他の出演陣は、テキサス出身の“一人シューゲイザー・ヒップホップ”YPPAH(イパ)、カナダはトロントから過激なエレクトロ・ヒップホップをぶっ放す“オンナ・スパンク・ロック”サンダーハイスト、超重量級のビートと声を誇る“ダブ・ステップの伝道師”ザ・バグ、そして当日明かされたシークレット・ゲストはなんとレーベルオーナーのコールドカット。好きモノには堪らない、かなり豪華な並びである。
というわけで、セットチェンジ時のコールドカットのDJ(前にやってたザ・バグから引き継いだダブ/レゲエから徐々にドラムンベースに繋げていくという、さすがのセンスを見せ付けるものだった)を経て、いよいよザ・ケミスツが登場したのは23時45分。ステージには所狭しと並べられたドラムやアンプやキーボードやPC。かなり凝った機材配置だったが、出てきた音はなんというか、一言で言うと「ドカーン!」というような感じだった。
一曲目“STOMPBOX”から、いきなりレッドゾーンに振り切れるかのような轟音をぶち鳴らす彼ら。リアム・ブラックが掻き鳴らすハイゲインのメタル・ギターにダン・アーノルドのぶっといベースライン、リオン・ハリスによる力任せのドラム。3ピースとは思えないほどのマキシマムな音塊である。さらにフロントではMCブルーノとジェナGという男女ゲストMCがフロアを煽りまくる。UKではペンデュラムと比較されているという前情報の通り、音源ではドラムンベースっぽい細かいビートがフィーチャーされているんだけれど、ライブではもっと衝動とパワーで押し切る勢い勝負な感じである。
さらに、続く“Dem Na Like Me”から“When UR Lonely”の流れで確信する。こいつら、正真正銘のロック・バンドだ。ペンデュラムのようにドラムンベースとロックを上手くミクスチャーしてる感じよりも、エンター・シカリとかハドーケン!のようなハチャメチャで痛快なバンド感がある。“Got One Life”のようなグライム色の強いナンバーも、CDより数段ストレートに放たれている。ギターの強靭なリフが何より目立っている。フロアの盛り上がり方も踊るというよりがんがんモッシュする感じ。リキッドルームの温度が数℃は上がっている。
本編ラストは、まるでヘヴィ・ロックのような豪快なリフを弾き鳴らす“S.W.A.G”。そしてアンコールではなんとダフト・パンクの“ロボット・ロック”を直球でカバー……かと思いきや、そのままキラーチューンの“Lost Weekend”へ雪崩れこむ。フロアはダイブする観客も飛び出すほどの沸騰っぷりだった。
わずか45分ながら、まるで暴風雨のようなインパクトを残していったザ・ケミスツの初来日。今回はクラブ・イベントとしての括りだったけれど、むしろロック・バンドの対バンの方が似合うと思う。というか、夏フェスでさらに人気を拡大しそうな感じだ。再来日を期待する。(柴那典)
※編集部注:3月12日サマーソニック09への出演が決定!!