やはり、このバンドは別格である。昨年のサマーソニック以来となったモデスト・マウスの来日。単独ツアーとしては初となる。オープニング・アクトのOGRE YOU ASSHOLE(このバンド名はモデスト・マウスのエリックに腕に書いてもらった言葉から採ったといういわくつき)に続いて、登場したアイザック・ブロックはじめ6人のメンバー。ツイン・ドラムというかドラム+パーカッションのリズム隊が目を惹くが、実際サウンドの面でも、ふたりのドラマーが叩き出すリズムがこのバンドのダイナミズムの源泉となっている。もちろんアイザックのギターとヴォーカルが「顔」としてあるのは当然だが、ライヴにおけるモデスト・マウスは、それ以上に「バンド」としての迫力が桁違いなのだ。
ポップ・マーケットよりは酒場向きの、醸し出す雰囲気からいえば決して親しみやすいというわけではないこのバンド(というところが彼らの盟友であるシンズとは違うところかもしれない)が、どうしていつの間にかビルボードのチャートのトップに立ってしまうという事態になったのか。アイザックの歌は「怒り」とか「ニヒリズム」とかそういうネガティヴな感情が主原料になっているとしか思えないほどささくれ立っているし、そこで歌われる言葉も攻撃的で辛辣なものだ。しかしそんなモデスト・マウスの音楽が、ひとたび響き渡ればこの上なく強靭なポップ・ソングとして僕たちの耳に飛び込んでくるのである。それはたとえば、「僕たちは本当にすべてを知る必要があるのか?」と歌う“ダッシュボード”という曲が、ジョニー・マーのあのカッティングと裏打ちのダンス・ビートによってキャッチーなナンバーになってしまったようなマジックだ。そんな音のマジック、音の力ですべてをねじ伏せてしまうような説得力が、一音一音に宿っているのである。彼らは当たり前に演奏しているだけだろうが、その当たり前を当たり前にやってしまうバンドは、やはり別格なのである。これであとは観客の大合唱があれば完璧だ。みなさん、次に観に行くときは歌詞を一字一句覚えていきましょう。(小川智宏)
モデスト・マウス @ Duo Music Exchange
2008.04.10