ASIAN KUNG-FU GENERATION @ 東京国際フォーラム ホールA

EXILEになぞらえて「アジカンのパーフェクト・イヤー」とゴッチが呼んでいたように、2008年のアジカンは、『ワールド ワールド ワールド』とその忘れ形見とも言うべきミニアルバム『未だ見ぬ明日に』、そしてアジカン流「湘南コンセプト・アルバム」(?)の『サーフ ブンガク カマクラ』という3作品をリリースした年だった。そして、(昨年前半に同名のライブハウス・ツアーはあったものの)『ワールド ワールド ワールド』をタイトルに冠したアジカン初のホール・ツアーである今回は、まさにその3作をどっちゃり盛り込んだものに自ずとなってくるわけで、「一体どんなセットリストを組みゃいいんだ」とツアー前には思っていたものだった。が、蓋を開けてみれば本編だけで2部構成の26曲! しかも第2部では『サーフ ブンガク カマクラ』完全再現! まったくもって予想外だ。

3月4日・5日の鎌倉芸術館2Daysでひとまず完結した同ツアーの追加公演として急遽決まったこの日の会場は、椅子席の会場としては最大規模・5000人収容の巨大な会場=東京国際フォーラム ホールA。18:17に客電が消えると、ステージには4つのTENORI-ON(16マス×16マスのLEDボタンをタッチして使うシーケンサー/サンプラー)が。喜多/キヨシ/山ちゃん/ゴッチが順番に現れ、同期している4つのTENORI-ONにそれぞれが音を入力していく。

そうして生まれた心地好い電子音のリズムからそのまま、1stアルバム『君繋ファイブエム』のラスト・ナンバーだった“ノーネーム”へとつないでみせる。そしてそのまま、『未だ見ぬ明日に』の“ムスタング”へ……5000人のオーディエンスとじっくりギアを合わせていくような展開に、早くも国際フォーラムの2階席は静かに揺れている。さらに『ワールド ワールド ワールド』から“ネオテニー”“ナイトダイビング”、そして再び『君繋ファイブエム』から“無限グライダー”。エモーショナルな爆音やスリリングなリズムで会場を巻き込んでいくのではなく、それこそ音楽の魔法を1つ1つロジカルに組み立てていくような、それによってオーディエンスを1人残らずゆっくりと高揚させていくような選曲だ。

「うおー、すげえ! 国際フォーラムだって山ちゃん!」と、巨大な空間を見回してゴッチが思わず笑顔でMC。「武道館とかは意識したことあるけど、国際フォーラムはなかったね。洋楽だと、レディオヘッドとか、アラニス・モリセットとか……僕ら、大学の時に、観客としてきた回数のほうが多いから。感動したね……俺だけか?(笑)。どうも最近、他のメンバーと感動ポイントが違うんだよな」

じっくりあったまってきた会場を、“Re:Re:”“アンダースタンド”で一気に興奮が襲い、フロアが面白いように揺れる揺れる! 途中、“君という花”以降4曲をホール・ツアーならではのアコースティック・セットで演奏、さらに“真夜中と真昼の夢”からはストリングス・カルテットも登場するなど、普段のツアーとは違った「ショウ」としての工夫と起伏に富んだ展開だ。シングル“リライト”のカップリング“夕暮れの紅”のような久しぶりの曲もありつつ、ストリングスと一体になった“タイトロープ”の壮大なアンサンブルを残して、19:37に第1部終了。

10分あまりの休憩を挟んで再び現れた4人は、色とりどりの半袖カラー・シャツ姿。そして、『サーフ ブンガク カマクラ』の1曲目“藤沢ルーザー”のギター・リフが鳴り響くと同時に、上手(向かって右)から江ノ電をかたどったセットが、下手(向かって左)からはお稲荷さんの狐が、そしてステージ上方からは鳥居が登場!(しかも江ノ電は曲名に合わせて「藤沢」「鵠沼」と行き先表示が変わる仕組みだ)。あっという間に有楽町を鎌倉の風景に塗り替えてしまった。さっきまでとは打って変わってポップ感満載なギター・ロック攻勢に、一気に会場のボルテージも昇り詰めていく

「横浜市からやってきました、ASIAN KUNG-FU GENERATIONです!」。そのスタイルのせいか、ゴッチのMCのトーンもイケイケ感3割増な感じだ。「湘南ボーイズのふりして作った曲を、まさか国際フォーラムでやるとは思わなかったね(笑)。このアルバムの歌詞は、実体験じゃないんだけど……甘酸っぱいなあと思って。若い人に嫉妬しちゃって……甘酸っぱいの吸い取ってやろうか? みなさんを2、3歳老けさせて帰そうと思ってるんで」という言葉通り、青春群像っぽい甘酸っぱさと弾むようなギター・サウンドが爆風のように5000人の間を駆け抜けていく。そして、「今年も、例の会場で、例の祭りがありますんで。今年もビッグなバンドが決まって……俺も建ちゃんもビビってます」と『NANO-MUGEN FES.』の開催を告げると、さらに高い歓声が上がっていく。

アンコールの“フラッシュバック”“遥か彼方”“羅針盤”の初期アンセム3連発では文字通り激震!の大熱狂ぶりを見せた国際フォーラム。「次は例の会場で会いましょう」というゴッチの言葉と、“ワールド ワールド ワールド”“新しい世界”の圧倒的なスケール感を残して……最高の一夜は、幕を閉じた。(高橋智樹)

1.ノーネーム
2.ムスタング
3.ネオテニー
4.ナイトダイビング
5.無限グライダー
6.深呼吸
7.Re:Re:
8.アンダースタンド
9.夜の向こう
10.君という花
11.ワールド ワールド
12.真夜中と真昼の夢
13.海岸通り
14.夕暮れの紅
15.永遠に
16.タイトロープ
17.藤沢ルーザー
18.鵠沼サーフ
19.江ノ島エスカー
20.腰越クライベイビー
21.七里ケ浜スカイウォーク
22.稲村ケ崎ジェーン
23.極楽寺ハートブレイク
24.長谷サンズ
25.由比ケ浜カイト
26.鎌倉グッドバイ

アンコール
27.転がる岩、君に朝が降る
28.フラッシュバック
29.遥か彼方
30.羅針盤
31.ワールド ワールド ワールド
32.新しい世界
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