”――優しく、しかし漫然とした闇を孕んだディープな楽曲を前にして、オーディエンスも身動きを忘れて聴き入るしかないといった具合だった。
TK from 凛として時雨@TOKYO DOME CITY HALL
壮大なメランコリアの世界が広がる“unravel”で再び轟音の中へ飛び込んだ後は、緻密に練り上げたアンサンブルで鮮烈なイメージを描き出すストイックな音像が炸裂。音と音が有機的に絡み合って濃密なグルーヴを形成する“phase to phrase”、眩い閃光を放ちながら感情のうねりの中を高速で駆け抜ける“Fantastic Magic”、モノクロームの世界の中でTKの痛烈な絶叫が響きわたる“film A moment”と畳み掛け、場内に大きな狂騒感を生み出したところで本編は幕を閉じた。
TK from 凛として時雨@TOKYO DOME CITY HALL
アンコールでは、「今までしたことないんですけど、初めてひとりずつメンバーを紹介します」とサポートメンバーをひとりずつ呼びこむTK。そして、凛として時雨“シャンディ”のセルフカバー“shandy”を5人編成のカラフルな音像で表現してみせた後、大ラスを飾ったのは最新アルバム収録曲の“like there is tomorrow”。≪いつもより強くなった僕は 誰の痛みも感じないんだ≫≪いつもより弱くなった僕は 初めて息をする様な≫というシビアな歌が穏やかなサウンドのもとで届けられるこの曲に、光と闇、理想と現実、快楽と戦慄といったコントラストを徹底的に突き詰めようとするTKの表現欲と才気を感じずにはいられなかった。(齋藤美穂)

●セットリスト
1. subliminal
2. flower
3. Dramatic Slow Motion
4. Crazy Tampern
5. Secret Sensation
6. ear+f
7. Abnormal trick
8. Kalei de scope
9. contrast
10.罪の宝石
11. fragile
12. unravel
13. phase to phrase
14. Fantastic Magic
15. film A moment
アンコール
16. shandy
17. like there is tomorrow
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