「ツアー・ファイナルということで、俺らももう出すもんないっつうくらい全部出し切るんで、みんな今日は楽しんで、笑って、帰ってください」。そんなU-tanの言葉通り、“wasted again”のボーカル・リレーを決めた後“Can You Stop Everything?”では 、スタジオ・コーストの天井に吊るされた巨大ミラー・ボールまで稼働してパーティを加熱する。「めっちゃ楽しいわー、みんなライブハウス好きか?ちょっと広いけど、今日は後ろの方まで最高の笑顔にしてやるからな」。U-tanの言葉を、今度はTANNYが繋ぐ。「こいつ、なんか半ズボンにソックス全開上げてるけど、音楽に関してはめちゃめちゃマジメやし、嘘はつかへんから」。挙動不審なパンク・ソング“Nice“W””、オーディエンスのゆったりしたスウェイから歌い出し急転直下のファスト・ビートに傾れ込む“Good Bye My Love”、2本のギターがリフをキャッチボールする“Misery”と、メロディック・パンクのツボをしっかりと押さえながらも、ユニークな曲が次々に披露される。要所要所に配置された『Swallowing Aliens』の曲群に、特にそれは顕著だ。
「昨日、バレンタインやで。誰かマジチョコあげたって人おるの?お、おる!男やん!逆チョコやん!で、どうなん。いけたん?いけた!?ヒュー!!」。囃し立てるTANNYと幸福な男子にオーディエンスは爆笑&喝采である。そしてシャツを脱ぎ捨て、上半身を晒したU-tan。「今、ほんと楽しくて。今だけ良ければいいって感じでやってるんで。みんなも本当に笑って、帰ってください」。彼は「笑って」という言葉を執拗に繰り返している。そして現に、このG×4×Nのステージはめちゃくちゃ楽しい。鉄壁のビートを支えるKAWAJIN、豊かなハーモニーを被せてはベースを弾くMAKKIN。鍛え上げられたプレイアビリティに裏付けされた楽曲群が、不景気やら暗いニュースやらはどこ吹く風の特別な空間を生み出している。モッシュ&サーフ、肩を組んでのサークルも止むことがない。今の若いロック・ファンは、鋭い嗅覚をもって優れたライブ・アクトのもとに集い、それを全力で支持し、楽しむことができる。生きにくい時代であるからこそ、余計にそうなのかも知れない。この熱狂の中にいたら、本当にレコード産業や興行の世界は不況なのだろうかと思ってしまうほどである。こういう時代にこそ絶大な力を発揮するのが真に優れた音楽なのであって、そうでないものはそうではないのだ。「短いのばっかりやるわー!」と“EVERYTIME”からは“In The Mosh Pit”“PUNK ROCK IS MY LIFE”など、矢継ぎ早にファストなパンク・アンセムが連なる。そしてエモーショナルなミドル・テンポの名曲“Lost Sometimes”へ。終盤戦はOiコールや大きなスウェイ、シンガロングまで、シンプルではあるがこの上無く大きなリアクションを巻き起こす盤石のステージが進行していった。そして辿り着いた本編ラストは狂騒のダンス・ロック“It’s My Paradise”。今を最高の笑顔で塗り潰すメロディック・パンク、その真価が確かな形を成していた。
「なんで俺、このタイミングで脱いだんやろ。静かな曲やのに」。アンコールに応じてステージ上に再び現れたTANNYは、U-tanと揃って上半身裸である。「タワーレコード(のインストア・ライブ)とかでしかやったことないんだけど」と二人だけでプレイし始めたのは、“CALLING MY NAME”の弾き語りバージョンであった。伸びやかな歌とギター・ワークが会場を満たす。終盤にリズム隊が加わり、迫力のある、だが感動の余韻も残す演奏を聴かせてくれた。更に繰り返されるアンコールの催促に、メンバーは爆笑モノのコスプレで応酬する。U-tanはパーマに短パン、TANNYはタレサンにヒッピー風シャツ、MAKKINはロングのブロンド・ヘア、KAWAJINはバイザーにホット・パンツという、メチャクチャな組み合わせのインチキ・アメリカ人バンドが誕生ある。しかも全員が妙に似合っている。ここまで2時間、なんと30曲強。「楽しさ」を突き詰めるメロディック・パンクが極まったステージは、満場の笑顔の中に“JC”を響かせ、幕となった。(小池宏和)