GLIM SPANKY/日本武道館

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●セットリスト
1.アイスタンドアローン
2.焦燥
3.褒めろよ
4.MIDNIGHT CIRCUS
5.闇に目を凝らせば
6.BIZARRE CARNIVAL
7.The Trip
8.お月様の歌
9.ダミーロックとブルース
10.ミュージック・フリーク
11.いざメキシコへ
12.怒りをくれよ
13.吹き抜く風のように
14.美しい棘
15.The Flowers
16.All Of Us
17.愚か者たち
18.NEXT ONE
19.END ROLL
20.In the air
21.サンライズジャーニー
22.大人になったら
(アンコール)
En 1.さよなら僕の町
En 2.リアル鬼ごっこ
En 3.Gypsy


ビートルズとかボブ・ディランレッド・ツェッペリン……数々のスターたちもここでやってきたわけですよ。『こういう音を聴いてやってたんだ』って思うと、ロックキッズとしてはすごく感慨深いですね」と満場の「ロックの聖地」を見渡して語る松尾レミ(Vo・G)。「『お客さんいなくて寂しい武道館だったらどうしよう?』って心配してたんですけど。始まった瞬間から、こんな素敵な景色を見させていただいちゃって……ここに来てよかったなと思いました」と万感の想いを露わにする亀本寛貴(G)。そんなふたりの姿が、会場一面の惜しみない拍手喝采を呼び起こしていく――。

GLIM SPANKY/日本武道館

ミニアルバム『焦燥』でのメジャーデビューから約4年、地元・長野で結成してからは11年。GLIM SPANKYにとって初の日本武道館ワンマンライブとなったこの日のステージ。不器用なくらいひたむきにロックの自由と不屈のロマンを体現し続け、ついに武道館の舞台に立つに至ったGLIM SPANKYのひとつの到達点にして、さらなる「その先」への大きなスタートをも予感させる、力強い名演だった。

GLIM SPANKY/日本武道館

かどしゅんたろう(Dr)、栗原大(B)、中込陽大(Key)という鉄壁のサポート陣とともにこの日のステージに臨んだ松尾&亀本。
冒頭から“アイスタンドアローン”で《尖り抜いた孤高の旗を振れ》のフレーズを高らかに掲げた後、亀本の灼熱のリフが渦巻く“焦燥”、松尾のハスキーボイスが武道館の熱気を痛快にドライブさせた“褒めろよ”へ――これまでの歩みを丹念にひとつのタペストリーに編み上げていくかのように、1曲1曲真摯に、そして伸びやかに響かせていく。

GLIM SPANKY/日本武道館

アレンジメントに60〜70年代ロックの色合いを帯びたGLIMの音楽はしかし、オールドスクールなロックへのノスタルジーの産物ではなく、今この時代の加速度に翻弄されることなく己のロックを追求するふたりの魂の揺るぎなさが選び取った必然そのものである――ということが、この日の歌と演奏のひとつひとつからもリアルに伝わってくる。
年配の方々も多く見られたこれまでのワンマンライブに比べ、若いファンの姿が目に見えて客席に増えていたことからも、GLIMの表現とそこから生まれるメッセージがより切実に時代に求められていることが窺えた。

GLIM SPANKY/日本武道館

“闇に目を凝らせば”のようなスロウ&ヘヴィなナンバーから、サイケデリックな開放感に満ちた“BIZARRE CARNIVAL”、観る者すべてをメルヘンの世界へ誘う“お月様の歌”……ふたりのギター&歌が曲ごとに鮮やかに色彩と温度を変えながら、刻一刻とオーディエンスをロックの奥深くへ導いていく。
「ようこそ、GLIM SPANKYの武道館へ! こんなにロックが好きな友達が集まったから、今日はロックを楽しむ夜にしましょうよ」。松尾の言葉に、高らかな歓声と拍手が広がる。

GLIM SPANKY/日本武道館

“ダミーロックとブルース”、“ミュージック・フリーク”といったインディーズ期の楽曲も披露していた今回のステージ。映画『ONE PIECE FILM GOLD』主題歌でもお馴染みの“怒りをくれよ”では松尾が歌詞を飛ばしてしまい「……武道館にはね、魔物がいましたよ!」と苦笑交じりに話す松尾の佇まいも含め、そのすべてが珠玉の一夜の名場面となっていくようなマジカルな磁場が、この日の武道館には確かにあった。
そして、“美しい棘”や最新シングル曲“All Of Us”といったスロウバラード系の楽曲群。麗しのメロディと松尾の歌声で聴く者の魂を解き放っていくようなマジカルな訴求力が、広大な空間丸ごと抱き締めるようなスケール感を描き出していたのが深く印象に残った。

GLIM SPANKY/日本武道館

「ロック=激しいとか、強いとか、反抗とか言われやすいじゃないですか。でも、優しいものだったり、静かなものだったり、ヘンテコなものだってロックだし。そんなロックのいろんな引き出しを、GLIM SPANKYは作っていけたらいいなと思っていて」(松尾)
「本当にシンプルに僕ら、自分たちがリスナーとして『カッコいい!』、『最高だ!』って思えるものを――もっとすごいものを作るぞ!っていう気持ちでやっていくだけですからね。武道館をやって、もうちょっと大きなスタジアムとか目指して何かやっちゃう?とかじゃないから。マジでカッコいいものをこれからも作っていこうと思ってますから」(亀本)
それぞれのベクトルでふたりが語る、あまりにもまっすぐな「GLIM SPANKYのスタンス」は他でもない、この日の武道館を震わせ続けていたロックの核心そのものだった。

GLIM SPANKY/日本武道館

激しくひずんだギターサウンドが印象的な“愚か者たち”からライブは終盤へ。シンガロングを煽ったり客席一丸となって踊り回ったりするようなテイストのライブではないが、“NEXT ONE”では一面のシンガロングが沸き起こり、“サンライズジャーニー”では高らかなクラップの輪が広がっていく。
そして――「私は長野県の、村の出身なんですよ。バンドをやっていたり、美術大学に進学するって言うと、私の周りの田舎にはすごく批判する人もいて。でも私は、田舎で批判してきた人も、敵にするんじゃなくて、『その人の心さえも開くような音楽を作らなきゃいけない』って。そう思って作った歌です」という松尾の言葉とともに本編の最後を飾ったのは、ふたりにとっても大事な1曲“大人になったら”。《聴こえているかい この世の全ては/大人になったら解るのかい》――終わりなきロックの旅路を自ら切り開くかのように、ふたりの歌とギターは熱く、強く鳴り響いていった。

GLIM SPANKY/日本武道館

アンコールでは「長野で最後に作った曲。この曲を背負って東京にやってきました」(松尾)と“さよなら僕の町”をふたりアコースティックギター編成で披露。さらに“リアル鬼ごっこ”から“Gypsy”へとつないで爽快なまでのクラップを巻き起こしてみせる。「まだまだ転がっていくから! 最高の仲間がいて、GLIM SPANKYは幸せです!」と呼びかける松尾の声が、最高の余韻とともに胸に残った。(高橋智樹)

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