1.Forever Love
2.Tears
3.Kiss the Sky
4.[HEATH Bass Solo]
5.[PATA Guitar Solo]
6.DRAIN
7.[SUGIZO Violin Solo]
8.Silent Jealousy
9.[Largo]
10.[YOSHIKI Piano Solo / Swan Lake]
11.Miracle(w/ Ashley Knight)
12.La Venus
13.HERO
14.X
15.Without You
16.紅
17.ART OF LIFE
(Encore 1)
18.Say Anything
19.[PATA Guitar Solo / White Wind From Mr. Martin ~Pata's Nap~]
20.WEEK END
(Encore 2)
21.WORLD ANTHEM
22.I.V.
23.Crucify My Love/Voiceless Screaming
24.Longing~跡切れたmelody~
25.ENDLESS RAIN
ひと言ひと言、噛みしめるように語りかけるYOSHIKI(Dr・Piano)の告白に、満場の観客が息を殺して聞き入っている。
「でもその時、まだ自分の達成してないものがある、自分が立ち向かわなければいけないものがある――まだ世界の壁を壊してない。まだ死ねない、死にたくない、もっと生きたい……僕は自殺願望が強かったんです、父親を自殺で亡くしてるから。でも、本当に今回、たぶん初めてかな? 『生きたい』って思って」
その音楽自体はもちろんのこと、波乱万丈の道程を歩んできたX JAPANというバンドが今ここに存在してステージに立っていることも含め、すべてが紛れもなく奇跡そのものである――ということを、この場にいた誰もが感じたに違いない。
PATA(G)の入院によって延期となっていた英ウェンブリーアリーナ公演は今年3月に大成功のうちに終了。ドキュメンタリー映画『WE ARE X』のヒットを記念したワールドツアー「X JAPAN WORLD TOUR 2017 WE ARE X」の第一弾として、大阪城ホール&横浜アリーナを舞台に日本凱旋ツアー敢行――という最高のタイミングでアナウンスされたのは、激しいドラミングで長年首を酷使し続けたYOSHIKIの頸椎椎間孔狭窄症による緊急手術と、それに伴いツアー自体が「X JAPAN WORLD TOUR 2017 WE ARE X Acoustic Special Miracle〜奇跡の夜〜6DAYS」と題されたドラムレスのアコースティックライブに変更される、という重大発表だった。
しかし、「奇跡の夜」6DAYSのファイナルとなる横浜アリーナ最終日、2回のアンコールを含め実にトータル3時間45分に及んだこの日のアクトは、どんな困難も乗り越えて前進し続けるYOSHIKIらメンバーの不屈の決意と、X JAPANという運命共同体の揺るぎない絆の強さを厳然と物語っていた。
ギター曲でも楽曲ごとにToshl・PATA・SUGIZOのトリプルアコギ編成/Toshl&PATAアコギ+SUGIZOヴァイオリン/PATA&SUGIZOエレキギター、と編成を変えたり、曲によってはYOSHIKI&Toshl+ストリングス編成で透徹したサウンドスケープを編み上げたり……といった具合に、あの爆裂ドラミングが展開できないという今回のシチュエーションを、新たな音楽的トライアルへのステップとして個々のメンバーが捉えていることが、その演奏からも明確に伝わってきた。
ライブ後半には、今年1月のYOSHIKIカーネギーホール公演で共演したオペラ歌手:アシュリー・ナイトを舞台に招いて“Miracle”を披露する一幕も。ロックの枠組みを超えたそんな演出も、今回のような特別なライブならではのものだ。
「何が奇跡ってさ、今日オンタイムで始まったんだよ!」というYOSHIKIの言葉に客席が沸いたり、「何十年もやってるけど、Toshlの歌って心に沁みるんですよ」と語るYOSHIKIに「それはでも、いい楽曲があってこそだからね」とToshlが答えるシーンがバンドの結束を強く感じさせたり、「奇跡は待ってるものじゃなくて、起こすものだから」とこの「奇跡の夜」への想いをYOSHIKIが宣誓したり、といった名場面が序盤から次々に飛び出したこの日のアクト。
バンド解散時の確執も含め『WE ARE X』の映像に焼き付けられたスリリングな歴史を目の当たりにしてきている我々にとって、今の彼らから滲むお互いへの信頼感は、それ自体が紛れもない「奇跡」でもあった。
途中、「リクエストコーナー」として観客の聴きたい楽曲を募った結果、YOSHIKIが選んだ楽曲は“X”。アコースティックライブとは思えないほどのXジャンプが、客席を激しく揺さぶっていった。
そんな中、HIDEのギタートラックとともに響かせた“DRAIN”、SUGIZOがヴァイオリンソロで奏でた“ピンクスパイダー”など、HIDEの存在を感じさせる場面も随所にフィーチャーされていた。
そして、この日:7月17日はTAIJIの命日。「親愛なるTAIJI、親愛なるHIDEに捧げたいと思います」(YOSHIKI)と披露された“Without You”が、横浜アリーナを抑え難い感動と感傷で包んでいった。
熱いシンガロングが沸き起こった“紅”、さらに“ART OF LIFE”の美しい音像で本編を締め括った後、アンコールではYOSHIKI不在のまま4人のアコースティックスタイルで“Say Anything”、さらにPATAソロ演奏を挟んで“WEEK END”へ、となおも会場の熱気を高めていく。
さらに、Wアンコールの“I.V.”では、普段のライブではYOSHIKIが号令をかけている「WE ARE」「X!」のコール&レスポンスを(YOSHIKIの耳打ちを受けながら)SUGIZO→HEATH→PATAとリレーしてみせる。
手術からわずか2ヶ月、ステージに立っているのが不思議なくらいのYOSHIKIの体を気遣ってのことだろう――と思っていたら、その直後に「天国のTAIJIにも、天国のHIDEにも、お前らの声聞かしてやれ!」と自ら「WE ARE」「X!」コールを声を枯らしながら突き上げていく。
ピアノ台を降り、ステージから袖の客席へ直接続く通路をファンの方へ歩み寄りながら、湧き上がる感情に声を震わせつつ叫ぶYOSHIKI。ピアノの上に身を投げ出し、「腹から声出せ!」と全精力を振り絞る姿に、満場のオーディエンスも怒濤のレスポンスで応えていた。
「ドラマーの僕がドラムを叩かずにコンサートをやるなんて、あり得ないはずなのに……みんなのおかげで、このコンサートを実現することができました」
こらえきれない涙とともに、声にならない声で感謝の言葉を伝えるYOSHIKI。最後の“ENDLESS RAIN”が雄大な音風景を編み上げて――「奇跡の夜」は幕を閉じた。メンバーが舞台を去った後、ひとり残ったYOSHIKIの「愛してるぜぇーっ!!!!」の絶叫が、最高の一夜の余韻とともに胸に深く刻まれた。(高橋智樹)
終演後ブログ