イギリスはロンドン北部セント・アルバンス出身の3人組、フレンドリー・ファイアーズ。日本デビュー前にして、昨年末に発表した“パリス”が、アンセムとして各地のフロアを盛り上げまくっていた、という状況もあったため、今夏のサマーソニックのステージも盛況。その後の9月に発売された1stアルバムを携えての初単独来日公演となる。
で、これが見事「大満足!」なライブだったのだ。一連のニュー・レイヴの新人勢の中でも、群を抜く“ポップ”さがある彼らだけど、見事にその魅力が弾けていた。
まず、フロントマン=エドの動きがヤバイ! 腰をうねうねさせながら、!!!のニックなんかを連想させる痙攣ステップを踏む。どうやったらあんな風に腰をくねらせられるんだろう。ベリーダンサーばりの柔軟性には目を奪われること必至だ。そして、バンドのビートを場内の誰よりも満喫してるんじゃないか、というぐらい動き回る。でも、そこがすごく信用できる。このバンドは、まず誰よりも自分達が生み出したビートの力を、自分達がちゃんと信じているのだ。
そして何よりも、ダンス・ミュージックとして“機能”する演奏をしてくれるところが痛快。ドラム、ベース、ギターのメンバーそれぞれが、ザ・ラプチャーやDFAに通じる肉感的なファンクネスを体得していて、演奏のところどころにメリハリを効かせている。つまりは、テクニックがあってもセンスがなきゃできない、ダンス・ミュージックの勘どころをきちっとおさえた演奏をしてくれるのだ。
とはいえ、ビートが過剰に粘りっこく官能的になりすぎることもなく、イギリス発のバンドだけあって、あくまでポップで軽快なのだ。この塩梅が、日本でロック・ファンをやっている自分のビート感覚にしっくりときたのだけど、そういう人は少なくないと思う。
“ジャンプ・イン・ザ・プール”“ストロボ”そして“パリス”などなど、楽曲には胸キュン・メロディが満載。ここまで衒いなくポップでキャッチーな曲で場内が一体となって飛び跳ね続ける全力疾走感のあるライブ、って実は新世代ダンス・バンドのライブでは久々。ダンス・ミュージックとは、日常のサバイバル・ミュージックにほかならないと思っているけど、近年は“平熱感”が一つのキーワードになっているから、こんなに場内中が多幸感で包まれるライブも久々だな、と。
だけど、そこに能天気さは微塵も感じさせない。もともとハードコア・バンドをやっていた面々である。ヒリヒリした苛立ちや焦燥感をそのまま表出させるのではなく、「ポップ」に昇華させた方が、その本質を、より多くの人に届けることができる、と確信したのだろう。またそのスタイルの方が自分たちに合っているとも。
ちなみに、アンコールでは、2ndEPのBサイド収録というレア・トラックも披露してくれました。(森田美喜子)