flumpool/東京国際フォーラム ホールA

flumpool/東京国際フォーラム ホールA - All photo by 岸田哲平All photo by 岸田哲平

※以下のテキストでは、演奏曲のタイトルを一部表記しています。ご了承の上、お読みください。

ステージから勢いよく溢れ出す、阪井一生 (G)、尼川元気 (B)、小倉誠司 (Dr)、サポートメンバーの磯貝サイモン(Key・G・Cho)、名倉主(Vn)によるキラキラとしたバンドサウンド。そして、堂々とその先頭に立つ山村隆太(Vo)の歌声。それらを耳にした瞬間、安心感を覚えた人も多かったことだろう。「復活しました!」という山村の報告に拍手と歓声が起こるも、本人が「もういいよ」と照れ笑いするまでなかなか鳴り止まない。flumpool、完全復活である。

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2017年12月のパシフィコ横浜公演の終演後、山村が歌唱時機能性発声障害であることが判明。治療のための活動休止期間を経て再始動したflumpool。バンドの結成日である今年1月13日、大阪・天王寺公園でゲリラライブを行い、再始動を宣言。翌月からファンクラブ会員限定ツアーをまわっていた彼らは現在、全国ホールツアー「⌘⇧Z(Command Shift Z)」の真っ只中だ。

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ツアー5本目にあたる東京公演。最初のMCでは、ツアーの1〜4本目は前回のツアーで止むを得ず中止した都市(福井、三重、広島、鳥取)でのリベンジ公演だったため、今日が初日ぐらいの気持ちでいること、そしていつも通り、客席のあなたも大事なメンバーだということを伝えていた彼ら。ガヤガヤと喋り出すメンバーに磯貝が「緊張解こうとしてるでしょ。いつもの5倍喋ってるよ」と指摘するなど、ライブの序盤では再始動後ならではのテンションではあったが、「再始動」という意味合いを差し置いても素晴らしいライブであったことは特筆しておきたい。とはいえ、この1年強での経験がなければこういうライブにならなかっただろうから「再始動とは関係なしに」と言い切るのも違うのだが。

なぜなら、活動休止期間中に作られた新曲群がライブの鍵となっていたからだ。特に、山村が発声障害時に抱いた葛藤を赤裸々に綴った曲“HELP”は早くもライブのハイライトを担えるほどの存在感を発揮していた。《押し殺したはずの声 喉のあたり突き刺さって/まして弱音なんて吐いたら 見放されてしまいそうだ》と始まるこの曲は、開放的なサウンドとともに進んでいき、やがて山村のボーカルとメンバー3人&オーディエンスのコーラスが手を取り合いながらフィナーレを迎える。振り返れば、活動休止前最後のライブで山村は、声の不調を観客に告白するまでの間それを感じさせないような振る舞いをしていたし、観客に弱さを見せないことをある種の美徳としているように見えた。そう考えると、やはり彼らは変わったのだ。この経験をバネにして。

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人は時に、つらさや苦しみ、自らの弱音と向き合わなければならない、というどうしようもない事実。それから、独りでは頑張りきれなくなることもあるから「一人」同士で抱き合いながら生きていこう、という新たに芽生えた意思。これまでの彼らを駆り立てていた「僕を信じて戦う」というファイティングスピリッツは、「僕らを信じて戦う」に形を変え、再び彼らを強くさせた。

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ツアーはまだ始まったばかりであるため詳述は控えるが、新曲以外の曲は、そうだ、このタイミングだからこそ聴きたかったんだ、と思える曲ばかりだった。フレーズ一つひとつが意味を再確認するかのように鳴らされていて、それにより、既存曲もさらに強い説得力を宿すようになっていた。ライブの終盤に差し掛かっても、バンドは疲れを見せるどころか、さらに躍動的でみずみずしい音楽を鳴らすようになっていく。「あの時諦めないでよかったと思える、素晴らしい時間をみなさんからいただきました!」という山村の言葉からは充実感を読み取ることができた。

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PCをよく触る人ならば「⌘⇧Z(Command Shift Z)」がショートカットキーであることをご存知かと思うが、このツアータイトルには「一度戻ってもう一度同じ場所へ進み出す」という意味――もっと言うと、「再始動しました!」というだけのライブにはしたくない、というメンバーの意志が込められているとのこと。活動休止期間中、一時はバンドを諦めようとしたこともあったことを打ち明けながらも、だからこそ今は以前よりももっと強い想いがあるのだと山村は語っていた。その想いはこの日のライブから十分に伝わってきたし、きっと今後の公演でも彼らは、各地のファンに一つずつ伝えていくつもりなのだろう。

全国ホールツアー「⌘⇧Z(Command Shift Z)」は9月28日(土)、神奈川・パシフィコ横浜公演まで続いていく。(蜂須賀ちなみ)

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