スウェーデンの新世代ロックンロール・バンドから、ここ極東でも絶大にして安定した人気を誇る中堅バンドへ。実際、マンドゥ・ディアオのライブを観るたびに、その人気ぶりに目を見張る。今回はストリングスやブラスやアコースティック・サウンドを大胆に導入しシフト・チェンジを図った4枚目のアルバム『ネヴァー・シーン・ザ・ライト・オブ・デイ』を引っさげてのジャパン・ツアーなのだが、クアトロに入ると異様な熱気、バンドが出てくる前から「グスタフ〜っ!!!!!」と黄色い歓声が飛んでおります。まあ、メロディよし、声よし、ルックスよしなのだから当然なのかもしれないが。
マンドゥ・ディアオといえばやはりグスタフ&ビョルンのツイン・ヴォーカルがギターをかき鳴らしながら1本のマイクに顔寄せ合って歌うという、絵に描いたようなロックンロール・バンドのイメージが強いのだが、『ネヴァー・シーン・ザ・ライト・オブ・デイ』は上記のとおり、そんな「いまにも壊れそうなガレージ・ロック爆走列車」というマンドゥ・ディアオ像をよくも悪くも覆す「問題作」で、個人的にはモヤモヤしたものを感じてもいたのだが、ライブを観るとこれが間違っていなかったことを確認できた。バンドの5人にくわえてパーカッション&ブラス要員を2名配置、キーボーディストのマッツの傍らにははオルガンも置かれ、『ネヴァー・シーン〜』以降のモードがそんなセッティングにも如実に表れている。そして、それらの円やかな音色がまた、しっくりとはまるのだ。なぜか。マンドゥ・ディアオのロックンロールはすごく素直だ。メロディもコード進行も、マナーどおりに作られている。そこにオルガンやラッパが載るとどうなるか。切っ先鋭いガレージ・ロックはその瞬間、カラフルきわまりないギター・ポップへと姿を変えるのである。
もちろんグスタフはいつもどおりがなりまくりだし、ビョルンもギターを掲げて観客を鼓舞している。バンドのパフォーマンス自体はそう大きく変わっていないのに、たとえば“ロング・ビフォア・ロックンロール”が、「ラーラーラー」というリフレインをトランペットに任せてしまうだけでこんなにもふくよかな表情をもつ楽曲に変わる。それはじつに新鮮な驚きだった。その“ロング・ビフォア”で本編を終え、アンコールの最後には1st収録のアンセム“シープドッグ”、という構成もやはりいつもどおりのマンドゥ・ディアオだったが、確実に次のフェーズへと歩を進める彼らが頼もしく見えた。(小川智宏)
マンドゥ・ディアオ @ 渋谷クラブクアトロ
2008.04.17