エイジアン・ダブ・ファウンデーション @ 新木場STUDIO COAST

エイジアン・ダブ・ファウンデーション @ 新木場STUDIO COAST - エイジアン・ダブ・ファウンデーションエイジアン・ダブ・ファウンデーション
エイジアン・ダブ・ファウンデーション @ 新木場STUDIO COAST - エイジアン・ダブ・ファウンデーションエイジアン・ダブ・ファウンデーション
1998年のフジ・ロック・フェスティバルで実現した初来日ステージにおいて、闘争心をむき出しにした圧倒的なパフォーマンスでオーディエンスの心を完全にとらえ、以来メンバー・チェンジなど紆余曲折を経ながらも一貫したアティチュードで作品をコンタントにリリースし続け、ここ日本においても根強い人気を誇り続けているUKのミクスチャー・バンド、エイジアン・ダブ・ファウンデーション。3月にリリースされた通算6作目のアルバム『パンカラ』を引っさげての、約3年ぶりとなる来日公演、今夜はその最終日となる。

今回の東名阪ツアーにVery Special Guestとして帯同しているのが日本を代表するヒップ・ホップ・アクトTHA BLUE HERB。まずはこの組み合わせに歓喜した人も少なくないのではないだろうか。両者とも、怒りや創作へのあくなき探究心を燃料としながら、1999年前後のシーンにあって、その音と言葉で、当時の音楽ジャンル間に立ちはだかっていた壁のようなものを突き破り、以後、多くのオーディエンスや表現衝動を抱えた人々のエモーションを受け止め、道標となる活動を今日に至るまで続けてきているアーティストである。そして数々の伝説的なライヴ・パフォーマンスを繰り広げてきた、という共通項もある。そのせいか、開演時間直後からフルハウスの場内。期待感に満ちたオーディエンスたちの魂を射抜くような、貫禄と迫力に満ちたパフォーマンスをみせてくれた。

そしていよいよエイジアン・ダブ・ファウンデイション(以下ADF)の登場だ。人で埋め尽くされたフロアは、オープニングの“ライズ・トゥ・ザ・チャレンジ”からいきなり瞬間沸騰。オーディエンスの爆発ぶりもさることながら、「ミンナデ、サワギマクロウ」とMCで煽るADFの面々のテンションにもすさまじいものがある。今回の編成は『パンカラ』リリース時の正式メンバー6名。アクター・ベイターとアル・ラムジェンという2MC体制だ。

2007年に1993年の結成以来の活動を総括する初のベスト盤をリリースした彼らだが、今回のセットリストも新旧織り交ぜたもの。“バーニング・フェンス”などでも歓声が沸きあがり、新作の浸透ぶりをうかがわせた。

これまでもダブ、ジャングル、ブレイク・ビーツを基本としながらも、年を経るごとにビートやグルーヴの質のヴァリエーションを増やしてきた彼らだが、今回のライヴでは、パンクとバングラビートからの造語である“パンカラ”という新作のタイトルから連想されるとおり、高揚感に溢れるギターのリフとベースの音が織り成すパンキッシュなグルーヴを強いアクセントとする志向性が柱の一つであり、もう一つ圧倒的な柱となっていたのがリトパル・ラジプットが繰り出すタブラやダールの打音が生み出すプリミティヴで躍動感に溢れたビートだ。大陸的な雄大さをたたえながら、上昇感をもたらすそのビートは祝祭めいたムードを場内にもたらす。しかし、そうしたともすると牧歌的にも響いてしまうプリミティヴさと併せて、あくまでも荒涼と殺伐とした緊張感と気迫を音に込められるのがADFなのである。

ひたすらビートを貪るように踊り続ける超満員のオーディエンスの達の熱狂は、ラスト、アンコールの“バズィン”“フォートレス・ヨーロッパ”に至っては、途方もないほどのエネルギーを生み出していた。20代前半から40代まで、男女の割合も半々くらい。レゲエ、パンク、エレクトロニック、ラガ、ヒップホップなどADFがこれまで飲み込んできた音楽ジャンルの多様さを連想させるような、層に厚みのあるオーディエンスが集ったこの場内。そこでなぜ誰もが我を忘れるほどになぜそのビートに体をゆだねエモーションを爆発させられるのか。それは、これまで数回の来日公演を経て、オーディエンスの期待を陵駕するようなパフォーマンスをつねに見せ続けてきたADFと日本のファンとの間にぶっとい信頼関係があるからこそなのだ。そんな関係性こそが、ここ日本のオーディエンスにとって彼らが唯一無比の存在であり続けている、理由の一つなのだ。最高じゃないか。(森田美喜子)

1.Rise To The Challenge
2.Take Back The Power
3.Living Under The Radar*
4.Target Practice*
5.Riddim I Like
6.Ease Up Caesar*
7.Burning Fence*
8.S.O.C.A.*
9.Flyover
10.Superpower*
11.Awake & Asleep*
12.Ta Deem
13.Free Satpal Ram
14.Oil
(アンコール)
15.Buzzin’
16.Fortress Europe
(アンコール2)
17.No Fun*

*=最新作『パンカラ』収録楽曲
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