【来日レポ】ハリー・スタイルズ @ 幕張メッセ公演

【来日レポ】ハリー・スタイルズ @ 幕張メッセ公演 - Photo by Helene PambrunPhoto by Helene Pambrun

昨年12月のEXシアター公演から約半年ぶり、ソロ・デビュー・アルバムのツアーとしては2度目の来日となるハリー・スタイルズの幕張メッセ公演を観た。前回が数千人規模の会場を回る試運転的なローキー・ショウだったとしたら、数万人規模のアリーナやスタジアムを回っている現在のツアーは、彼本来のスケールがついにソロ・アーティストとしてのパフォーマンスにも宿った、エンターテイメント・ショウだったと言っていい。

とは言え、セットリスト自体は昨年のローキー・ショウとほとんど変わっていないし、バンド編成もハリーを含む5人と前回同様だ。つまり、同じ曲を同じフォーマットでプレイしているのに、会場の大小に合わせてスケールが自在に伸縮可能なのがハリーのソロ・ライブなのだ。その根底にはソロ・デビュー・アルバム『ハリー・スタイルズ』の楽曲の純然たる素晴らしさがあり、そしてハリー・スタイルズが披露する以上、どんな曲調のナンバーであっても必ずそこにはポップスターのカリスマが煌めいてしまうというのが、現在の彼のパフォーマンスの無敵の構図になっている。

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ショウの冒頭、投げキスを四方八方に振りまきながら登場した彼はアイドルの鏡だが、オープニングの“Only Angel”が始まるとスタンドマイクでゆったり歌い出し、ゴージャスなソウル・チューンの艶そのもので会場を酔わせていく。続く“Woman”もアダルトで落ち着いたトーンのナンバーだが、スコーンと音のヌケがいいメッセにコーラスのハイファイな響きがマッチしている。

そしてこの日最初の日本語MC、「コンニチワ! タダイマー! ボクハハリーデス、イギリスジンデス。ミナニアイタカッタ!」とこれまたアイドル全開で叫ぶと、場内は鼓膜が破れそうな黄色い悲鳴の嵐になる。それはワン・ダイレクション時代のライブを思い出させる光景だったが、ハリーはその黄色い悲鳴に笑顔で答えつつもセミアコを抱え、ミニマムな爪弾きと共にしっとり歌い上げるフォーク・カントリー調の“Ever Since New York”へ。ポロロン……とふとした瞬間にこぼれ落ちるアルペジオが、会場の静謐に美しく響く。そう、ポップ・アイドルとシンガーソングライター、そのふたつのコントラストを彼は自然体で行き来するのだ。

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セミアコからアコギに持ち替えての“Carolina”は一転してファンキーかつパーカッシヴなパフォーマンスで、ハリーがエド・シーランの系譜に連なる才能であることもアピール。本日1曲目の1D曲は“Stockholm Syndrome”で、1Dのナンバーの中でも際立ってバンド・サウンドとの相性がいいオルタナ・チューンだけに、ショウの流れにぴったりフィットしている。「ここは千葉県なんだよね。千葉に住んでいる人は手をあげて!」とハリー。ちらほら手があがったところで「じゃあ東京から来た人は?(結構いる)日本に住んでいる人は?(大勢いる)じゃあ日本以外の国の人は?(結構いる)」とアンケートを取っていくのだが、海外からの遠征ファンの多さも1D時代から相変わらずだ。

またこの日が誕生日だったファンのアサコさんを、会場全体でハッピーバースデーの合唱で祝う一幕も。「アサコダイスキー! アンパンマンダイスキ! モヒトツミズオネガイシマース、サケオネガイシマース! コレハミズデス、サケ、チガイマス」と、来日のたびにあさっての方向に進化し続けているハリーの日本語MCも相変わらず最高だ。

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フォーク・サイケから出発し、徐々に奥行きと重層感を増してスペース・サイケへと拡大していく“Meet Me in the Hallway”は、ソロ・アーティスト=ハリー・スタイルズのソングライティングの才能が最も顕著に感じられる名曲中の名曲で、その後半に向けてのシンフォニックな広がりは、メッセのスケールを十全に活かすものだった。会場中央に設けられたBステージに移動してのアコースティック・セットでは、スマホの無数のライトに照らされる中での“Sweet Creature”はとりわけ白眉で、サイモン&ガーファンクルの『ライヴ・フロム・ニューヨーク・シティ1967』を想起させるようなパフォーマンスだ。

再びメイン・ステージに移動しての後半戦は新旧アンセムを惜しみなく畳み掛けるアッパーなセットで、1Dの“What Makes You Beautiful”では日の丸とレインボーフラッグを両手にステージを駆け回るハリーと大合唱で応えるオーディエンスに会場が揺れる! でもそんな鉄板中の鉄板である“What Makes You Beautiful”をも凌ぎ、この日一番の盛り上がりとなったのがエンディングのソロ曲“Kiwi”であったのが彼のソロ・キャリアの成功を物語っていた。

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そして何よりも、「(1Dとしてデビューした)7年前からずっと応援してくれているファンが、僕のソロ・アルバムも好きになってくれたことが嬉しい」とハリーが言っていたように、彼の1Dからソロへのキャリア・チェンジはファンの断絶を一切生まなかったというのが凄いし、それはハリー自身が自分のキャリアを地続きと捉え、アイドル時代の自分を否定せずに音楽性を深化・追求していったその生き方がリスペクトされているからだろう。 (粉川しの)

〈SETLIST〉
Only Angel
Woman
Ever Since New York
Two Ghosts
Carolina
Stockholm Syndrome
Just a Little Bit of Your Heart
Medicine
Meet Me in the Hallway
Sweet Creature
If I Could Fly
Anna
What Makes You Beautiful
Sign of the Times
(encore)
From the Dining Table
The Chain
Kiwi
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