NO NUKES 2019/豊洲PIT 1日目

NO NUKES 2019/豊洲PIT 1日目 - All photo by 鈴木公平All photo by 鈴木公平
2012年、坂本龍一のオーガナイズで、「脱原発」のメッセージを掲げて始まったNO NUKES。今年は2年ぶり、6度目の開催となり、おなじみのアーティストたちに加え、本イベント初登場のバンドやユニットが、それぞれのパフォーマンスで音楽を届けてくれた。まずはその1日目のレポートをお届けする。

Gotch


NO NUKES 2019/豊洲PIT 1日目
NO NUKES 2019/豊洲PIT 1日目

開演は13時という早い時間にもかかわらず、フェスのスタートからしっかり楽しもうと、多くの人がフロアに集まっている。今回トップを飾るのは、Gotch。Gotchは1日目のトップバッターであり、2日目のラストはASIAN KUNG-FU GENERATIONとして登場し、合間のトークセッションにも両日参加するなど、フルでの参加。もはやこのフェスになくてはならない存在となっている。そんなGotchのソロワークをバンドセットで演奏するライブでこの日はスタート。ゆったりとしたグルーヴを感じさせる“Paper Moon”で幕を開け、肩の力の抜けた豊かなバンドサウンドが心地好い風のように会場中に広がっていく。最初のMCで「社会に対してポジティブなメッセージを発する時は楽しくないと」と語っていたが、振り返ってみればまさしくその通りの2デイズとなった。
そして「今日はここが、ゆるくゆれる最後のチャンス。この後に登場するのは基本的にバキバキなヤツらばっかりだから、ここでゆれないとチャンスないよ」と言って笑いを誘っていた。そのゆるさを楽しむ時間がとても良い。そんなGotchの言葉に促されるように、“The Sun Is Not Down”で響く伸びやかな歌声には、会場中が大きく波打つ。“Taxi Driver”でもビートの心地好さに会場のそこかしこで腕が上がり、終始オーガニックに心を解放してくれるようなサウンドが響き渡った。ラスト“A Girl in Love”が終わると、フィードバックノイズさえやさしく響く中、大きな拍手に応えて「最後まで楽しんで帰ってください」と言って去っていった。

●Gotch セットリスト
1.Paper Moon
2.Wonderland
3.Tokyo Bay
4.Blackbird Sings at Night
5.The Sun Is Not Down
6.Taxi Driver
7.A Girl in Love

トークセッション


NO NUKES 2019/豊洲PIT 1日目
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続いては恒例のトークセッション。坂本龍一に加え、いとうせいこう、そしてライブを終えたばかりのGotchも登場。ゲストにヒバクシャ国際署名の広報代表を務める林田光弘を迎え、核兵器は必要悪なのか、もしも使われたらどうなるのか、など、現実的な想像を促すトークは非常に有意義で、さらに署名活動の持つ力についても言及。とても大きな力をもらえるトークだった。ラストはもちろん、この日の終盤にライブで登場するTOSHI-LOWBRAHMAN/Vo)と、細美武士the HIATUS/Vo・G)の乱入もあり、このトークの内容をさらに「日常」へと落とし込んでくれたような気がする。最後にGotchが口にした「想像力こそが抑止力」という言葉が印象的だった。

NAMBA69


NO NUKES 2019/豊洲PIT 1日目
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トークをじっと聴き入っていた観客の体を思い切り「動」へとシフトさせてくれたのがNAMBA69。いつものことながら、サウンドチェック段階にもかかわらず、バンドの出すラウドな音にフロアはすでにヒートアップ。“LET IT ROCK”、“MY WAY”と、本番のセットリストにない楽曲をリハ的に演奏し、会場の空気をしっかり自分たちのものにした。本番は“TAKE ME HOME,COUNTRY ROADS”からスタート。難波章浩(Vo・B)がアカペラで、素晴らしく力強い声で歌い始める。「まだ家に帰れない人がいるなんて信じられないけど、今日はこの豊洲から福島に向けて思い切り歌いたいと思います。よかったらみんなも」というメッセージをはさみ、強力なバンドサウンドでオーディエンスを牽引していく。感動的なシンガロング。突き上げられる拳のひとつひとつに明確な意思が滲む。たたみかける“HEROES”ではソリッドなギターサウンド、ヘヴィなビートで会場中の思いをひとつにまとめあげていく。
「俺は変化を求めてパンクロックをやっているつもり」と、世の中が良い方向へと変わるためには、そこにイデオロギーの違いなんて関係ないと熱く語り、新曲“CHANGES”を演奏したのも胸を打った。疾走感の中に焦燥にも似た切なさがにじむ楽曲は、一人一人に小さな変革を促すようにも聴こえ、とても感動的だった。「行くあてがなくても歩いていこう」とポジティブなメッセージを込めて、ラストは“WALK”。最後までアグレッシブに駆け抜けた。

●NAMBA69 セットリスト
1.TAKE ME HOME,COUNTRY ROADS
2.HEROES
3.PROMISES
4.LIVE LIFE
5.SUMMERTIME
6.CHANGES
7.LOOK UP IN THE SKY
8.MANIAC
9.WALK

ストレイテナー


NO NUKES 2019/豊洲PIT 1日目
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続いて登場したのは本フェス初登場となるストレイテナー。大山純(G)の美しいギター・アルペジオが鳴った瞬間に、会場からは大きな歓声が湧く。“Melodic Storm”。サウンドとメロディを牽引する日向秀和(B)のベース、タイトなナカヤマシンペイ(Dr)のドラムがバンドサウンドの要となり、美しいメロディとホリエアツシ(Vo・G・Piano)の静かに熱のこもる歌声が会場中を飲み込むよう。
“A LONG WAY TO NOWHERE”では力強さとメランコリーが同時に響くような歌声を聴かせた後、「俺たちはいろんなところに行って、こうして歌を歌って、いろんな人に出会い、大切な場所が増えて。それが失われるって考えただけでめちゃめちゃ怖い。ただそれだけ。原爆も原発も怖い。ただそれだけ」とストレートに思いを口にすると、その後披露されたのは“NO ~命の跡に咲いた花~”。ゆったりと、しかし心を揺さぶるバンドサウンド。《僕らは逃げも隠れもしない/心まで汚れちゃいない/ここから始まる未来と/ここに至る過去を抱いて》という歌詞がやさしく心に染み込んでいく。そして、ライブでは2回目の披露だという新曲“スパイラル”をポジティブに鳴らし、ラストは“REMINDER”で圧巻のバンドサウンドを響かせた。各パートが最大の強さで存在しながら、見事なバランスでアンサンブルを形作る。短い時間ながら、これぞストレイテナーというべき音像で楽しませてくれた。

●ストレイテナー セットリスト
1.Melodic Storm
2.シーグラス
3.Braver
4.A LONG WAY TO NOWHERE
5.NO ~命の跡に咲いた花~
6.スパイラル
7.REMINDER

いとうせいこう is the poet


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今回のいとうせいこうは、いとうせいこう is the poet名義での登場。まずはひとりでステージに登場すると、“田中正造is the poet”のポエトリーリーディングを開始する。明治時代、足尾銅山での採掘作業による環境破壊に対して抗議活動に立った田中の言葉を、いとうせいこうの力強くつきつけるような声が現代によみがえらせる。深いリバーブで不穏に響く声。《真の文明は、山を荒らさず、川を荒らさず、村を破らず、人を殺さざるべし》。今こそ上げるべき声。zAk(Dub)、Watusi(B)、そして龍山一平(Key)、會田茂一(G)と、徐々にバンドメンバーがステージイン。その音を受けて、いとうの声がさらなるエネルギーを帯びていく。オータコージ(Dr)のドラムも加わり、圧倒的なダブ・サウンドがヘヴィに鳴り響く。凄まじい。「言葉の持つ力」をそのまま見せつけられているよう。
この場で見せられたインプロビゼーション・ダブは、そのまま、一人の声が隣の人を巻き込んで、さらにその人々の声に多くの人が心を打たれ、やがて時代の流れを変えていくという、ポジティブなメッセージをはらんでいた。ラストは強烈なグルーヴを携えたトライバルなビートにシャープなギターカッティングが重なり、アタック感の強いダブサウンドとともに「踊れ、仲間たちよ」といとうがアジテーション。終盤にかけてのリズムのループには体を揺らさずにはいられなかった。「それではまた」とクールにいとうが去った後にも、会場のざわめきがしばらくやまなかった。

BRAHMAN


NO NUKES 2019/豊洲PIT 1日目
NO NUKES 2019/豊洲PIT 1日目

1日目も終盤を迎え、BRAHMANの登場。“THE VOID”での幕開け。それ自体が戦いのような音の塊が、ダイレクトに肉体に訴えかけてくる。“賽の河原”ではフロア後方までほぼ全員の腕が上がっているのではないかと思うほど、熱い熱いハンドクラップ。そして“雷同”で生まれる祭りのような高揚感が、さらにフロアの温度を上げていく。“不倶戴天”の怒りそのもののようなアジテーション。「怒りをくれよ、ギター!」とTOSHI-LOWがKOHKI(G)を煽れば、ギターの音にこれだけの思いが込められるのかと思うほど、超絶エモーショナルでエキセントリックなギターソロを展開。“鼎の問”では、福島第一原発で働く人の言葉と写真をスクリーンに映し出しながら、そこにいる「誰か」ではなく、現実としてそこにいる「人」へと思いを巡らせる歌として響かせる。TOSHI-LOWはフロアのオーディエンスに自らの体を預け、身を削るような歌でメッセージを伝えていく。
ようやくステージ上に戻ってきたTOSHI-LOWは息を切らしながら、「俺たちの代では何も変わらないかもしれない。50年後、100年後、何万年後かもしれない。でも、あの時の大人が、自分たちの世代だけがよければいいっていう人だけじゃなかったと、ちゃんと反対の声を上げた人もいたと、気づくかもしれないから」と、戦いの意味を自身に問うように語った。続く“今夜”では、盟友・細美武士が登場し、TOSHI-LOWとともに歌声を響かせる。「未来の子供たちにもこんな友だちができますように」とTOSHI-LOWはつぶやいた。そしてラストは“真善美”で、あらん限りのエネルギーを込めて歌い切り、バンドはステージを後にした。

●BRAHMAN セットリスト
1.THE VOID
2.賽の河原
3.雷同
4.AFTER-SENSATION
5.遠国
6.BEYOND THE MOUNTAIN
7.不倶戴天
8.警醒
9.鼎の問
10.今夜
11.真善美

the HIATUS


NO NUKES 2019/豊洲PIT 1日目
NO NUKES 2019/豊洲PIT 1日目

この日のトリはthe HIATUS。サウンドチェックで“Let Me Fall”をラフに歌い出すと自然にオーディエンスの腕も上がる。そして本番。“Clone”でのスタート。スケール感のあるサウンドで光を感じさせたあと、美しいシーケンスからの“Sunset Off The Coastline”に心を奪われる。ハンドマイクでエモーショナルに響かせる歌声に、細美武士の懐の深さを見る。盟友TOSHI-LOWと「1週間ぶりに」久々に会うのが楽しみだったと本気で口にできる強さと純粋さがうらやましくもあり、TOSHI-LOWの強さにはかなわないと言いながら、「弱い俺たちにしかできない負け犬の遠吠えみたいな歌をやります」と言って演奏した“Thirst”のグルーヴ感は圧巻。とても美しい音像がポジティブな未来を予感させる。続く“Unhurt”なども、この日のthe HIATUSは、じっくりとサウンドの美しさを届けるライブを展開し、それでいて細美の歌声は、この日ここでのどが枯れるのさえも厭わない全力のスクリームだった。
前回も同様のことを語っていたが、「弱いヤツを叩いているヤツはむかつく。単純に、数の少ないほう、弱いほうの味方でいたいから、NO NUKESにはずっと出たい」と、その本質的な細美の言葉が胸に残る。美しすぎるバラードのバージョンで聴かせる“西門の昧爽”は、弱さと本当の強さを知っている人の歌だった。“Radio”、“Burn To Shine”と、バンドアンサンブルの妙味をたっぷりと感じさせ本編を終了させると、アンコールに応えて“Waiting For The Sun”を披露。今日の1日をしっかり刻むような、希望を感じさせるダンスミュージック。壮大な広がりのあるエレクトロ・サウンドに生楽器のグルーヴが重なるこの音こそ、この時代のリアルなロックミュージック。沸き起こるコール&レスポンスは、この時がいつまでも続くことを願っているかのようだった。

●the HIATUS セットリスト
1.Clone
2.Sunset Off The Coastline
3.Shimmer
4.Thirst
5.Unhurt
6.Tree Rings
7.西門の昧爽
8.Radio
9.Burn To Shine
10.Waiting For The Sun



the HIATUSのステージが終了してもなお、鳴り止まないアンコール。そこで再び細美、TOSHI-LOW、 Gotch、そして坂本龍一がステージに登場。挨拶があって終了かと思いきや、TOSHI-LOWが「でもほら、鍵盤ありますよ?」と、無茶ぶりにも近い発言で教授を促すと、細美も「だって無理ってことはないじゃん」と加勢。予定になかった“戦場のメリークリスマス”を一節、坂本が独奏する嬉しい場面もあり、客席からは大歓声。なんとも素晴らしい余韻を残して、1日目は終了したのだった。(杉浦美恵)

2日目の記事はこちら
NO NUKES 2019/豊洲PIT 2日目
NO NUKES 2019の2日目は、1日目と同じく13時の開演で、この日はトークセッションからのスタート。坂本龍一、いとうせいこう、Gotchに加え、田中優(未来バンク)を迎えて、エネルギーの自給自足生活など、個人で実践できる具体的な方法や、未来の暮らし方についての有意義なディスカッションが…
NO NUKES 2019/豊洲PIT 2日目
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