ELLEGARDEN/ZOZOマリンスタジアム

ELLEGARDEN/ZOZOマリンスタジアム - Photo by Tsukasa Miyoshi(Showcase)Photo by Tsukasa Miyoshi(Showcase)

●セットリスト
1. Supernova
2. No.13
3. Pizza Man
4. Fire Cracker
5. Space Sonic
6. 高架線
7. Missing
8. スターフィッシュ
9. The Autumn Song
10. 風の日
11. Middle Of Nowhere
12. Surfrider Association
13. Marry Me
14.‪ Lonesome
15.‪ 金星
16.‪ サンタクロース
17. モンスター
18. Red Hot
19. Salamander
20. ジターバグ
21. 虹
(アンコール)
1. Make A Wish
2. 月
3. BBQ Riot Song


2018年5月10日、ELLEGARDENは約10年ぶりのライブツアーを行うことを発表した。ツアータイトルは「THE BOYS ARE BACK IN TOWN TOUR 2018」で新木場Studio Coast、仙台PIT、ZOZOマリンスタジアムの3公演。細美武士(Vo・G)は自身のブログに「ただいま」というタイトルと共に「全員笑顔にすっかんな:-)」というシンプルだけど一番嬉しい一言を綴った。そして7月11日には、GUEST ACTが3公演ともONE OK ROCKであることも発表。この夏は、かつてELLEGARDENというバンドに背中を押されたり、自分自身であり続ける勇気をもらったり、それこそ辛いこと悲しいことムカつくことがあっても笑顔にさせてもらったり、いろいろな形で人生を変えられてきた人にとって、特別な夏になった。初期から彼らのライブに通い詰めてきた人たち、ロックシーンのど真ん中に躍り出て次々と革命を起こした時期のライブを目の当たりにした人たち、彼らが活動していた時期はまだ若過ぎていつかライブハウスでその音を浴びる日を夢見ていた人たち。それぞれがこのELLEGARDENがいない10年をどう生きてきて、彼らが帰ってくる今、どんな思いを抱いているかを綴った言葉が我々のメディアにもたくさん届いた。スタジアムを含むとは言え、たった3公演の短いツアーであり、チケットは当然のように入手困難。この日のZOZOマリンスタジアムの周りにも、漏れてくる音だけでも聴きたいという人たちが本当にたくさん集まっていた。自分自身もELLEGARDENがいない間もその音楽に支えられながら、この日を夢見てきた人々の同志だという思いが強いのだが、だからこそライブを観ることができた人の心に残ったものを濁らせないように、そしてライブを観られなかった人の思いにも何らか応えられる記事を残せるように、大きな責任と使命を感じながらレポートに入らせてもらった。

ELLEGARDEN/ZOZOマリンスタジアム - Photo by Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)Photo by Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)
ELLEGARDEN/ZOZOマリンスタジアム - Photo by Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)Photo by Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)

スタジアムいっぱいに期待が広がり、しかもスタジアムの壁を飛び越えて外からも思いが流れ込んでくるような異様な熱気の中、ステージに登場したONE OK ROCK。もう“Taking Off”の一音目から、今回のツアーに彼らが込めている覚悟がどれだけ重くまっすぐなものであるかが伝わってきて、そこにいる様々な世代の人々の心を一瞬で射抜いたことが感じられた。その手応えをエネルギーに変えるようにTaka(Vo)は「最高か、おまえら!」と叫び、そのテンションに導かれながら演奏の強度、スケール、エモさすべてが1曲ごとに高まっていく。MCでは、彼らにとって時代を代表するロックバンドと言えばELLEGARDENに他ならなくて、その曲を聴きながら全国をバンで回りながらライブ活動をしていたことが語られていた。ELLEGARDENのこの復活においてONE OK ROCKの働きかけが大きかったことは、断片的に知られていることだけれど、どんな説明よりもステージ上で、ELLEGARDENの音楽から受け取ってきたものも含めて自分たちのすべてを出し切り、その復活のアクトにバトンを繋ごうとするその姿ほど説得力があるものはない。4人はELLEGARDENの音楽に限りないリスペクトと感謝、そしてまだまだ未来を照らしてほしいというみんなと同じ強い気持ちを持っているロックキッズとしてステージに立っていた。そして、この日がひとまずの締めくくりの日だからこそTakaは「もう1本くらいツアーやってほしい!」と丸裸の本音を語った。その願いのデカさは、彼がステージを駆け下りてスタジアムの後方まで走り回り、全力で駆け戻って、最後はドラムセット側を向いて侍のように正座をし、そしてラスト一音を全員が鳴らすまでの“We are”から“完全感覚Dreamer”までの壮絶な流れにも込められていて、出番を控えるELLEGARDENの4人の魂にもズドンと響いたに違いない。

ELLEGARDEN/ZOZOマリンスタジアム - Photo by Tsukasa Miyoshi(Showcase)Photo by Tsukasa Miyoshi(Showcase)

そして再び客電が降りると、凄まじい大歓声の中、遂にZOZOマリンスタジアムのステージにELLEGARDENが登場。本当にあの4人組がステージに立っている、というだけでもう泣きそうだが1曲目“Supernova”でもう頭のネジが一気に吹き飛び、続いて畳み掛けられる“No.13”、“Pizza Man”では、改めてこれがロックバンドのアンサンブルというものかと思った。技術だけじゃなく、その曲を生み出した時の経験が血肉に染み込んでいるメンバーが気持ちをそろえてその曲を鳴らした時、何ものにも替えられない美しさが生まれる。4人がなぜ活動休止を選ばなければならなかったのか、なぜ10年の時間が必要だったのか、どんなプロセスを経て今、一緒にステージに立っているのか、僕らはすべてを知ることはできないけれど、今、こうして4人の気持ちがELLEGARDENの音楽の中でそろっていることが確認できたのだからまずはそれで十分、そんな風に最初から思ってしまった。

ELLEGARDEN/ZOZOマリンスタジアム - Photo by Maki IshiiPhoto by Maki Ishii
ELLEGARDEN/ZOZOマリンスタジアム - Photo by Maki IshiiPhoto by Maki Ishii

そして最初のMCで細美は会場のオーディエンスに「一回、静かにして」とうながし、会場の外に向かって「外で聴いてる連中! 怪我すんなよ!」と大声で語りかけ、 “Fire Cracker”、“Space Sonic”と一気に激しいエルレを解放して見せる。「活動休止前の時点でELLEGARDENはこの領域まで到達してたんだよな」とか「激しさを提示する時、表裏一体の優しさが溢れるのがELLEGARDENだよな」とかいろんな思いが湧いてくる。そして“高架線”、“Missing”、”スターフィッシュ”、“The Autumn Song”、”風の日”と、すべてがアンセムとも言えるELLEGARDENの曲の中でも特にファンの思い入れが強いと思われる楽曲が惜しみなく披露されていく。

ELLEGARDEN/ZOZOマリンスタジアム - Photo by Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)Photo by Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)
ELLEGARDEN/ZOZOマリンスタジアム - Photo by Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)Photo by Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)

そして中盤のハイライトは、初期からのファンの心の深いところをつかんで離さない名曲“Middle Of Nowhere”。4人がガッチリとお互いに向き合うかのようにステージ上がマグマのように温度を上げていくのが特徴のこの曲だが、決して内省的ではなくそのメッセージは聴き手に向かってまっすぐ開いている。パブリック・イメージとは少し違うかもしれないけれど、これがELLEGARDENだという核の部分がこの4人の中で全く変わっていない、いや、もしかしたらそれぞれの10年の経験によってその核の部分が成長しているのではないかという思いが鮮烈に胸に残った。この曲を経て、ZOZOマリンスタジアムが巨大なホーム空間になった感じがあり、後半の“金星”では微笑み合うような4人の音の温かさが会場中を包み込み、さらにスタジアムの壁を越えて夜空に向かってどこまでも広がっていくのが目に見えるようだった。

ELLEGARDEN/ZOZOマリンスタジアム - Photo by Maki IshiiPhoto by Maki Ishii
ELLEGARDEN/ZOZOマリンスタジアム - Photo by Tsukasa Miyoshi(Showcase)Photo by Tsukasa Miyoshi(Showcase)

この日、個人的にも忘れられないたくさんの心に残るMCもあったのだが、それは書き始めるとキリがないし、メディアでそれを発信するよりは何がその場においてリアルだったのかが正しく広がるようにみんながよく考えて伝え合った方がいいと思うので、ここに多くは書かない。ただ生形真一(G)が10年待ってくれたファンへの感謝を静かに感極まった表情で真摯に伝えていたこと、高橋宏貴(Dr)がもしかしたらELLEGARDENが復活しないんじゃないかという不安が的中しなかったことを本当に嬉しそうに語っていたこと、高田雄一(B)がとても雄一らしく自由だったこと(笑)、そしてこれからのことはまた何日かしたら4人で飯を食いながら考えると語っていた細美がすこぶる気分良さそうだったこと、それぐらいは書き残させてほしい。

ELLEGARDEN/ZOZOマリンスタジアム - Photo by Maki IshiiPhoto by Maki Ishii

そして本編ラストのMCが終わった後は何だか記憶の時間軸が歪んでいて、“Red Hot”、“Salamander”、“ジターバグ”は3曲で1分ぐらいに思えた。かと思えば、本編ラストの“虹”やアンコール1曲目“Make A Wish”の前半部分は映画の一場面みたいにスローモーションで心に焼きついた。“月”が演奏されている時、みんなと一緒にいる温かさも感じながら、空に浮かんでいる月をひとりで部屋から眺めているような、しんとした気分もあった。そしてアンコールラストの“BBQ Riot Song”は、一発最後に花火をぶち上げるような勢いだなと思っていたら、ライブ終了後に何発も大きな花火が本当にぶち上がって驚いた。簡単に言うと、もう後半は文字通りの夢見心地で、観ていた全員そうだと思うのだが完全にロックキッズの気持ちに戻ってしまっていたのである。そして今、思うことはTakaが言っていた通りでこれで終わってほしくない、ということに尽きる。でもそれは4人の気持ちが自然と選ぶことだろうし、勝手ながらまた僕らはELLEGARDENに出会えるんじゃないかと信じている。ELLEGARDENは、10年前と変わらずあの4人組でしか鳴らせない音を、4人にしか経験できなかったことに基づいて鳴らしていて、そこにちゃんと奇跡みたいな物語があって、それがバッチリ今も生きているということを今回のツアーでは確かめることができた。ELLEGARDENの4人は、今回のツアーを観れた人も観られなかった人も含めて全部の「おかえり」を受け止めていたと思う。(古河晋)

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