「ひきこもりでもLIVEがしたい!〜明日色ワールドエンド発売記念公演〜」/幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール

「ひきこもりでもLIVEがしたい!〜明日色ワールドエンド発売記念公演〜」/幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール - まふまふ All photo by 小松陽祐(ODD JOB)、坂口正光、小境勝巳まふまふ All photo by 小松陽祐(ODD JOB)、坂口正光、小境勝巳
「自分は冷酷だと思っていたけど、感極まってしまいました」。
まふまふが主催する「ひきこもりでもLIVEがしたい!~明日色ワールドエンド発売記念公演~」3月20日初日。まふまふは、この日をやっと迎られたことについて感慨深く語っていた。
幕張メッセ国際展示場9~11ホールという大きな会場で、それも2デイズ開催。この規模感だけ見たら、どんな大物アーティストなのかと思う。
まふまふというマルチクリエイター。Twitterのフォロワーは130万人をゆうに超え、投稿する「歌ってみた」やオリジナル曲の動画は、たちまち再生数を伸ばし、他アーティストにも楽曲を提供している。

昨年10月にリリースしたアルバム『明日色ワールドエンド』のリリース記念として開催された今回の公演。同アルバムは、日本レコード協会が定める「ゴールドディスク」にも認定された。
そんなまふまふが、いちシンガーとして、ミュージシャンとして、イベンターとして、妥協することなく作られた世界観が、このライブにはあふれていた。

「ひきこもりでもLIVEがしたい!〜明日色ワールドエンド発売記念公演〜」/幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール - まふまふまふまふ
「ひきこもりでもLIVEがしたい!〜明日色ワールドエンド発売記念公演〜」/幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール
会場が暗転し、アルバム『明日色ワールドエンド』より1曲目のインスト曲“[Nexus]”が流れると、待ちに待ったという観客の歓声が、幕張メッセに響きわたる。
スクリーンが3つ配置され、真ん中の一番大きなスクリーンの前の、ひときわ高い位置に登場したまふまふ。アルバムのリード曲“輪廻転生”が始まる。
アッパーで早いビートの強い曲をいきなりぶつけてくるところに、今回のライブの意気込みと、強い気持ちが感じられ、ヒリヒリするほど。そして花火の特効から“立ち入り禁止”へと、アルバムの順番で披露される。
「ひきこもりでもLIVEがしたい!〜明日色ワールドエンド発売記念公演〜」/幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール
「ひきこもりでもLIVEがしたい!〜明日色ワールドエンド発売記念公演〜」/幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール
「ひきこもりでもLIVEがしたい!〜明日色ワールドエンド発売記念公演〜」/幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール - まふまふまふまふ
さらに間髪入れずに、イントロから独特な雰囲気を醸し出すEDM調の“フューリー”では、横に長く伸びたステージを端から端まで移動。ステージの端に向かうだけで、付近の観客から悲鳴に似た歓声が上がり、本当は揶揄する意味だと思うが、この曲の歌詞にある《カリスマ》さながらのカリスマ感を魅せていた。
そして、魔法使いの様な杖を振り回したかと思えば、それに呼応するように炎が上がる演出で始まった“悪魔の証明”。さらにまふまふが手を上げれば、炎の方が応えて吹き出すようなさまは、まるで本物の悪魔であるかのようだった。
「ひきこもりでもLIVEがしたい!〜明日色ワールドエンド発売記念公演〜」/幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール
「ひきこもりでもLIVEがしたい!〜明日色ワールドエンド発売記念公演〜」/幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール

まふまふの英詞から、「カモンnqrse!」と呼び込み、1組目のゲスト、nqrseがラップをしながら登場。レーザーが飛び交う中、ふたりでのお馴染みの曲“ECHO”。そして、「新曲を持ってきました」と、照明がピンクに変わり、“Necter”が披露される。優しい曲だが、ここまで強い楽曲が続いていたからか、余計に温かみを感じる曲だった。
「ひきこもりでもLIVEがしたい!〜明日色ワールドエンド発売記念公演〜」/幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール - まふまふ×nqrseまふまふ×nqrse
最初のMCで、「ボクのシンガーとしての側面、そして作曲をする人間として、いろんなシンガーを招いて自分の曲を奏でたり、イベンターとしてイベント全体を作ったり」……と、このライブをここまで手塩にかけて作ってきたことを語る。そして「遠くの人、かなり見えづらいと思うんですけど、遠くの人まで届くようにやるので」と、後ろの席の観客を気にかけたり、花道を作って、できるだけ会場の隅々まで届けるように思案したことが窺えた。
また、nqrseとの新曲についても語り、「雰囲気が違くてギョッとしたよねみんな(笑)」と“ECHO”とのギャップに苦笑しつつも「いい感じでした!(笑)」と括ると、会場からは歓声が上がる。

「ひきこもりでもLIVEがしたい!〜明日色ワールドエンド発売記念公演〜」/幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール
「ひきこもりでもLIVEがしたい!〜明日色ワールドエンド発売記念公演〜」/幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール
続いて、「ロックな暗い曲が多かったけど」と、小休止とのことで、2月に投稿されたバラードの新曲“朧月”。まふまふが言うように、ここまで叫ぶような曲が多かったが、一転、しっとりと優しく歌い上げる。ステージ上には、可動式の菱形の3つのスクリーンが降りてきて、その1つに満月が映し出されていた。彼の曲は和風のものも多いが、和楽器とエレキギターがこんなにも合うものかと改めて思わされる。その流れのまま曲の最後に「ありがとう」と囁く。

「ひきこもりでもLIVEがしたい!〜明日色ワールドエンド発売記念公演〜」/幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール - まふまふまふまふ
「ひきこもりでもLIVEがしたい!〜明日色ワールドエンド発売記念公演〜」/幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール - まふまふ×浦島坂田船まふまふ×浦島坂田船
バンドセッションの後、平安装束の狩衣のような衣装をまとい、ギターを持って登場、ヘヴィロックな“[Anonymous]”を演奏する。そしてゲスト2組目、浦島坂田船の4人が登場し、まふまふが作詞作曲を務めた“花鳥風月”へ。4人は、ギターに徹するまふまふを中心にダンス。そして、つい前日に投稿された、こちらもまふまふによる新曲“年に一夜の恋模様”が披露される。まふまふが「4人がキラキラ輝けて、ライブでお客さんと一緒に楽しく歌えるようなものになっていたら嬉しいです!」とTwitterでコメントしていたように、投稿して1日しか経っていない曲にもかかわらず、このキラキラした曲と輝く4人+1人が花道の先端で肩を組んで歌う姿に、観客は歓喜の声を上げていた。

「ひきこもりでもLIVEがしたい!〜明日色ワールドエンド発売記念公演〜」/幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール - そらるそらる
3組目のゲスト、そらるが登場し、ふたりのユニット・After the Rainの楽曲“セカイシックに少年少女”が始まるが、まふまふは涙で声を詰まらせ歌えなくなってしまう。必死に息を整えて歌おうとするまふまふ。最後のハモリは完璧に揃えたが、花道を戻る最中、そらるがまふまふの肩をそっと叩くのが見えた。
そらるが先日まで活動を休止していたこともあり、「こういう景色がまた見られると思ってなかった」と、また涙ぐむまふまふ。そらるは、まふまふに「いろんな心配や気苦労をかけたと思う。ありがとう」、そして観客全員に向けて感謝の気持ちを述べる。そして今回のライブを成し遂げたまふまふへ、相方として労いの言葉をかけるさまは、ふたりの信頼関係を表しているようだった。

そして、苦難を乗り越えてひとつ大人になったふたりで作った、今月上旬に投稿されたAfter the Rainの新曲“夕立ち”。これまでのAtRの世界観とは一線を画すようなこの曲は、しっかりとふたりの歌声と想いが乗せられ、「雨降って地固まる」の如く、AtRの新境地とも言える楽曲となった。
そのまま、まふまふはギターを演奏し、そらるによるまふまふの新ボカロ曲“メリーバッドエンド”。世の中への批判の曲だが、丁寧な、それでいて説得力がこめられた歌声が不思議とマッチして聴き心地が好いのは、そらるという歌い手の特徴だろう。

「ひきこもりでもLIVEがしたい!〜明日色ワールドエンド発売記念公演〜」/幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール - 天月-あまつき-天月-あまつき-
「僕とも遊ぼう幕張!」と登場したのは、4組目のゲスト、天月-あまつき-。まふまふによる書き下ろし曲“ミカヅキリサイズ”で、まふまふはより一層激しくギターをかき鳴らす。
天月は、「この日のために彼が想いを込めて走り続けてきたのを、間近で見れて嬉しい」と、普段から仲の良いふたりだからこそ、相談し合ったり、天月自身もライブを重ねているから、わかりあえる部分があるのだろう。それもあり、ふたりの空気はより砕けていて、和気あいあいとしていて、まふまふもリラックスできたようだった。
そしてこのふたりのコラボといえばもはや定番の“ロメオ”へ。イントロが流れると同時に、この大人気曲には観客もひときわ大きな歓声を上げる。こちらもお馴染みとなった、跪いての《さあおいで》にも割れんばかりの黄色い歓声で幕張メッセがパンパンになる。

「ひきこもりでもLIVEがしたい!〜明日色ワールドエンド発売記念公演〜」/幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール - まふまふまふまふ
再びバンドセッションを挟み、薄い羽衣のような衣装をまとって、花道の先端ステージに登場。「歌ってみた」も投稿している、Neruによる“病名は愛だった”が、哀しくも切なく、そして寂しげな歌声で披露される。上からステージ上に降りてきたたくさんの電球が、浮いているようにまふまふの周りで赤と白と、曲にあわせて生き物のように揺れ動くのが、まるで赤血球と白血球が流れているように見えた。

スタンドマイクが設置され、先日手に入れたという白いテレキャスター「冬桜」を背負う。白と水色の羽衣のような衣装と、白いギターがよくマッチする装いで“ふたりぼっち”を、一言一言歌詞を伝えるように歌う。そしてそのまま“恋と微炭酸ソーダ”では、“病名は愛だった”で赤と白だった電球が、水色と白で、まるで炭酸の泡のように弾むように動く。まふまふも、楽しむように会場を見回しているのが、なんだかとても印象に残った。

MCでは、序盤でまふまふが火を操ったように見えた魔法の杖(?)の種明かし。実は先端に360°カメラが付いているとのことで、無邪気に会場に杖を向ける。そして「次の曲はペンライトをいっぱい点けて」、「その次の曲は消して」、「そうすると何か綺麗なことがあるかも」と、また何か演出の仕掛けがあることを示唆する。
「ひきこもりでもLIVEがしたい!〜明日色ワールドエンド発売記念公演〜」/幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール
そうして始まった“眠れる森のシンデレラ”では、観客は言われた通り、カラフルな色のペンライトをたくさん点ける。まふまふは歌いながら、要所要所でお客さんをしっかり見て、心に刻んでいるようだった。
「すっごい綺麗だよ。ありがとう」の言葉で曲が終わった後、また言われたとおりペンライトが一斉に消えると、会場の壁一面に星の海が! ペンライトの光がないからより鮮明に見えるのは、都会では星が見えづらいけれど郊外に出ればよく見える、それの如し。まるで会場全体が銀河の中にあるように思えた“水彩銀河のクロニクル”では、その星の海の中で、まふまふは、3拍子に合わせて舞うように歌っていた。

「ひきこもりでもLIVEがしたい!〜明日色ワールドエンド発売記念公演〜」/幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール
アンコールでは、オールキャストが猫耳を付けて登場。“すーぱーぬこになりたい”を全員で歌うとともに、大きな風船が観客の頭上を転がる。
天月は「ここまで彼が頑張ってきた軌跡を一緒に輝かせることができて嬉しかった」、またそらるは「夢みたいな景色を見れた」、浦島坂田船・あほの坂田は「この景色を見て改めて思った……君はすごいやつだ」など、各出演者から労いと感謝の言葉がかけられた。

「ボクが書き下ろした曲を、自分の胸張って言える友達たちにやってもらえる舞台。それは自分の多面性というか、ある一面を見せられるところ。そういう機会をいただけるのは、ボクの誘いに嫌な顔ひとつせず『もちろんやるよ』と答えてくれた友達たちのおかげです。この舞台はボクがひとりでやったのではなく、来てくれた人たち、支えてくれた人たちとスタッフさん方と……みんなによる舞台に、ボクが立たせていただいてると、そう思っております」
「こういう場で泣くキャラクターじゃないんですよ。もっとロボットのような人間だと思っていたんですけど……感極まってしまいました。人生を通して、友達だと言える人が数人でもいるだけで、それはすごく救われることだなと思いました。After the Rainは紆余曲折ありましたが、みんなの声と、ボクらの頑張ろうと思えた気持ちと、いろいろなもので無事再会でき……こんな大舞台を目にできるとは思っていませんでしたから、本当に嬉しいなと思います」
まふまふの、ぎこちないけれど伝えたい感謝の想い、そしてここまで必ずしも思い通りにはいかなかっただろうけど、それでも妥協せずに今回の舞台を作り上げた、その強い想いが伝わってきた。

「ひきこもりでもLIVEがしたい!〜明日色ワールドエンド発売記念公演〜」/幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール - まふまふまふまふ
「ひきこもりでもLIVEがしたい!〜明日色ワールドエンド発売記念公演〜」/幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール - まふまふまふまふ
厳かな雰囲気に包まれた“終点”では、3つの菱形のスクリーンが降りてきて、右向き・正面・左向きと、もう一人のまふまふの顔が映し出され、まふまふがステージを歩くのに合わせて、そのスクリーンのまふまふも移動。普段は顔出しをしていないが、スクリーンに大きく自分の顔を映し、自身はその後ろに隠れるという演出が、この楽曲の本質を見せているようだった。

最後の最後の曲“夢のまた夢”で、まふまふはトロッコに乗って登場。客の中を練り歩くさまは、まるで白いペンライトの草原の上を歩いているよう。冒頭、会場の後ろの方が見えづらいことを気にしていたが、こうやって後ろの方までまわってくる演出を用意していたりと、本当にお客さんを気遣っていることがひしひしと伝わってくる。思えば、本編後半もほぼ花道の先端ステージ=会場のほぼ中央でずっとパフォーマンスしていたのも、少しでも平等にお客さんの近くに行こうという心遣いからだろう。
「ひきこもりでもLIVEがしたい!〜明日色ワールドエンド発売記念公演〜」/幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール
最後に「またね」と言って去ったまふまふ。それは静かに、確信めいたものがある、確固たる決意を持ったものに聞こえた。
実際、昨年には自身のワンマンツアーファイナルで、幕張メッセイベントホールでの公演を成功させている。今回は、ゲストを呼びながらも、そこからさらに大きな会場での2デイズ。また昨年5月には、同じくゲストを呼びながら「ひきこもりたちでもフェスがしたい!」と題し、さいたまスーパーアリーナでさらに大規模な公演も、大成功を収めた実績がある。
「シンガー」、「ミュージシャン」として、そして「イベンター」として、常に最先端を追求する姿勢――最近は、ネット発のアーティストは珍しくなくなってきたが、それでもきっと、未だ偏見の目などは、知り得もしないところで存在するのだろう。しかし、それを弾き飛ばすように、彼らの世界はどんどん広がりを見せ、そしてぐんぐん先へ進んで行く。
そんな、まふまふというマルチクリエイターの底知れぬ才能と、それを実現しようと粉骨砕身する姿勢――それすら才能だと思うが――に圧倒されるのと同時に、無限の可能性を感じた、そんなライブだった。(中川志織)
「ひきこもりでもLIVEがしたい!〜明日色ワールドエンド発売記念公演〜」/幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール


●セットリスト
 [Nexus]
1. 輪廻転生  まふまふ(Vo)
2. 立ち入り禁止  まふまふ(Vo)
3. フューリー  まふまふ(Vo)
4. 悪魔の証明  まふまふ(Vo)
5. ECHO  まふまふ(Vo) / nqrse(Vo)
6. Necter  まふまふ(Vo) / nqrse(Vo)
7. 朧月  まふまふ(Vo)
ーまふまふ Band Session「皐月雨」ー
 [Anonymous]  まふまふ(G)
8. 花鳥風月  浦島坂田船(Vo) / まふまふ(G)
9. 年に一夜の恋模様  浦島坂田船(Vo) / まふまふ(G)
10. セカイシックに少年少女  そらる(Vo) / まふまふ(Vo)
11. 夕立ち  そらる(Vo) / まふまふ(Vo)
12. メリーバッドエンド  そらる(Vo) / まふまふ(G)
13. ミカヅキリサイズ  天月(Vo) / まふまふ(G)
14. ロメオ  天月(Vo) / まふまふ(Vo)
ーまふまふ Band Session「byakuya」ー
15. 病名は愛だった  まふまふ(Vo)
16. ふたりぼっち  まふまふ(Vo/G)
17. 恋と微炭酸ソーダ  まふまふ(Vo/G)
18. 眠れる森のシンデレラ  まふまふ(Vo)
19. 水彩銀河のクロニクル  まふまふ(Vo)
(アンコール)
EN1. すーぱーぬこになりたい  ALL CAST
EN2. 終点  まふまふ(Vo)
EN3. 夢のまた夢  まふまふ(Vo)
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