04 Limited Sazabysが主催する「YON FES 2018」が4月7・8日に開催された。駆け足になってしまうが、以下のテキストでは2日目(4/8)の模様を振り返っていこうと思う。
初日同様、フォーリミによる前説を経て2日目もスタート。SKY STAGEのトップバッターは、2年連続出演となるフレデリックだ。昨年彼らはフォーリミ・GEN(B・Vo)の好きな曲としてインディーズ時代の楽曲“峠の幽霊”を披露したが、今年は「GENちゃんが『俺この曲一番好きだよ』と言ってくれた」とし、“たりないeye”を演奏。さらに新曲“シンセンス”も解禁した。全体的に1年間での成長をアピールするようなステージになっていたが、それは回を重ねるごとに進化する「YON FES」にリスペクトを表してのことだろう。“TOGENKYO”演奏時には日照り雨になり、趣深い光景が生まれた。
LAND STAGEのDATSは「みなさん、俺たちと一緒にバイブス上げませんか?」(杉本亘/Vo)と、オーディエンスの手拍子をその場で録音・演奏で使用する演出をしたり、観客の一人をステージに上げてセッションしたり、自分たちの音を録音する際に楽器を高く掲げて見せるようにしていたりと、バンドのやり方を分かりやすく示していた印象。ギター、ベース、ドラムの他、シンセやサンプリングパッド、ループマシーンを用いる彼らのサウンドは現代的。ゆえにクールな人たちだと思われがちかもしれないが、バンド側からオーディエンスの方へ歩み寄るようなライブからは彼らの温かな人柄が窺えた。
一方Crossfaithは、「俺たちはいい感じに盛り上げることはできない。やるかやられるか、100か0か」(Koie/Vo)と轟音を炸裂させる。台風のようにバカでかいサークルが発生すれば、メンバーが覗き込むようにしてその様子を確かめ、刺激的な音を上塗りする。Koieが挑発的にフィールドを二つに分けるしぐさをすれば、ウォールオブデスが勃発し、ステージ上では酒の瓶が回し飲みされる。真昼の野外とは思えない景色の渦中、中盤にはKoieが「『YON FES』は俺たち同世代にとってめちゃくちゃ大切なフェスティバル」と熱い想いを語る場面もあった。
その直後、「サウンドチェック始まるよ、おいで~!」とひろせひろせ(Key)の明るい声が聞こえてくるのだから今年の「YON FES」は振れ幅がものすごい。ということで、続いてはLAND STAGEに神泉系バンド・フレンズの登場。最初に“夜にダンス”を自己紹介のように届け、“Hello New Me!”ではフォーリミのHIROKAZ(G)とRYU-TA(G・Cho)をゲストに呼び込んだ。ポップで甘酸っぱいサウンドを弾ませながら、お揃いの振り付けや一風変わったコール&レスポンスを用いてオーディエンスの視線を軽快に掻っ攫っていく。
出演者名のアナウンス後、食い気味に一発鳴らし、My Hair is Badがライブをスタート。「Crossfaithが100%って言ってたので150%出してもらっていいですか⁉」(椎木 知仁/G・Vo)とアッパーチューンを絶え間なく演奏していく。渇望感を露わにしたかのような展開が続くなか、“元彼氏として”では疾走感溢れるサウンドに紛れて椎木が「この曲オガリュウさん(RYU-TA)が好きなんだよ! あの人絶対何かあったよね!」と暴露。オーディエンスの表情が和らいだものの一転、“フロムナウオン”では「本物のロックバンド」に対する考えを叫び、会場をグッと引き込んだ。
LAND STAGEには今年初出演のCOUNTRY YARD。どこまでも瑞々しいサウンドには仲間と鳴らせることに対する純粋な喜びを。まっすぐに芯の貫かれた歌声には誇りと確信を。パワフルに走り回る上物とそれをグッと引き締めるビートとの関係性には絆と信頼を。「いろいろな人に初めましてを言わなきゃいけないけど、言葉で言うよりも、大好きなメンバーと鳴らして音で初めましてと言いたいです」(Hayato Mochizuki/Vo・G)というその言葉に嘘偽りなし。多くを語らず、そのすべてを音楽に託していくサマが爽快だった。
「『時間は押さないでください』……よっしゃ押すぞー!」、「『モリコロパークを壊さないでください』だって! 意味分かるよね⁉」とGEN直筆の手紙を起爆剤に替えたのはマキシマム ザ ホルモン。初日のORANGE RANGEがどの世代にも通じるようなヒット曲を持つバンドならば、ホルモンの方はライブキッズを問答無用で興奮させるキラーチューンを数多く持つバンドと言ったところだろうか。“恋のメガラバ”、“「F」”と続けた冒頭からオーディエンスを一気に熱狂させ、泣く子も黙る轟音と超絶技巧をぶち込んでいく姿は圧巻の一言。やはり20年は伊達じゃない。因みに彼らのステージはオンタイムで終了した。
LAND STAGEのBiSHは冒頭にアッパーチューンを4曲続ける攻めのセットリスト。「YON FES」にアイドルが出演するのは初めてであるため、おそらく彼女たち自身もアウェイになることを予測していたのだろう。しかし1曲目から曲中の振り付けを真似る人が多く、どうやら楽曲の浸透率は高そうだ。また、「最後に一緒に踊ろうぜー!」(セントチヒロ・チッチ)とラストに披露したのが1曲目と同じ“BiSH-星が瞬く夜に-”だったのは、初見のオーディエンスとも一緒に楽しみたいという気持ちの表れだろう。終盤にはフォーリミ・RYU-TA(振り付け完璧!)が登場するサプライズもあった。
前日に台湾でライブをし、その足で駆けつけたHEY-SMITH。裏打ちのビートでオーディエンスの足取りを軽くさせ、ブラス隊のソロ回しで歓声を巻き起こし、終盤にはCrossfaith・Koieも乱入。これはもうハイにならずにいられないでしょう、と言わざるをえないパーティータイムが瞬く間に生まれていく。「(フォーリミとは)昔から小さいライブハウスで対バンしてて、それがこんなにテッカい会場でさ! バンドって夢があるね! 悔しい思いの近くには希望とか自由があるから、お前らも絶対に見逃さないでくれ!」という猪狩秀平(G・Vo)の情熱溢れるMCにもグッときた。
そしてLAND STAGEのトリを務めたのはENTH。曲の中で何度も場面転換を重ねる楽曲群を瑞々しく弾けさせる、次世代メロディックパンクの響き。1年目にも出演したENTHはフォーリミにとって名古屋の後輩だが、「全バンドのバトンを、って言うのはおこがましいけど思いっきりENTHの音楽をぶつけられたら」(daipon/Vo・B)という言葉や堂々としたステージは、彼らが地元の後輩的な立ち位置などとっくに越えていることを証明していた。ラストにはオーディエンスとともに“ムーンレイカー”を歌い、フォーリミにバトンを渡す。
「YON FES 2018」もいよいよ閉幕へ。大トリを飾る04 Limited Sazabysは、オーディエンスの手拍子に迎えられる形で登場した。ビビッドな照明が映えるようになった時間帯に、夕闇の下で鳴くギターフレーズ。まっすぐ突き抜けるようなビート。空へ高く飛んでいくハイトーンボイス。GENは「カッコいいバンド出すぎで『このあと出るのか』っていうプレッシャーがあった」と話していたが、メンバーがカメラに向かってふざけてみせるほどステージ上はほどよくリラックスしている。オーディエンスの反応ももちろん上々で、1曲目“fiction”が終わるや否や、RYU-TAが「スゲー!スゲー!」と目を輝かせていたのも印象的だった。コール&レスポンスからの“Chicken race”、KOUHEI(Dr)のビートとオーディエンスの手拍子に導かれた“labyrinth”、HIROKAZ初めてのタイトルコールを経て突入した“swim”と続け、“milk”の温かな響きへと繋げていく。
「(YON FESは)大切なことを思い出させてくれる場所だと思いました。この居場所を守ってくれてありがとうございます。このイベントがあり続ける限り、何か見失いそうになっても戻ってこれる。そんな場所だと思いました」(GEN)。フォーリミはいつも「YON FES」の来場者もこのフェスを担う大事な当事者なのだということを伝えているが、この日はこんな形で集まった人々への感謝を伝えていた。
さらに「最近自分が何になりたいかよく考えるんだけど、ヒーローになりたいなって思って。名古屋のみんなにとってバンドを始めたくなるようなヒーロー。なれてる?」とGEN。頷く代わりにフィールドから湧き上がった大音量の拍手を受け止めたあと、4人は“My HERO”を鳴らし始めていく。迷ったり悩んだりすることがあっても、互いに支え合うことができればきっとお互いカッコよくいられる。アンコールで“Squall”を「考えすぎて自分自身が分からなくなった人に捧げます!」(GEN)と紹介したのにはきっとそんな意味が込められていたのだろう。「来年も会いましょう!」と約束を結んだあと、「YON FES 2018」は幕を閉じたのだった。
なお、1日目(4/7)分と併せてrockinon.comではこの2日間のライブレポートを掲載したが、4/28発売の『ROCKIN'ON JAPAN』6月号では「YON FES 2018」特集を改めてお届けする予定。楽しみにお待ちいただければと思います。(蜂須賀ちなみ)
1日目のレポはこちら。